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八雲瑠月
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「私がやりますわ!」
エロスが勇ましく手を上げ、前に出る。まるでランウェイを歩くモデルのように歩き、教卓にあったタブレットPCにレッドムーンのロゴと少女騎士のイラストが入ったUSBメモリを挿していた。そしてエロスはタブレットPCの画面を操作し、プロジェクターにプロットを映した。プロットはプレゼンテーションソフトで書いたのか、図形や記号で分かりやすく記載されていた。
「私が書いたプロットのタイトルは《スープを覗き込んだら擬人化食品少女の異世界だった》ですわ。コンセプトは食の女神達による甘美な触れ合いですわ」
エロスは堂々と喋り、タブレットPCを操作する。
「待て……エロス、コンセプトで嫌な予感がする。それは普通の中高生が見るラノベ小説として出せる内容なんだろうな?」
教子先生が片手で頭を押さえて言う。
「ええ、先生。私がエロを書いたとしても、ギリギリの範囲内、殿方のキノコを立たせても、白い汁もラブなジュースも出ませんわ!」
「おい、もうその発言で嫌な予感しかしないな。まあ、とりあえずプロットの説明をしてみろ」
「では、続けますわ。最初に……」
淡々とプロットの説明をするエロスだったが、書也は指摘部分をノートに書き記そうとしたが、手に持ったシャーペンが思わず震えた。聞いていてその内容がまるで頭に入ってこないのだ。先ほどの友美の時とは違い、分かりやすい内容だが、理解してはいけないと脳が拒否するのだ。それを認めてしまったら恥ずかしさのあまり、死んでしまいそうなほどに……書也のキノコも聞いていて何度か立ち上がり、それを押さえるほど、強烈なプロット内容だった。
「分かりやすいだけに危険だなこれは……」
教子先生は思わず頭を押さえた。
「このプロットについて、質問などはございますか? もちろん手取り足取り、説明いたしますわ。例えばコウノトリがなぜ赤ん坊を運んでくるのか、という質問でもあろうともです」
「保険体育じゃないんだ……コウノトリの解釈説明はするなよ!」
教子先生は言って、チベットスナギツネのような目がエロスをずっと見つめている。エロスは教子先生を気にせずに書也に視線を送り、握手を求めるかのように手を伸ばした。
「できればただ一人の男性部員である書也さんには、特に感想をお聞かせ願いたいですわ」
エロスはさらりと笑顔で言ったが、女性が多い部活で下ネタを指摘するのは、さすがの元中二病の書也でも敷居は高かった。
「……パスで」
興奮し、鼻を鳴らし続けるエロスの熱い視線を書也は見ないようにし、呟くように拒否の返答をした。
「どうしてですの!?」
エロスは納得できないのか、声を上げ、教卓を叩くように両手を突いた。
「よし、じゃあ他の奴が指摘してやれ」
「はい、エロスの小説をツッコミたい」
幽美が手を上げて言う。
「よし、いいぞ」
教子先生がキーボードを操作すると、今度は幽美のパソコン画面がプロジェクターに映し出された。
幽美はワイヤレスキーボードと自前のタブレットPCのタッチパネルを操作する。スクロールされていく画面は幽美が編集したのか、エロスが記載した設定や物語の部分に吹き出しのようにコメントが付けられていた。
「まずエロス。コメントの記載の通り、説明していく。給食室のスープから声が聞こえ、顔を突っ込み、異世界に行ってしまい、食べ物モチーフのヒロインのハーレムとなる展開、これはラノベ的にとても良いと思う」
「お褒めいただき光栄ですわ」
「でも、この部分はやりすぎ」
幽美はタッチパネルを操作し、スクロールさせ、次のページを表記させる。
「悪食魔神パスタロールのパスタがんじ絡めからの白子ソースカルボナーラのぶっかけやモチモッチーの尻餅搗きはまだ許せる範囲。けど、相手を卵にするエッグクィーンの卵回帰の部分で尻穴に入れるシーンがオ〇ニーを連想させる描写になっていて、アウト臭い」
「おほほほ!? 甘いですわ幽美さん! オ〇ニーではありませんわ。アナルいえ、お尻の穴ですもの」
誤魔化すように笑い声を上げるエロス、その額に冷や汗が流れており、何度かハンカチで拭き取っていた。
「エロス、際どいのはまだある……ソーセージ男爵の取り巻きであるポークビッツボーイのチンチンブラブラソーセージ踊りも下品! アニメ化したら、主婦の皆様にクレームがくるレベル! ふたなりバナナガールボーイの股間のバナナを強制的に男性主人公やヒロインに咥えさせたり、尻穴に突っ込んだり、マジヤバい! 以上!」
「幽美さん、ご指摘ありがとうございますわ。お子様には少し刺激が強すぎたのかしらね。描写を少し変えますわ」
エロスは幽美に会釈した後、スマホを操作し、メモの為かポチポチと何かを書き記している。
「他に指摘したい者はいるか?」
教子先生の声に反応する者はなく、手は上がらなかった。
「エロス……ラノベにエロ展開はいらんとは言わんが、少しは自重しろ。プロになった時だけでなく、新人賞の下読みにもエロや下ネタに苦手な者はいる。特に小説のネット投稿に関しても、ギリギリのエロであっても寛大ではないサイトもあるし、最悪、小説だけでなく、アカウントが消されるなんて事もある」
「肝に銘じておきますわ」
エロスは教子先生に会釈すると、タブレットPCからUSBメモリを抜いて、自分の席へと戻っていく。
「次、やりたい奴」