テラーノベル
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「タダで撤退すると思うなぁああぁぁあああ!!!!」
完全に消えたわけではなく、残された炎が、館に向けて思いっきり、叩きつけるかのごとく放たれた。
それは二階に命中すると、瞬く間に広がりを見せた。
「お前らみたいなクズが!!俺らの人生を壊した!!」
「殺してやる!!お前らなんかぁあああ!!!」
次第に館は焦げ、焦げた箇所から次第に穴がぽっかりと空いた。
「突入しろ!!全員殺せ!!ぁああ゛ぁあああっ!!!」
それは1階にまで広がり、爛れ焼け落ちた穴から、反逆者は次々と館内へ突入した。
「…っ!クソ!!」
「…菓子ちゃんは?」
ヒナは聞く。
「…メイドに任せて、2階の誰も来れない場所に隠れさせてる…」
ルカの声は、今までにないほど震えていた。
もう、彼も限界なのだとヒナは直感する、そのレベルだ。
滅多に見ないほど彼は震えている。
「でも…!時間の問題だ、早く奪還しないと…というか、もうこの舘は…すて、捨てないと、やばい。」
ルカはもう立つのすらいずれ困難になりそうな、まるで産まれたての子鹿のように震えている。
ヒナも震えながら、大きく頷く。
そして自分に言い聞かせるように呟く。
「…そっ、か…」
ヒナは、俯くルカの方を見やった。
「そう…だよね、もう…だから、早く逃げよう…?」
(…ルカ兄も疲弊してる、今は動けるのは…私だけ…なのかな…?)
(…怖い、怖いよ…)
(…でも、私が…私がやらないと……)
ヒナは躍起になる。
もう全部どうでもいい_そうやって身体を震えあがらせる。
「…うぅ…!!」
「…ルカ兄…私の手を取って…!」
「わか、った、わかった。」
ルカはどこか悲しそうに、悔しそうに、だが威厳を捨てまいと、笑顔を作ってみせる。
「…まかせて、いいか。」
ルカからの_試練のようなものだ。
だがやるしかない。
「…任せて、ルカ兄」
ヒナは自らの体温でルカの震える手を包み込み、ルカみたいに笑ってみせた。
「たまにはかっこいいとこ、見せないとだから!」
「…はは」
「…成長した、ね…ヒナ」
「兄として嬉しい、よ…」
「…っ!」
「ルカ兄…」
「……」
ヒナは、焼けた臭いがこちらにくるのを分かりながらも、ただルカの手を取って、歩いた。
_今はここが戦場だ。
なんでもなかった廊下すら、嫌な汗が出るほどの緊張感を醸し出して、痛い。
_煙が体に入り込んで、下の階からは怒声が響いている。
「…あ、執事の方。」
「…ヒナ様!?だ、大丈夫なんでしょうか…?」
「任せて、どうにか…犠牲を抑える方法を考える。」
「…出来ることがあれば、いくらでもお手伝いします!」
ヒナは強がって笑った。
「ありがとう。」
「…私が前に出るから、ルカ兄のこと…頼んでいい?」
「はいっ!!もちろんです!!」
執事は頷き、ルカは執事の元についた。
なんだか決別みたいですごく嫌な予感はする、だがこれは試練だ、私はこれを乗り越えなくてはならない。
「…ヒナ様!」
ルカを預けた執事に呼び止められる。
「…どうしたの?」
ヒナは優しく笑いかけた。
「…貴女の命のことも、考えてください。」
「リィン・システムがある以上、完全にタヒんだりはしない、です。」
執事の目は、どこか依存でもするかのような必死な目だった。
ヤキモキしながらも、執事は_今1番合いそうな言葉を探った。
「…困った時は頼ってください!」
ヒナは、困ったように笑った。
執事を見るその目は、どこか泣いてしまいそうだ。
だが今は泣いてはいられない。
「………ありがと!」
ヒナは、それだけを残して、下の階へと走った。
___
「っ…うそ、もうここまで_」
反逆者は2階まで迫っていた。
丁度、ヒナと会うくらいのタイミングだ。
「クソ野郎を見つけろ!!何としても!!」
「ぜんこぱす1人に頼ってらんねぇから!!」
反逆者の怒号を切り裂くように、ヒナの声は響き渡る。
「その必要は無いよ。」
戦ってた反逆者、またメイドまでもが_ヒナに圧倒され、思わずそちらを見た。
「…見つけたぞ!!殺せぇえぇ!!」
「…無駄だよ。」
ヒナは右手を目先から_2mほどの場所にいる反逆者の方へ、かざすようにして伸ばした。
_刹那、手首あたりから鎖が4本出たかと思うと、殺せと叫んだ20代ほどの男が、1本目の鎖で、腹から布団の洗濯物のごとく吊り下げられる。
男は、音速ほどの鎖に驚いてしまったのだ、そうしてバランスを崩し、はたから見たら哀れなサマになっている。
「……こんなんじゃビビらないでしょ?」
鎖に意思でも与えたかのごとく、2本目の鎖は脇にいた女に向かう。
顔を隠すヘルメットの一部が、鎖で穴を開けられる。
「ひっ…!!なんなのアイツ…!!どこまでも鎖に頼りっぱなしじゃない!!」
「…テメェも能力持ちか?ならプロクティルが由来なんだろうな!?」
ヒナは別の男の問いに答えることはない。
「ごめんね、いちいち答えられない。」
「私はそこまで耳が良くないの。」
(…こうするしかない、もう、止める手段なんてない。)
ヒナは迷いで震えてしまいそうな目線を必死に合わせながら、準備を済ませた。
1本目の、男を吊り下げる鎖が少し高く上がる。
すると、3本目の鎖が_男に向かった。
(…ごめんね。)
「…さよなら。」
(…きっと、いつか救われるから。)
_なんだかもう、逆に冷静なのかもしれない。
こんな事をしているくらいならまとめて一掃した方が早いのかもなぁ、なんて考える。
(…)
(あぁもう!余計なこと考えるクセどうにかなんないかなぁ!?)
「…もういいか!あはは。」
3本目の鎖のが、男を狙った。
「ッ!!外道が__」
_それは、20代の男の頭部を、的確に貫いていた。
コメント
1件
いやもう、ヒナちゃんがこんなに強くならなきゃいけない状況が切なすぎます…。ルカ兄の震える手を自分の体温で包み込むシーン、泣けました。「たまにはかっこいいとこ見せないとだから!」って、震えながら笑う姿が本当に健気で。でも「さよなら」の心の中で詫びる罪悪感、彼女が背負ったものの重さがひしひしと伝わってきます。執事の「命のことも考えて」という言葉も胸に刺さりました。もう後戻りできない戦場に立ったヒナちゃんの覚悟、しっかり受け止めました。
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