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そのとき、はるか西の果て、世界の覇者として君臨していたローマ帝国は、静かにこの東方の戦局を見守っていた。すでに古代の栄光は過ぎ去り、帝国は衰退の兆しを見せていたが、その威光と知恵は健在であった。
ローマの暗躍
ローマの元老院の一室。栄華を語る彫像が並ぶ広間に、数人の壮年の男たちが集まっていた。彼らは帝国の命運を握る重鎮たちであり、かつての支配者たちの血を引く者たちだった。
「東方の戦争は、島国と小国の勢力争いに過ぎぬ。だが、無視できない」
元老院の一人、グラックスが冷静に言い放つ。彼はその戦争がローマに与える影響を読み取っていた。明が勝てば、東方の勢力が強まり、ローマにとって新たな脅威となる。倭が勝てば、勢力は予想外に膨れ上がり、ローマの商業や政治にも影響を与えるかもしれない。
「どうするつもりだ、グラックス?」
別の元老院議員、マルクスが眉をひそめる。ローマ帝国はすでに戦争の時代から退き、影で力を維持する道を選んでいた。だが、この東方の戦局を黙って見守るだけでは済まされないというのが、彼の内心であった。
ローマの特使と密命
「我々は直接手を出すべきではない。だが、我々の存在を知らしめる機会でもある」
グラックスは微笑む。その背後には、ローマの特使が控えていた。その男はスパルタクスの名を持ち、奴隷剣闘士でありながらも、ローマ内でその機知と勇気を認められ、今や帝国の特命を帯びる身となった男である。
「スパルタクスよ、お前に任せたいことがある。東方に渡り、倭と明の戦争を観察し、その力の均衡を揺るがすことなく、ローマの利益となるよう動いてもらいたい」
「かしこまりました」
スパルタクスはただ一言そう答えると、東方への準備に取り掛かった。彼の任務は、戦場で目立たぬように動きながら、必要に応じてローマに有利な情報を収集し、影響を与えることにあった。戦争には加担せず、しかし、結果的にローマの利益が守られるようにする、それが彼に課せられた使命であった。
影からの一手
ローマはすでに影の帝国として、かつてのように世界の表舞台に出ることはなかったが、その知恵と戦略は鋭く、いまだ世界の潮流を変え得るものであった。ローマの影は、東方の戦場にもじわじわと広がっていく。
倭と明の戦いが激化する中で、スパルタクスは両陣営に潜り込み、互いの動きをつぶさに観察していた。そして、彼の背後には、ローマの元老院が見守っていた。
「東方がどう転ぶかは、まだ誰にも分からぬ。だが、ローマは勝利者の側に立つ。それが、我々のやり方だ」
グラックスは遠い東の戦場に思いを馳せながら、冷静に呟いた。