それから随分たったと思う。夏の始まりだと言うのに無駄に暑くて、汗ばかりかいてしまった。
うるさい程に鳴き叫ぶ蝉の声も、揺れだす視界も、どうでもよかった。
ここはどこなのかも分からなかった。ただ、これから死ぬと言うのにはしゃいでいた。本当に、馬鹿みたいに。まるで昔に戻ったみたいだった。
不意にレイは言った。
『ハナ、ハナが居たからここまで来れたよ。だから、、、だから、もういいよ。もう、いいよ。』
『死ぬのは私ひとりでいいよ。』
そして、レイは首を切った。
まるで何かの映画のワンシーンだ。
私の愛するレイ
可愛くて、冷静なレイ
私以外、誰にも愛されなかったレイ
何か、悪い夢でも見ている気がした。目の前が暗くなる。
気づけば私は病院にいた。
事情聴取だとか、そんなの気にしてられなかった。
私は病院を抜け出した。レイを探した。
今まで行ったところ、全部行った。額の汗すらどうでもいい。
いない。いない。いない。
レイだけが、どこにもいない。最愛のレイだけが。
そして時はすぎた。ただ、暑い日だけが過ぎていった。
家族も、クラスの奴らも居るのに、何故かレイだけがどこにもいない。
あの、あの夏の日を思い出す。
私はレイを今でも探している。
レイの無邪気さ、笑顔、声、全てが私の頭を飽和する。
レイは、何も悪くない。何も悪くは無いからさ。
もう投げ出しちゃおうよ。そう言って欲しかったんでしょ?