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キュルノ
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#学園
キュルノ
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蒼月
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「佐藤、病院内の端末アクセスログ、特にICUの医療機器(ネットワーク)にアクセスできる『システム管理権限者』のリストを今すぐ出せ!」「は、はいッ! 照会結果出ました! システム部のスタッフと、心臓血管外科の勤務医あわせて18名……そのうち、右手の甲に『火傷の痕』がある人物は——」
佐藤がタブレットの画面を凝視し、息を呑んだ。
「……一人だけ該当します。心臓血管外科の講師、江口(えぐち)達也・35歳。元々は医療機器メーカーのエンジニアから医師に転身した異色の経歴を持つ男です!」
「江口だな……! 今どこにいる!?」
「今夜は当直ではなく、自宅待機のシフトのはずですが……院内Wi-Fiのログを辿ると、なんと本館5階の『旧病棟アーカイブ室』の端末から、現在進行形でICUのメインサーバーに遠隔ログインされています!」
「旧病棟だと……!?」
俺は胸ポケットの火のついていない煙草を床に吐き捨てた。
あの『開かずの旧病棟』か。九条の言っていた噂の場所——今は使われていない廃エリアを、あいつはサイバー殺人の『隠れ家』にしてやがったんだ。
「佐藤、鑑識と応援の制服組を旧病棟の出入り口に配置しろ。絶対に外へ逃がすな!」
「了解です! 先輩、気をつけてください!」
◇
カビと埃、そして錆びついた消毒液の匂いが充満する旧病棟。
薄暗い廊下の奥、半開きになったアーカイブ室の扉から、青白いPCモニターの光が漏れていた。
カチャカチャカチャ……と、不気味なほど規則的なタイピング音が響く。
俺は拳銃のホルスターに手を添え、足音を殺して部屋へ踏み込んだ。
「……いい趣味だな、江口先生よ」
タイピングの手がピタリと止まった。
パイプ椅子に座り、キーボードを叩いていた白衣の男が、ゆっくりとこちらを振り返る。
細縁の眼鏡の奥の目は冷酷そのもの。そして、キーボードの上に置かれた右手の甲には、渚の言っていた通りの痛々しい『大きな火傷の痕』が残っていた。
「……警察ですか。外部からの不正アクセス対策は完璧に遮断していたはずですが……なぜここが分かったのかな?」
江口は慌てる素振りすら見せず、不敵な笑みを浮かべた。
「お前が画面越しに殺した4人目の患者だ。……あいつが、最後の力を振り絞ってお前の面の皮を剥ぎ取っていったんだよ」
「ハハッ、オカルトですか。証拠にもならない戯言だ。私はただ、研究のためにサーバーのログを点検していただけですよ。私が患者を殺したという客観的な証拠がどこにある?」
江口は嘲笑いながら、キーボードの『Enterキー』の上に指を置いた。
「今、ICUに入っている5人目の患者……重度の狭心症の老人ですがね。このキーをひとつ叩けば、彼の微量投与ポンプのプログラムが書き換わり、5分後に致死的な不整脈を起こして死ぬ。……だが、それを証明するプログラムのログは、同時に全消去(フォーマット)される手はずになっている。私を逮捕しようとすれば、彼は死に、証拠も永遠に消える」
「てめぇ……ッ!!」
神にでもなったつもりで、人の命を人質に取るクソ野郎。
俺の怒りが頂点に達し、拳銃を引き抜こうとした——その時だった。
「……消えないよ」
背後から、静かな、けれど凍りつくような声が響いた。
暗い廊下から歩み出てきたのは、荒い息を吐きながらも、まっすぐに江口を射殺すような瞳で見つめる渚だった。
「渚……!? お前、下で休んでろと言っただろ!」
「ううん……来なきゃダメだった」
渚は江口の前に立ち、青白く光るPCモニターと、江口の右手の甲をじっと見つめた。
「江口さん。あなたの右手の火傷……5年前の医療機器メーカー時代の工場火災でできたものでしょう? あなたのミスのせいで起きた火災で、あなたは自分の手と、大切なキャリアを失いかけた」
「な……なぜそれを……!?」
江口の冷酷な仮面が破れ、動揺が走る。
「あなたは自分の『技術』が世界で一番正しいと証明したかった。だから医師になって、自分が開発した遠隔システムで、人間の命を思い通りにコントロールして……神様になったつもりでいたんだね」
「だ、黙れ!! ガキが知ったような風を……っ!」
「でもね……あなたが殺した4人の患者さんたちは、みんな『死にたくない』って……家族の元へ帰りたかったって、叫んでたよ。あなたの自己満足のために殺された人たちの記憶が、全部……私の中に残ってる」
渚が胸元を強く握りしめ、一歩足を踏み出した。
「あなたがいくらデータを消去しても……私のこの手が、あなたの罪の証拠だよ」
「ひっ……!? な、なんだお前は……化け物か……!?」
渚の瞳に宿る、死者たちの無念と圧倒的な「本物の気迫」に押され、江口は悲鳴をあげてEnterキーから指を離し、腰を抜かすように椅子ごと転倒した。
「そこまでだ、江口ッ!!」
俺はその隙を逃さず飛び掛かり、床に倒れた江口の背中に膝を叩きつけ、腕を力任せに捻り上げた。
**ガチャリ!**
冷たい金属音が響き、江口の両手首に手錠が嵌められる。
「ひぃぁぁっ!? 離せ! 離せよ!!」
「〇〇大学附属病院における連続殺人および電子計算機使用詐欺容疑で逮捕する! ……てめぇの歪んだプライドもろとも、取調室でじっくり叩き潰してやるよ」
旧病棟の静寂の中に、佐藤たち駆けつけてきた捜査員たちの足音が響き渡る。
手錠をかけられた江口を引きずり起こし、佐藤に引き渡すと、俺は肩を揺らして立っていた渚の元へ駆け寄った。
「……渚! 大丈夫か!?」
渚はふっと体の力を抜き、そのまま俺の胸の中に倒れ込んできた。
「……うん。……5人目の患者さん、助かった……?」
「ああ、助かった。お前のおかげだ」
俺は渚の小さな頭を優しく抱きかかえ、深くため息をついた。
病院の闇に潜んでいた「透明な殺人鬼」は捕まった。
だが、渚の中に目覚めてしまったこの能力は、またしてもあの子の身体と心を削っていった。
「……帰るぞ、渚。今日は佐藤に特大のパフェ奢らせてやるからな」
「……ふふ、うん。……いちごパフェがいいな……」
胸の中で小さく微笑み、そのまま眠りについた渚。
俺はあの子をしっかりと抱き上げ、朝焼けが差し込み始めた病院の廊下を、ゆっくりと歩き出した。
コメント
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うわ、第11話めっちゃ熱かった……! 江口を追い詰める展開も手に汗握ったけど、何より渚が「消えないよ」って現れるシーン、ゾクッとしたよ。あの子の中に残ってる被害者たちの記憶とか気迫で、江口の仮面が剥がれていくのが本当に鮮やかで。最後のいちごパフェのやりとりでほっとさせられるのも良かった。次も楽しみにしてる!