テラーノベル
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六人は、町の中心にある小学校へ逃げ込んだ。
校庭にゾンビの姿はなかった。
校舎の窓ガラスも割れていない。昇降口の扉には鍵がかかり、体育館の倉庫には水と非常食まで残されていた。
静かすぎる。
まるで、誰かが彼らのために場所を空けておいたようだった。
「ここを一晩の拠点にする」
マサカゲが、体育館の扉を閉めながら言った。
扉の向こうから、町のざわめきが遠ざかる。
カキはその場に座り込み、オレンジ色の斧を床へ置いた。
「今日はもう、足が棒だよ」
「カキはいつも棒みたいなことを言っている」
ミステーが答えた。
「それ、どういう意味?」
「よく分かりません」
「言った本人が分からないの!?」
カキの声が体育館に響いた。
誰も笑わなかった。
声が大きすぎた。
「少し静かにして。外に聞こえるから」
アオノが窓の方を見た。
メバルは救急箱を開き、全員の傷を確認する。
カキの腕には浅い切り傷。マサカゲの手の甲には擦り傷。アオノの膝には小さな打撲があった。
「これくらいなら大丈夫だ」
マサカゲが言う。
「大丈夫でも消毒するの」
メバルは消毒液を染み込ませた布を取り出した。
「メバルちゃんは心配性だなあ」
「心配するのが私の役目なの!」
メバルがカキの腕を押さえる。
その時、体育館の天井から、かすかな音が落ちてきた。
コツ。
全員が顔を上げる。
古い照明が、風もないのにわずかに揺れていた。
「……上に、誰かいるのかな」
メバルが小声で尋ねる。
「この学校に入った時、二階は確認していない」
アオノがナイフに手を添えた。
「なら、あとで見に行こう」
マサカゲが言った。
「あとで?」
カキが顔を引きつらせる。
「今すぐじゃなくていいの?」
「今すぐ行く方が危険かもしれない」
窓際では、K-Tが一人で町を見張っていた。
茶色いコートは、校舎に入ってからも脱がれていない。
K-Takasaka
55
#K-Takasaka
K-Takasaka
141
K-Takasaka
132
#K-T
カチャ。
コートの内側で、金属が触れ合う。
カチャッ。
カキはその音を聞き逃さなかった。
「Kさん、ポケットに何か入れてる?」
「入れている」
「何を?」
「必要なものだ」
「必要なものって?」
「必要になれば分かる」
「今、分からないんだけど」
「なら、今は必要ない」
K-Tはそう言って、再び窓の外へ視線を戻した。
カキは納得できない顔をしたが、それ以上は聞かなかった。
メバルも、K-Tのコートの裾からのぞいた黒い金具に気づいた。
だが、見なかったことにした。
校庭の向こうに、ゾンビの影が一つ現れた。
続いて、二つ。
三つ。
やがて、校門の外を埋め尽くすほどの影が、ゆっくりと増え始めた。
ゾンビたちは校舎を見ていた。
まるで、ここに六人がいることを知っているかのように。
そして、その群れの中から、一体だけが校門を越えた。
他のゾンビとは違っていた。
そいつは走らなかった。
まっすぐに、体育館を目指して歩いてきた。
「……あれ、校舎の場所を知ってる」
アオノが呟く。
K-Tのコートの内側で、金属音が鳴った。
今度は、誰の耳にもはっきり聞こえた。
カチャッ。
K-Tは窓の外を見たまま、低く言った。
「ここは、拠点にはならない」
コメント
1件
第3話、読みました……。体育館の静けさが逆に怖くて、ずっと息を詰めてる感覚だった。「必要になれば分かる」ってK-Tさんの言葉、何も教えてくれないけどすごく気になる。ラストの「ここは、拠点にはならない」で背筋が凍った。ゾンビが校舎を知ってるって描写、胸の奥がざわつく……続きが気になる。