テラーノベル
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夜。21時。
『夜の時間です。各自、自分の教室に戻ってください』
俺は、割り当てられた教室に一人で入った。
静かすぎる。
ベッドに座り、ポケットに入ったままの紙を、ぎゅっと握る。
(……これでいいのかよ)
廊下の向こうで、何かが動く気配がした。
足音。
(……人狼)
胸が、嫌な音を立てる。
時計は、ゆっくりと、深夜を指していった。
翌朝、6時。
スピーカーが鳴る。
『朝になりました』
…一拍、間。
『パン屋が美味しいパンを焼いてくれました』
「……」
生きてる。パン屋は、まだ。
___でも。
『昨夜、1名が人狼により襲撃されました』
息が、止まった。
『犠牲となったのは__ゆあんでした』
…一瞬、意味が分からなかった。
「…え?」
声が、情けないくらい掠れて出た。
「ゆあん…くん……?」
教室に集められた俺たちは、誰一人、すぐに言葉を発せなかった。
昨日まで、「鶏肉がどう」とか、「ゲームがどう」とか、笑ってた奴の名前が__過去形になった。
「…うそでしょ……」
のあさんが、膝から崩れ落ちる。
「朝まで…生きてるって……」
えとさんは壁に拳を打ち付けた。
うりは歯を食いしばったまま、床を睨んでいる。
(……人狼は、もう人を殺したんだ)
現実が、はっきり突きつけられた。
パンが配られる。
白い袋に入ったパン。
でも、誰も手を伸ばさなかった。
「食べないと、体力持たないですよ…ほら、みんなも、」
なお兄が言う。
「そんなの分かってるよ…!」
どぬが机を叩いた。
「でも…喉、通らないよ…」
俺は、無理やりパンを口に入れた。
味がしない。
(……次は、誰だ)
午後。
空気は昨日より、ずっと重い。
俺とえとさん、ヒロくん、シヴァさん、もふくん、るなで話し合いをしていた。
「昨日の夜、誰も廊下出てないよね?」
もふくんが、慎重に聞く。
「出たら死ぬんでしょ?」
えとさんが言う。
「私でもそんな馬鹿じゃないよ」
……いる。
人狼だけは、出られるから。
「……ごめん」
ヒロくんが突然謝る。
「昨日の投票、後悔してる」
「でも、たっつんが怪しいって俺が言い出したのにさ……変だよね、」
「……大丈夫。俺もだよ」
シヴァさんが頷いた。
「でも、今日も選ばないと…」
すると、もふくんが口を開いた。
「誰か、この中に役職持ちの人はいないの?」
「今は出ない方が良いんじゃないの?」
るなが咄嗟に言う。
「だって、役職持ちの人がこの場で出たら、その人が今夜やられちゃうでしょ」
「…この中に、人狼がいたとしたら」
もふくんは少し考えて、返す。
「だけど、騎士が守ってくれるんじゃない?騎士さえ生き残っていれば、大事な役職の人は生き残れる」
るなも食い気味に返した。
「この中に騎士がいるとは限らないよ!」
「だけど、騎士がいた場合、どこを守れば良いのか明確になるよ」
ずっと考え込んでいたシヴァさんが、徐ろに口を開いた。
「次は、確率で行くかな。誰も役職を出さないなら」
「確率?」
えとさんは眉を上げる。
「人狼は3人。1人は、夜に殺された」
「つまり、まだ2人以上は絶対にいる」
全員の視線が、自然と、互いを避け始める。
俺は、胸の奥が冷たくなるのを感じた。
(……俺は、人狼側なのに)
でも、人が死ぬたびに、心が削れていく。
午後5時。
議論時間。
「……俺は、昨日から、ヒロくんが気になってる」
どぬが、ぽつりと言った。
「リードしすぎな気がする。人を誘導してるような感じ」
「……それ、俺も思った」
もふくんが、迷いながら言う。
「るなは、もふくんが怪しいと思うよ」
るなははっきりとした口調で、そう言い切った。
「なんで?」
「だって、役職持ちの人が役職を出すように誘導してたの、もふくんじゃん」
「役職の人を早く暴きたい人狼に見えるもん」
「それは誤解だよ。俺は、騎士が確実に守れる位置を決めたかった」
「そうすれば、騎士が死なない限り、その人だけでも守られる」
「それが、村の勝利の鍵になると思ったんだ」
すると今度は、うりが話し始めた。
「騎士が確実に守りに入る位置って…」
「それ以外は無防備ってことだよね」
「まあ、そうなるけど…」
「じゃあ、今のもふくんの言ってることだと、ほぼ確実に、毎晩の人狼の襲撃は成功することになる」
その事実に気づいた時、全員が息を呑んだ。
「お前さ、騎士の邪魔が入って襲撃が失敗しないように、さりげなく仕向けたんじゃないの?」
うりは、完全にもふくんが人狼陣営であると、ロックオンしたように見えた。
「待ってくれ、俺はそんなことは意図してない、!」
「人狼の襲撃のせいで重要な結果を伝えられないまま死んでいく人をなくすためだよ!」
「たっつんさんかゆあんくんの役職が、騎士である可能性も、ありますよね…」
のあさんも、もふくんへ問いた。
「もふさん、今の生存者の中に、騎士が残ってるって…確信を持って言えますか、?」
もふくんは、言葉に詰まる。
それと同時に、空気が張り詰めているのを感じた。
そう、忘れてはいけないのは___
このゲームは、誰かを殺さないと進まない。
『5時30分。投票を開始します』
俺は、目を閉じた。
(……ごめん)
「…全部、裏目に出て、正直悔しい。生き残れよ」
処刑は一瞬。
血も跡も、何も残らず消える。
まるで、最初から居なかったかのように、綺麗に散る。
「……」
誰かが、泣き出した。
(……また、俺は生きてる)
今日も、恐ろしい夜は来る。
明日、自分が生きてる保証なんて、どこにも無かった。
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【死亡者】 たっつん、ゆあん、もふ
【生存者】 じゃぱぱ、のあ、シヴァ、どぬく、うり、えと、ヒロ、なおきり、るな
【残り】 9人
あ、あとなぜか次の4話目がセンシティブ判定食らってるけど何もセンシティブじゃないです普通に見てください(_ _)
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