僕は必死に兄や父上に訴えた。まるで子供が駄々をこねるようだ。だけど、二人の意思が変わることはなかった。彼女は死刑だ。夜人の死刑は秘密基地の近くにある崖を飛び降りること。夜は太陽の影だから。つまり完全な消滅を意味する。それは、月の民も同じだ。
嫌なことが近づいてくる時間を本当に短いものだ。気がつけば彼女は崖の前に立っていた 。
私は周りを見渡した。あぁ。なんて美しい場所だったんだろう。この場所が、王子との思い出がなくなってしまうなんて、私は絶対に耐えられない。母さんが話してくれたあの子と同じだな。
「さようなら」
最後に王子の顔が見れて嬉しかった。
え…王子?
「何してるの王子!!今すぐもどって!!」
なんと王子は、私が飛び降りたすぐ後に同じく飛び降りていたのだ。
「後悔すると思ったんだ!!ベル。僕はずっと君のことが… 好きでした」
私の目から涙があふれた。こんな時まで私のことを気にかけて、この地にとどまらないように、好き。ではなく、好きでした 。なんて…。
「私も王子のことが 、…ルーガのことがずっと、好きでした…」
最後に本当の気持ちが言えて嬉しい。
「ベル。もしまた会えたら、今度こそ君を絶対に守る」
「もう守ってるよ。ありがとう」
二人は最後にキスをした。だが、お互いもうきえかけていたので、口唇が触れたかどうかは、わからなかった。
さよなら。僕だけの姫。
さよなら。私だけの王子。
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