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#❤️💙
みら

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207
9
数日後。
夜。
阿部は仕事を終えて。
そのままバーに残っていた。
昼のカフェから。
夜の店へ。
照明が落ちて。
カウンターの奥に酒の瓶が並ぶ。
もう。
この変化にも慣れた。
「今日なんか人多くない?」
阿部が店の中を見る。
「多いよ」
カウンターの中で。
岩本がグラスを並べている。
深澤はその隣で。
なぜかストローを一本ずつ数えていた。
「ふっか何してるの?」
「仕事」
「それ仕事?」
「多分」
「多分なんだ」
阿部が笑う。
少し離れた席には。
宮舘と渡辺。
目黒も。
もう来ていた。
「めめ」
「お疲れ」
「早いね」
「今日は仕事早く終わったから」
「そっか」
阿部は。
自然に目黒の隣へ座る。
それを見た深澤が。
少し笑った。
「何?」
阿部が聞く。
「別に」
「絶対なんかあるでしょ」
「ないない」
「怪しい」
「気にしない気にしない」
深澤は笑いながら。
またストローを数え始めた。
しばらくすると。
店の扉が開く。
カラン。
「こんばんはー!」
聞き慣れた大きな声。
「あ」
阿部が振り返る。
佐久間だった。
「佐久間」
「あべちゃん!」
佐久間は店に入るなり。
すぐ阿部を見つける。
「来たよ!」
「見れば分かる」
「夜のあべちゃん初めて!」
「夜の俺って何」
「昼と違う感じする!」
「エプロンしてないだけじゃない?」
「それだけでも違うじゃん」
相変わらず。
会った瞬間から距離が近い。
「佐久間、うるさい」
渡辺が言う。
「翔太に言われたくない!」
「俺そんなうるさくない」
「嘘つけ!」
店の中が。
一気に賑やかになる。
阿部は笑う。
「佐久間、何飲む?」
岩本が聞く。
「甘いやつ!」
「毎回それだね」
「甘いのが一番うまい!」
佐久間はカウンターへ座る。
ちょうど。
康二も店の奥から出てきた。
「あ、さっくん!」
「康二!」
二人が。
すぐに大きな声で話し始める。
「今日カメラ持ってきた?」
「あるで」
「あとで撮ろうよ!」
「ええやん!」
「もううるさい」
渡辺がまた言う。
「始まったね」
宮舘は慣れたように笑っていた。
もう一度。
扉が開く。
カラン。
今度は。
背の高い姿。
「こんばんは」
「ラウ」
阿部が手を上げる。
「来たんだ」
「うん」
ラウールは店内を見る。
「ほんとにみんないる」
「誰から聞いたの?」
「佐久間くん」
「俺!」
佐久間が手を上げる。
「今日は絶対来いって言われた」
「だって全員そろいそうだったから!」
「全員?」
阿部が。
店内を見る。
宮舘。
渡辺。
岩本。
深澤。
康二。
佐久間。
ラウール。
目黒。
そして。
自分。
「あ」
気づいた。
「ほんとだ」
「何が?」
目黒が聞く。
「全員いる」
阿部は。
もう一度。
みんなを見る。
最初。
この街に来た時。
知っている人なんて。
一人もいなかった。
目黒が。
最初にできた知り合い。
そこから。
館さん。
翔太。
照。
ふっか。
康二。
佐久間。
ラウール。
少しずつ。
少しずつ。
増えていった。
「……すごい」
思わず声が出る。
「何が?」
ラウールが聞く。
「いや」
阿部は笑う。
「こんなに知ってる人増えたんだなって」
佐久間がすぐ言う。
「友達ね!」
「知ってる人じゃなくて?」
「もう友達でしょ!」
「早いなあ」
「今さら何言ってんの!」
康二も笑う。
「もうだいぶ前から友達やで」
「康二は最初から勝手にそうしてたよね」
「ええやん」
「ラウは?」
阿部が聞く。
ラウールは。
少し考えて。
「俺は友達だと思ってる」
「そっか」
「嫌?」
「ううん」
阿部は少し笑う。
「嬉しい」
その言葉が。
素直に出た。
店の中は。
いつもよりずっと賑やかだった。
佐久間と康二が。
ずっと喋っている。
ラウールは。
岩本にノンアルコールのカクテルを作ってもらっていた。
「大学生なんだから飲めるでしょ?」
佐久間が言う。
「飲めるけど今日はいい」
「もったいな!」
「何が?」
「バー来てるのに!」
「飲まなくても楽しいし」
「それはそう!」
佐久間がすぐ納得する。
阿部は笑う。
「切り替え早」
隣では。
渡辺が宮舘のグラスから勝手に飲んでいた。
「翔太」
「何?」
「自分のあるでしょ」
「こっちの方が美味しそうだった」
「同じの作ってあげるから」
「一口でいい」
「もう飲んでるじゃん」
深澤は。
そのやり取りを見ながら笑っている。
岩本が。
深澤の前にもグラスを置く。
「ふっか、これ」
「何?」
「弱め」
「なんで?」
「この前酔って棚に話しかけてたじゃん」
「……あれは」
「覚えてないでしょ」
「覚えてる」
「じゃあ何話してた?」
「……人生」
「棚と?」
阿部が吹き出す。
「ふっか何してんの」
「棚も聞いてくれるんだよ」
「聞いてないよ」
目黒まで笑っている。
阿部は。
みんなの会話を聞きながら。
ただ。
楽しかった。
誰かが喋って。
誰かが笑って。
誰かがつっこんで。
また別の話が始まる。
その中心に。
自分もいる。
それが。
まだ少しだけ。
不思議だった。
しばらくして。
康二が突然。
「あ」
と声を上げた。
「何?」
阿部が聞く。
「今日全員おるやん」
「さっき俺も言った」
「せやから!」
康二が立ち上がる。
「写真撮ろ!」
「出た」
渡辺が嫌そうな顔をする。
「ええやん!」
佐久間がすぐ乗る。
「撮ろ撮ろ!」
「俺やだ」
「翔太も入るの!」
「やだ」
「涼太も言って!」
佐久間が宮舘を見る。
宮舘は。
少し笑って。
「せっかくだし撮ろうか」
「ほら!」
「涼太が言うなら」
渡辺はあっさり折れた。
阿部が笑う。
「早」
「舘さん強いなあ」
康二も笑う。
「じゃあ準備するで」
康二がカメラを取り出す。
阿部は。
その姿を見ながら。
少し胸が高鳴る。
前に。
約束した。
みんなで撮ろう。
今の自分の周りにいる人を。
いっぱい残そう。
それが。
今日。
本当に叶う。
「どこ並ぶ?」
「適当でええよ!」
「適当が一番困るんだって」
深澤が言う。
「照ここ」
「なんで決めるの」
「俺の隣」
「はいはい」
岩本が。
当たり前のように深澤の隣に立つ。
宮舘の隣には渡辺。
康二が。
タイマーを準備している。
佐久間とラウールも。
空いた場所に入る。
阿部は。
どこに立とうか。
少しだけ迷った。
すると。
「あべちゃん」
目黒が。
隣を軽く叩く。
「ここ」
「うん」
阿部は。
自然に目黒の隣へ入った。
「全員入る?」
佐久間が聞く。
「多分!」
康二がカメラを確認する。
「多分って!」
「入らんかったら撮り直す!」
「康二早く!」
「今やるって!」
康二が。
タイマーを押す。
「十秒!」
慌てて走ってくる。
「康二こっち!」
「分かってる!」
「狭い狭い!」
「詰めて!」
みんなが。
笑いながら。
少しずつ寄る。
阿部の肩に。
目黒の肩が触れる。
反対側には。
佐久間。
「いくで!」
康二が叫ぶ。
「三!」
「二!」
「一!」
カシャ。
その瞬間。
誰かが笑って。
誰かが動いて。
完璧な写真ではなかった。
でも。
もう一枚。
カシャ。
今度は。
みんなちゃんと前を見る。
阿部も。
笑った。
心から。
「見せて見せて!」
佐久間が一番にカメラへ寄る。
「俺も!」
深澤も。
ラウールも。
みんなで小さな画面を覗く。
「狭いって!」
康二が笑う。
「これええやん」
画面の中。
九人。
全員。
笑っている。
阿部は。
しばらく。
その写真を見ていた。
「……いいね」
「ええやろ?」
康二が言う。
「うん」
「ちゃんと全員入ってる」
ラウールが言う。
「しょっぴーも笑ってる」
「笑ってない」
渡辺が反論する。
「笑ってるよ」
宮舘が言う。
「じゃあ笑ってる」
「認めるんだ」
阿部が笑う。
また。
みんなが笑う。
康二が。
もう一度写真を見る。
「あべちゃん」
「ん?」
「これ、ちゃんとプリントして持ってくるわ」
阿部が。
少し目を見開く。
「ほんと?」
「もちろん」
「欲しい」
「大きめにする?」
「うん」
すぐに答える。
「大きいのがいい」
康二が笑った。
「任せとき」
阿部は。
もう一度。
画面を見る。
昔の写真は。
一枚もない。
でも。
これは。
今日の自分。
今日。
ここにいた人たち。
今の自分が。
ちゃんと知っている人たち。
「……絶対欲しい」
もう一度言うと。
目黒が隣で。
少し笑った。
数日後。
ランチ営業の終わり頃。
康二が店にやってきた。
「あべちゃーん」
手には。
薄い封筒。
「何?」
「これ」
差し出される。
阿部は。
すぐ分かった。
「写真?」
「そう」
封筒を開ける。
中から。
一枚。
少し大きめにプリントされた写真。
九人。
あの夜。
みんなで撮った写真。
スマートフォンの画面で見た時より。
ずっと。
はっきり見える。
佐久間は大きく笑っている。
ラウールも。
柔らかく笑っている。
宮舘と渡辺。
岩本と深澤。
康二。
目黒。
そして。
自分。
阿部は。
しばらく何も言わなかった。
「あべちゃん?」
康二が。
少し心配そうに覗く。
「どう?」
「……好き」
「ほんま?」
「うん」
阿部は。
写真の端を。
大事に持つ。
「すごく好き」
康二が。
嬉しそうに笑った。
「よかった」
「ありがとう」
「どういたしまして」
阿部は。
もう一度。
写真を見る。
これは。
なくしたくない。
そう思った。
その日の夜。
阿部は。
新しい写真立てを買って帰った。
前に康二が撮ってくれた。
一人で笑っている写真。
その隣に。
九人の写真を置く。
少し離れて。
棚を見る。
二枚。
たった二枚。
でも。
最初は。
一枚もなかった。
何もなかった棚に。
今は。
自分が笑っている写真がある。
みんなと笑っている写真がある。
阿部は。
九人の写真を手に取る。
「……増えた」
小さく呟く。
昔の写真は。
ない。
今でも。
過去は何も分からない。
だけど。
これだけは。
自分の記憶にある。
あの日。
みんなで飲んだこと。
佐久間と康二がうるさかったこと。
ふっかが棚と話した話で笑ったこと。
翔太が舘さんのグラスから勝手に飲んだこと。
ラウールがノンアルを飲んでいたこと。
めめの隣で。
写真を撮ったこと。
全部。
覚えている。
阿部は。
写真立てを棚の真ん中に置いた。
一人の写真より。
少しだけ前。
一番。
よく見える場所。
「ここ」
自然に。
そう決めた。
新しいノートを開く。
『初めて全員そろった。』
『みんなで写真を撮った。』
そこで。
少し考える。
ペンを動かす。
『一番好きな写真ができた。』
書き終えて。
阿部は。
もう一度棚を見る。
昔の自分が。
誰と笑っていたのかは。
まだ知らない。
でも。
今の自分が。
誰と笑っているのかは。
ちゃんと分かる。
それだけで。
今夜は。
十分だった。
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お疲れ様です。 一気に読みました。今の💚がだんだん増えて来て居る。仲間が増えた 笑顔で笑ってる😀 楽しそう 続き待ってます♪
お疲れさまです、リオンです。 第9話、読み終わりました。阿部さんが「気づいたらこんなに知り合いが増えた」って呟くシーン、じんわり来ましたね。最初は誰もいなかった街で、今は9人で写真を撮るんだもの。深澤さんが棚と人生語ってた話とか、佐久間さんと康二さんのテンションとか、キャラの個性が自然と動いてて楽しかったです。 あと、写真立てが二枚になったラスト。記憶はないけど、今の自分が笑っている証拠をこうして積み重ねていく感じ、すごく好きです。