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#前世
shima7a
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第90 話 「新しいキャプテン」
2024年4月。
春。
柳城高校。
桜が満開だった。
しかし。
グラウンドにはもう塁も史陽もいない。
去年まで当たり前だった光景が消えていた。
甲子園優勝。
全国制覇。
柳城高校史上最高の世代。
その三年生たちは卒業した。
残されたのは新チームだった。
練習前。
全部員がホームベース付近に集まる。
福間監督が前に立つ。
静かな空気。
誰もが緊張していた。
「新主将を発表します」
全員が顔を上げる。
名前が呼ばれた。
二年生の主将。
甲子園優勝メンバーの一人だった。
拍手が起こる。
だが。
新主将の表情は硬かった。
練習後。
主将は一人でベンチに座っていた。
そこへ福間監督がやって来る。
「どうしましたか」
主将は少し迷う。
そして本音を口にした。
「不安です」
福間監督は黙って聞く。
「塁先輩も」
「史陽先輩も」
「すごすぎました」
去年の甲子園。
全国制覇。
誰もが知るチームだった。
「自分たちにできるでしょうか」
福間監督はしばらく空を見た。
そして静かに言う。
「比べなくていいです」
主将が顔を上げる。
「皆さんは皆さんです」
「塁たちは塁たち」
「今年の柳城は今年の柳城です」
それだけだった。
だが。
主将の肩から少し力が抜けた。
翌日から。
新チームは本格的に始動する。
走る。
打つ。
守る。
地味な練習の繰り返し。
だが。
誰一人手を抜かない。
甲子園優勝世代の背中を見てきたからだ。
そして迎えた五月。
春季福岡大会。
柳城高校はベスト4まで勝ち進む。
だが。
準決勝敗退。
優勝はできなかった。
試合後。
選手たちは悔しそうにうつむく。
すると福間監督が言った。
「良い敗戦です」
選手たちが顔を上げる。
「今負けてよかった」
「夏に勝てば良いのです」
その言葉に全員が頷いた。
六月。
夏の大会が近づく。
学校中が期待していた。
二年連続甲子園。
二年連続全国制覇。
そんな声も聞こえてくる。
しかし。
福間監督は変わらない。
「目の前の一試合です」
いつもの言葉だった。
そして七月。
福岡大会組み合わせ抽選会。
主将が抽選会場へ向かう。
柳城高校。
新たな夏。
新たな挑戦。
甲子園優勝世代の後継者たちの戦いが始まろうとしていた。
第92話 終
コメント
1件
読了しました🌙 卒業した伝説の背中を追いかける新主将の「不安」、すごく響きました。福間監督の「比べなくていい」「今年の柳城は今年の柳城」という言葉にじんときて……「良い敗戦です」も、強さがあって好きです。新しい夏の始まり、静かに見守りたくなりました。