テラーノベル
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柔らかい旋律が、空気の中をふわりと漂う。鼓動が微かに震え、心を軽くくすぐる。その音が気持ちいいのか、心を揺さぶるのか、よくわからない。でも確かに、それは彼女を形作っていく。
「間違いなく、リズムに導かれている」
鼓動は速くもなるし、ゆっくりにもなる。でも、それは完全に自分で制御できない。体の奥で、自然なリズムがそっと流れているからだ。朝の光に目が覚め、夜の静けさに身を委ねる。その流れに、僕たちはただ乗っている。
「僕らは、存在の旋律に身をゆだねているんだ」
心の中には、勝手にオーケストラのような旋律が住んでいて、自分が来れば静かに眠りを促し、誰かが来ればそっと目覚めさせる。外の力ではなく、体と心の柔らかい波と共に生きている。
ふと疑問が浮かぶ。人は本当に、自分の人生を思うままに生きられるのか?答えはきっと、「ほんの少ししか自由じゃない」のかもしれない。
「彼らは勝手に歌い、勝手にせかし、勝手に僕たちを動かすの。いたずらっ子みたいでしょ」
酒場で煙草をふかし、軽く傾けたグラスを揺らしながら、彼女は微笑む。思い通りにならないからこそ、追うがままに行かないからこそ、僕の憧れの人は歌うんだ。
彼女は僕を見つめる。
「あなた、昔質問したわよね?どうして私の歌は魅力的なのかって」
僕は小さくうなずく。
「…それは、存在の旋律にそっと導かれていたからよ」
大観衆が待つステージに立つ彼女。眼差しはどこか遠く、少しだけ寂しげ。
そう、彼女は今、誰かに歌わせられているのかもしれない。