コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「遂にこの日が来てしまったね」
聖奈さんが意味ありげに呟くが、もちろん大したことではない。
「聖奈もそろそろ虫嫌いを治さないとな」
「セイくん。これは嫌いとかそう言うレベルじゃないと思うよ?だって、一メートルの蟻だよ?Gならテラフォー◯ーズじゃない!!キモすぎるよ!」
うん。確かに俺も第一印象でキモいって思いました。
まぁ試練だよ。試練。
俺達は翌朝、16階層に戻ってきていた。
「昨日話した通りの作戦で行く」
「わかった」「「はい!」」「…うん」
聖奈さん。頑張れ。この階層はアンタの殲滅速度にかかっていると言っても過言じゃないんだ。
作戦と言っても単純なものだ。まずは……
「コイツでいいだろう」
視線の先にいる岩蟻を見て、指示を出す。
「聖奈。頑張って慣れてくれ」
「…うん」
パァンッ
「命中しました。敵消滅です」
消滅しても体液が消えないのはなぁ。まぁ消えたらここの難易度が極端に落ちるから仕方ないか。
「やはりここに向かってきている。他は周囲の警戒。聖奈は引き続き100匹程仕留めるんだ」
「おう!」「はいっ!」「うん…」
酷かもしれないが、頑張って慣れてくれ。さらに言えば、洞窟内の岩蟻が減ってくれたら嬉しい。
多分、元を絶たないと無限だと思うけど・・・
「よし。もういいだろう。これより洞窟に向かう」
聖奈さんの顔色は相変わらず優れないが、最初の頃より躊躇しなくなってきたと思う。死骸が残らないのが本当に救いだったな。
歩いて移動しているとライルが声をかけてきた。
「ホントにやるのか?」
「何だ?やめる理由があるなら聞くけど?」
「あのお嬢ちゃん達が死ぬかもしれないんだぜ?」
「そうだな。死んだら立ち直れないかもなぁ」
「だろ?なら引き返すなら今しかないぞ?中がどうなっているかなんて分からないからな」
そう。洞窟内の情報はない。多分岩蟻を産み出す何かがあるんだとは思っているが……
「俺が立ち直れないかどうかはやめる理由にならないだろ?俺がやめる理由になっても、パーティとしては理由が薄すぎるな」
もし、この中の誰かが死んだら発狂する可能性すらある。けど、それが理由で前に進めないなら家に引き篭もることしか出来ないからな。
「わかった。もしそんな未来が来たら、ぶん殴ってでも立ち上がらせてやる」
「頼むわ。どうやら着いたようだ」
ライルが珍しく隊列を乱してでも話に来たから、咎めなかったが……
心配事が俺の事とは…情けないな。
「あれですね」
ミランの言葉にみんなが岩山の淵に立ち、下を覗き見る。
俺達は洞窟の反対側の崖に立っている。こちらの方が正面の崖よりかなり低いから、下までは降りられそうだ。
「じゃあ昨日伝えたように、洞窟内では隊列を変える。俺とライルが左右に別れる。それを先頭に聖奈とミランが続く。エリーは最後尾で後ろの警戒をしてくれ」
細かいプランなどない。だって中身がわかんないんだもん。
俺はザイルを固定した。まずはライルからだ。
「俺はこのままでも降りれるぞ?」
「みんなに手本を見せる意味で、だ」
「ん。わかった」
ライルにベルトを通して装着させた。
もちろんライルどころか、俺でもこのくらいの高さなら飛び降りれる。無理なのは女性陣だ。
ライルは崖へと身を投げ出した。
もちろんロープの反対側は俺が持っている。ライルの動きに合わせてそのロープを緩めるだけだ。
そして、ライルはすぐに下へと着地した。
「次は聖奈だ。多分得意だよな?」
「もちろんだよ!こんな訓練どころかヘリからの降下訓練もしたよ!」
いや、それは遊んでたんじゃ?
聖奈さんもスルスルと降りていった。
「次はエリーだ」
「わ、わ、わ。高いですぅ」
まぁ10m以上はあるからな。
「頑張れ」トンッ
中々踏み出さないので、背中を物理的に押してあげた。
「きゃーーっ」
「壁を蹴るんだぞー?」
落ちていくエリーに向けて、アドバイスを贈った。壁にぶつかると怪我をしてしまうからな。
「鬼ぃー悪魔ぁー変態ぃー」
おい!最後は関係ないだろ!!事実だとしても。
「さぁ、後はミランだな」
「はい!お願いします」
ミランは怖くないのか、スルスルと降りていった。むしろザイルが無くても降りられそうなくらい、動きに澱みがなかったな。
最後は俺だ。
俺はザイルを片付けて・・・崖から飛び降りた。
ドンッ!
「うわっ!?大丈夫?」
「大丈夫だ」
身体強化を使えばこの程度の高さは問題ない。少し痺れたけど。
「よし!始めるか!」
俺は気合いを入れ直し、指示を飛ばした。
「攻撃後に突入する!行くぞ!」
『フレアボム』
エリーの魔法の後に・・・
『フレアボム』
俺の魔法が追随した。
洞窟はかなり大きいので、爆風の抜けもよく、崩落はしないだろう。もし危険な状態になっても、ダンジョンは時間経過で元に戻る。
但し、鉱石はその限りじゃないと、ライルから聞いた。
鉱石まで元に戻ったら、同じ箇所で取り放題になるから誰も危険を犯さないし、国から入場規制が掛かって俺達は入れなかっただろうな。
ワイルドボアが出る階層の草原も、通過して少ししたら元に戻っていたしな。
「行くぞ!」
「おう!」「イエッサー!」「「はいっ!」」
一人軍人が混ざっているけど無視しよう。ツッコんだら負けだからな。
中は洞窟と言われなければわからないくらいの広さがあった。だが、不親切にも暗かったのでライトで照らす。
洞窟内は、入り口の広さと変わらないサイズの通路が続いていた。
「こいつは便利だな!手が空くランタンみたいだぜ」
「おい!こっち向くな!眩しいだろ!」
「悪りぃわりぃ」
ライルは文明の利器に触れてはしゃいでいるが、奥はどうなっている?
「魔石があちこちに転がっています。相当数をここで討伐したということですね」
「よし、進もう」
敵のいぬ間に進ませてもらおう。もし奥から湧いてくるなら一緒だけど、あちこちに湧き点があるのなら早く進まないとな。
「音が聞こえます」
「よし。ミラン下がれ。ここからは俺とライルが先頭で行く」
多分ミランが聞いたのは、蟻の歩く音だろう。まるで静かな部屋でGがビニール袋にカサカサカサ…ゾワッ!?
「来るぞ!聖奈!」
パァンパァンッ!
聖奈さんは暗視機能付きのスコープを覗き、的確な狙撃が出来ている。
「よし!この調子で頼む!」
そこから500m程進むと、莫大な数の反応の塊に近づいた。
「どうやらこの先が目的地のようだな。聖奈、エリー。二人は岩蟻共を頼む。ミランは二人の安全を。俺とライルで原因を叩く」
「りょーかい!早く叩けなかったらRPG撃つからね!」
確実に俺達は巻き込まれるな。却下で。
「行くぞ!」
みんなの返事と共に洞窟を駆けた。
反応のあった場所はドーム状になっていた。
東京ドーム0.5個分くらいだろうか?
そして、その中心には・・・
「女王蟻?いや女王岩蟻か」
「そこはどうでも良くない!?」
珍しく聖奈さんがツッコミか。しかし、気が動転する気持ちはわかるぞ。
なんだよこのサイズ感は……
「あの大岩亀より大きいですね…」
そうなんだ。恐らく全長20mはある。
もはや鯨だ。
「動きませんね。先制しますか?」
「そうだな。どうやら後ろの穴から岩蟻が湧いてきているようだから、二人はそこを狙ってくれ」
女王岩蟻の後ろの壁には無数の…数えきれないほどの穴が空いており、そこから岩蟻が出て来ている。多分卵的なモノが孵ったんだろうな。
仲間が死ぬたびに孵化するとか、キリないんだけど……
「あれが無限湧きの原因だね!わかったよ!」
「行くぞ、セイっ!」
「おう!」
ライルの掛け声に合わせて、女王岩蟻へ肉薄する。
『アイスランス』
キンッ
「やっぱりこの程度じゃ効かないか」
思った通り硬かったな。だが、大き過ぎてなのか、女王岩蟻は動かなかった。
「セイ!硬すぎるぞ!俺じゃ無理だから任せた!」
『身体強化5倍!』
もう一度身体強化を掛け直し、全力で斬り掛かった。
ザンッ!
くっ!かてぇ。
「うおっ!斬れたじゃねーか!やったな!」
「ダメだ!コイツからしたら浅すぎる!」
剣の刃を全部使って斬っても、一番細い脚すら切断出来ん。
「みんなのところへ一旦引くぞ!」
「わかった!」
まさか物理が効かないとはな…効いてるかもしれないけど、反応がないからわからん……
「あれ?戻ってきたの?」
くそっ!馬鹿にしたな!お母さんに言いつけてやる!会ったことないけど。
「剣では歯が立たない。一斉に集中砲火を浴びせるぞ」
もはやこれしか無い。
「俺とエリーはフレアボムだ。聖奈はRPG。ライルは手榴弾を頼む。使い方はミランに聞いてくれ」
俺は手榴弾をライルに渡した。
「セイくん。流石に崩れるんじゃ?」
「俺もそれだけが心配だ。だが、半端な攻撃をしたところであの巨体には意味がない。
それに他にもこの階層を突破した冒険者は大勢いる。中には大魔法を使った奴もいるはずだから、離れて撃てば問題がない可能性が高いと踏んだ」
「俺はセイの判断に任せるぜ」
「わかったよ。爆風からはどうするの?」
それなんだよなぁ。行き場のない圧力はドーム状の出入り口に向かってくるよな……
「あのー。あの穴に逃げ込みます?」
えっ?
「無理無理無理無理無理」
「聖奈は壊れたけど、いい案だ。あの穴なら入れるな」
「決まりだな!」
作戦を決めたら、後は実行するのみ。
まずは穴に銃弾を何発か撃ち込み、卵なのか成虫なのかわならない何かを始末する。
その後に穴に入り、タイミングを窺う。
「みんな!準備はいいか?」
俺達は、それぞれ隣り合った穴へと入った。
「「はい!」」「おう!」「うん…」
時間を合わせた時計で、攻撃のタイミングを合わせる。
『『フレアボム』』
プシュッ
ヒュンッ
ドガーーーーーーーーーーン!!
うるせぇえ!!
〓〓〓〓〓〓〓〓小話〓〓〓〓〓〓〓〓
聖奈「アリ◯巣コロリと殺虫剤とバルサンとかを大量に投げ込んでおけば倒せたんじゃないかな?」
聖「聖奈、忘れたのか?これはバトルモノであって害虫駆除モノじゃないんだぞ?」(そんな事をしたら、折角のみんなの特訓が無駄になって、作者が困るだろ!)
聖奈「うん。汚物は消毒だね」(そんなことをしたらライルくんの存在価値がなくなるもんね)
聖 (それは世紀末モノだな)「ヒャッハー」