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あの日の君に、挨拶を。

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あの日の君に、挨拶を。

3 - 第3話 モテ期?

♥

39

2024年09月12日

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「今日は間に合いそうだな」

昨日の寝坊を反省し、HRの15分前には着くようアラームをセットした甲斐があった。

天気が良く、ぽかぽかと暖かい陽射しが心地よい。引かれると思って今まで誰にも話せていなかったあの人のことを光に打ち明けることができ、心做しか気分も良かった。

「おはよーございます」と呟き教室に入ると、

もう既にクラスメイトの半分以上が登校していた。

「あ!!想!おはよ!」

人懐っこい笑顔がぱぁっと輝く。

「おはよ、光…ってか何これ?!!」

自席に近づき1番に目に飛び込んできたのは、俺と光の机に貼られた大量の付箋だった。

「いやぁ俺も今さっき来たとこでさ、困惑中」

「『私のIDです。連絡ください』….だ、誰」

「これがモテ期ってやつかなぁ」

呑気に笑う光を見るとつい気が抜けてしまうが、さすがに怖い。まだ入学から1日しか経っていないのに。

「す、すごい熱意だな….」

「俺のは『可愛い』ばっかなのに想のには『かっこいい』とか『一目惚れです』とか!!ずりぃ!!」

「そうか…?光の方がいい顔してると思うけど」

これは本音だ。光は男らしいというより、中性的な顔立ちをしている。男の俺から見ても綺麗だ。

「やっぱ持つべきは想だな!!ありがとよ!」

さすがに大量の付箋を貼ったままにはしておけないので、俺たちは丁寧に剥がしファイルに入れておいた。

「…そういえば、今日あの人探しに行くのか?」

「うーん、もちろん探したいんだけど、まずお礼しに行きたい人がいて…その人からかな」

“お礼しに行きたい人”とは、入学式の日の朝、遅刻から俺を救ってくれた先輩だ。

「へー!いっぱい知り合いいるんだな!」

「うん。今度光にも紹介するわ」

そう言って、HR後俺はすぐに2年生の階へと駆けた。

「名前もわかんないんじゃ居場所も聞けないしなぁ…..」

一応全クラス見て回ったが、それらしき人はいなかった。

あれだけの声量とガタイなら、すぐ見つかると思ったのだが…。

(…まぁ、同じ校舎内には確実にいるんだしいずれ見つけられるか。)

早くお礼がしたいな。

諦めて教室に戻ると、やけにクラスが騒がしかった。

「なんかあったの?」

他のクラスメイトと話していた光に聞く。

「あぁ、さっきまこっちゃんが部活動体験のプリント配布してくれて!これ想の分!」

「なるほど、ありがと!」

たしかに、新入生にとって部活選びは1番初めにくるビッグイベントだ。騒がしくなるのも不思議ではない。

「まぁ想は決まってるから必要ないか!」

「だな〜。でもこういうのやっぱテンション上がるよな」

「え、凪谷くん部活決まってるの?何部?」

女子が尋ねてきた。”まこっちゃん”の名付け親だ。

「剣道部に決めてるよ。中学でもやってたから」

「えー!スタイルいいし絶対道着?似合うね!」

「私も見に行きたーい」

「マネージャーって雇ってる?」

次々に女子が会話に加わる。

「え…えっと…」

…何から答えればいいんだ….

「ストーップ!!!そんな一気に聞いたら想が困るだろー?」

救世主光が間に入ってくれた。

「ちぇーっ。光くんばっかりずるーい」

「私は光くん派かなぁ…」

口々に思ったことを呟き去っていく女子に、圧倒されてしまう。台風のようだ。

「やっぱ光だわまじで愛してる」

「購買のメロンパンで手を打つ♡」

「仰せのままに!!!」

まだ出会ったばかりなのに、こんなノリで話せる友達ができるなんて、俺は幸せ者だ。

「そういえばさ、明日から体験始まるらしいけど想はやっぱ剣道部だけ行くの?」

「んー、まずは剣道部かな。その後は、光のプレイ見にバスケ部は行くつもり。」

部活動体験は、未経験者は見学、経験者は先輩に混ざって参加することになっている。

「まじか!!俺も同じこと考えてた!」

「最高」

…高校の剣道部か。俺なんかが通用するか不安だけど、楽しみだな。

色んな気持ちを抱えて、俺と光はメロンパンを求め購買に向かった。

あの日の君に、挨拶を。

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