テラーノベル
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理香がすぐさま手を上げる。
「いやはや相変わらず酷いね友美君のプロットは……指摘いいかな?」
「あんたにだけは言われたくないわよ……それで指摘したい部分は?」
「それじゃあ先生、私のパソコンの画面をプロジェクターに映していただけますか?」
「分かった」
理香の指示で教子先生がマウスを操作すると、プロジェクターが別画面に切り替わる。画面は理香が友美のプロットを編集したものらしく、赤字に変えられた箇所があった。
「変身ヒーローの主人公ムラサメが乗る巨大ロボットのジャバウォックに搭載されているナノフレームセンサーの設定が全て謎のブラックボックスとあるが、これは何かね? そのナノフレームセンサーの力によってロボットより何十倍もでかい巨大宇宙ステーションを持ち上げ、地球落下阻止。星をも破壊するデススターレーザーをそのロボットが搭載するナノフレームセンサーが発するバリアによって地球を守っているが……さすがにご都合主義ではないかね?」
理香は友美のプロットの赤文字の設定部分や物語のあらすじの表示倍率を変更し、拡大して分かりやすいようにしていく。
「これはご都合主義ではないわ。ナノフレームセンサーをデウス・エクス・マキナとして使用しているだけよ。つまりは……困難の解決の手段よ!」
「まさか君が機械仕掛けの神を語るとはね。もっともな言い訳だ。だが、ジャバウォックがマグナムレールガンという戦艦を一撃で沈める兵器に対し、近接武器のアイアンジャベリンというのは何かね? アイアンというのだから、もちろん鉄なのだろう? 近未来兵器が使われているのに鉄の槍を使うのはいかがなものかと思うが……その他にもハイパーモーニングスターというのはトゲ鉄球を投擲して、敵に当てるものだと思うのだが、これもいささか原始的ではないかね? 味方軍や敵軍はレールマシンガンや高周波ブレードを使用しているのに……おかしな話だと思わないかね? まさかこれもナノフレームセンサーの力でアイアンを別の金属に変えるとか言わないだろうね? だとしても、そのトゲ鉄球を振り回して戦う理由は分からない。かっこ悪いと思うのだがね」
理香はまた別の設定の文字を拡大させて言う。
「そ、それは浪漫よ! アイアンという響きとか、アイアンマンもいるぐらいだし、トゲ鉄球も見る人によってはかっこ良いのよ!」
友美は赤く染めながらも、無茶苦茶な反論をする。
「あとこれは多人数設定のせいか、印象をつける為かね? 魔法少女とヒーローに和洋中で統一感が無い。チャイナ服であったり、西洋甲冑であったり、着物であったり、忍び装束の忍者、ドレス、全員がバラバラだ。ヒーローといえば、同じ揃ったデザインで登場するものだが、そこに変身ヒーローと魔法少女が登場する事で近未来兵器であったり、魔法であったり、どうもごった煮感があるようだ」
理香がマウスでプロットをスクロールし、キャラ設定部分の赤文字を拡大させる。
「個性が必要だと思ったからよ! 最近のスマホゲームでも和洋中バラバラじゃない! いろんなキャラが居た方が読者だって楽しめると思ったのよ!」
友美は納得できないのか、苛々した口調で反論する。
「確かにスマホゲームなら四十八人以上いてもおかしくないだろうね。しかしね。限られたページ数で物語を展開していく小説なら、その四十八人は邪魔だ。スマホゲームは使いたいキャラを選択し、育てていくのが本質だ。プレイヤーが主人公やヒロインを選ぶ事ができる。だが、小説は読者が主人公やヒロインを決めるのではない。作者が主人公やヒロインを決める。まあ、スマホゲームに関してもプレイヤーが魅力あるキャラや強いキャラに限定して編成してプレイしていくのだから、数人がメインの話になっていると思うがね」
「他には……」
友美は呟くように言って、下を向きながら、ノートに書き殴り始める。
「ゲームで思い出したのだがね。ゲーム的な表現が多いと感じたよ。巨大ロボット戦ではステータス表記がされ、HPと攻撃力、守備力、EPなどがあったと思うが。敵や味方が攻撃し、ダメージを受ける度にそのステータスに謎の足し算と引き算が行われ、特殊武器や特殊装甲の効果、バフ、デバフの効果もあって、ややこしいと思うのだがね。これはスパロボやカードゲーム的なノリで読者を楽しませたかったのかね? TRPGを書いているならともかく、この表現はさすがに読者を混乱させると思うのだがね。それと、この壮大な物語では、どのラノベの新人賞でも、応募規定のページ数を超えてしまうと思うのだがね。一からプロットを見直し、書き直した方が良いと思うが。そうは思わないかね友美君?」
にやりとした口調の理香に友美は下を向いたまま、力を込めてノートに書き記している。
「……そうですね……アドバイスありがとうございました……」
友美は反論できず、下を向いたまま、悪の組織にマインドコントロールされた生き人形のように呟くように言った。
「他に意見があるものはいるか?」
教子先生の問いに対してラノケンメンバーは静まり返る。理香がほとんどの指摘を言ってしまったのもあるが、友美の精神的ダメージを考慮して、これ以上は指摘できない雰囲気があった。
「指摘がなければ次いくぞ。熱情、席に戻れ」
友美は教子先生に席に戻るように言われると、ゾンビのようにフラフラになりながら歩き、ボソボソと呟くように【どうして好きなものを小説にしちゃいけないのよ】と、嘆きが聞こえてきた。
「次にプロットのプレゼンをしたいものは前に出ろ」
八雲瑠月
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