テラーノベル
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僕らとオーマは、互いの情報をすり合わせた。 オーマによれば、由宇は一度は自力で脱出したものの、オーマと出会ってすぐ、再び魔女に見つかってしまったらしい。
「キチンと確かめたわけではありませんが——あの状況から逃げ延びるのは、正直不可能だと思います」
となると、やはり僕らの目的地は空に浮かぶ立方体だ。
あの中に、由宇は再び幽閉されてしまっているはずだ。
「申し訳ありません。私がちゃんとお守りできればよかったんですが……」
しゅんとするオーマに、ナギが声をかける。
「お前の判断は間違いじゃない。無事に逃げ延びた結果、こうしてラジオのお告げ通りに、私達と合流することができたんだからな」
慰めというよりは、単に事実を整理しているといった風の口調だ。
「だといいんですが……」
呟くオーマの前にしゃがみ、僕は彼女と目線を合わせた。
「ありがとう、オーマ。協力してくれるのは、物凄く嬉しいよ、でも——」
少し迷ってから、やはり尋ねる。
「——本当に、いいの?」
魔女との闘いは命懸けだ。
いくら命の恩人とはいえ、僕のやったことと言えば、家から少し離れたところにオーマの死骸を埋めただけ。
それにどうやら、オーマは短期間での蘇生成功を僕のおかげだと思い込んでいるらしい。
真偽が不明な以上、勘違いを都合よく利用しているようで気が引けてしまう。
しかし、僕のそんな思いとは裏腹に、
「勿論ですとも!」
とオーマは胸をはって答えた。
「私だって由宇さんを助けたいんです。短い時間とは言え、ガールズトークで盛り上がった仲ですからね」
「そ、そっか」
一体何を話したんだろう?
訝しむ僕に構わず、オーマが続ける。
「それにこれは、お爺ちゃんの仇討ちでもありますから!」
「お爺ちゃん?」
僕は何となく、口元にふさふさの髭を生やしたオーマの姿を想像する。
「ええ。由宇さんを捕まえにきた魔女に、巻き添えで焼き殺されてしまったのです。とても物知りで、私のことを可愛がってくれていたのに——私は、魔女を絶対に許しません!」
どうやら、決意は固いようだ。
「わかったよ……よろしくね、オーマ」
「はい!猫の手なんかでもよろしければ、いくらでもお貸ししますよ!」
オーマの差し出した小さな手を、僕は力を込め過ぎないように注意しつつ——それでもぎゅっと握り返した。
「さて。そうと決まれば、そろそろ動き出そう」
両手をパンと合わせて、引率の先生の様にナギが言う。
「『仲間』はこれで良し。次は『潜入手段』だ」
ナギの先導の元、僕らは市場を一列になって移動した。
とあるテントでは、《《犬面人》》が《《人面犬》》の剥製を売っていた。
「ちょいとそこ行くお兄さん!安くしとくよお!」
パグの顔をした剥製職人が、僕に声をかけてくる。
机の上には、柴犬の体に禿頭の中年男性の首が乗った、異形の剥製が置かれていた。
「犬の体に人間の首をくっつけただけの偽物も多いが、こいつは正真正銘の本物だよお!どうだい、おぞましい姿だろう!?え!?お前が言うなってか!?ハハハハハ!確かに、確かに!なあお兄さん、秘密を守れるかい?……ここだけの話、実はコイツは、俺の腹違いの弟でねえ……ハハハハハ!そんな顔すんなって、お兄さん!ハハハハハ!嘘だよ、嘘!——本当のところは、種違いさあ!」
その隣ではまるでSF映画に出てくるエイリアンのような全身緑色をしたアメーバ状の生物が、ビニールシートに商品を並べていた。
売っているのは、機械と内臓が融合したような、奇怪な何かだ。
もしかしたら、本当にエイリアンだったりするのかもしれない。
この街では何でも有りだ。
「おやおや、誰かと思えば鱗のお姉ちゃんじゃないかい。久しぶりだねえ」
ナギにそう声をかけてきたのは、体長二メートル程の生きた樹木だった。
幹に存在する三つの洞が、ちょうど目と口に見える。
その左右からは腕の様な枝——もしくは枝のような腕を生やしており、剥き出しになった根っこが蛸のように蠢いていた。
頭部(?)に茂った若葉の周囲には、蜻蛉の様な羽を生やした妖精達が飛び回っている。
樹木は主に、苗木や種、肥料や花、野菜や果物、園芸用品などを取り扱っているらしかった。
「どうだい、害虫共を追い払う煙玉は役に立ったかい?」
洞から、陽気な男性の声が発せられる。
タイミングが悪いことに、ちょうど僕らのすぐ近くには人をかたどったアブラムシの集合体がおり、樹木の言葉にビクッと体を震わせ、そそくさとその場を立ち去ってしまった。
「ええ、とても」
素っ気なく答えるナギの態度にも気を悪くした様子はなく、樹木は言った。
「そりゃあ良かった。で、今日は何をお探しだい?この間は、煙玉の他にもいろいろ買ってくれたよねえ。ええと、何だったか——肉の実だとか、あとは確か——」
「すいませんが、今日はよその店に用があるんです」
樹木の声を遮り、ナギは尋ねた。
「イソダという商人を知りませんか?」
#怪異
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コメント
1件
読了したわ!第47話「市場」、めっちゃ世界観の広がりを感じる回だったな。 まずオーマの決意が固くてよかった。「猫の手でも貸しますよ」ってセリフ、めちゃくちゃオーマらしくて和んだ。あと、ガールズトークの内容が気になりすぎる。 市場の描写もヤバかった。パグ顔の剥製職人とか、人間の首が生えた犬の剥製とか、樹木の商人とか——この街の異形感、どんどん濃くなってるな。ナギが「イソダ」って商人を探してるのが、次への布石って感じでワクワクする。 次回も楽しみにしてる🔥