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kn.side
kr「何やってるの、」
そう言われたのは俺の自室だった。彼氏であるきりやんは、既に家族ぐるみの付き合いでよく俺の家に来てくれるのだけど
「なんで、今来るんだよ…..、」
よりによって何でこのタイミングなんだ。…きりやんにだけは、こんな所絶対に見られたくなかったのに
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大きなきっかけは覚えていない。ただ、昔から俺は責任感が強くて周りから頼られることが多かった。けどそれがいつからか俺の中で「強くあること」だとか「みんなよりも大人であること」に変わってきていたことに気付けなくて
『弱いところは見せちゃダメ』
『俺は頼られる存在だから』
俺はそんな言葉で無意識のうちに俺を隠していたのかもしれない。おかげで頼られることは前よりも増えたけど、それが自分には辛かったんだと気付いた時には遅かった。
気付いてしまえばあとはすぐの事。しんどくて泣こうとしても涙は出ないし、弱い所を見せられる相手なんて居ないから
「……なんだよ、それ…、」
言葉は出るけどそれだけで心が軽くなるわけもなく。俺はぐるぐる考えて、1つのアイデアに辿り着いた。
…..それは、自分の首を絞める行為で
喉仏の下部を押すと一瞬息が出来なくなったけど、嗚咽は出なかった。多分自分でも気付かないうちに力を緩めてしまったんだろう。
ならばと今度はさっきよりも強く押すと、喉に違和感を感じて呼吸が浅くなる。
(いける、かも…っ、)
そのまま更に力を加えようとした時に、きりやんが部屋に入ってきて今に至る訳だけど
kr「何やってるの、」
その声は何処か悲しそうに聞こえた。
「なんで、今来るんだよ…..、」
そう一言言うときりやんは、「俺の質問、答えてよ」なんて言うから、素直に首を絞めていた事を伝える。
kr「なんで?」
俺はその質問に言葉に詰まった。きりやんには知られたくなかったから。
「…….」
kr「答えられないこと?」
沈黙を破ったのはきりやんだった。
kr「俺、そんな頼りないかな…..」
違う、俺はきりやんにそんな顔させたいんじゃないのに。そう思うけど言葉には出なかった。
「………関係ない、じゃん…」
代わりに出てきたのは、よりにもよってきりやんを傷つけるだけの言葉。
kr「………..。…..そ、っか」
案の定これ以上ないくらいの悲しそうな顔に申し訳なさが募る。だけどこんなの、どうやって説明しろっていうのか。
再び沈黙が流れる。さっきよりも長い沈黙は不安を煽って思わず目を閉じる。ごめん、きりやん…。
そう思ったとき、突然身体が重くなって。次に来たのは温もりだった。それがきりやんによるハグだと気付いたのは、それから少しあと。
kr「…ね、しよ。きんとき、今1人にしたら壊れちゃう気がする。…….俺、そんなのやだよ」
腕に力を込められて少し苦しさを覚えたけど、それがきりやんの気持ちに比例してると気付いたときにはもう涙は止まらなくて。
「いいよ、…一緒にしたい」
涙に濡れた声で返事を返すと、きりやんは優しく頭を撫でてくれた。
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いつもよりも長く焦らされてるのは痛みを感じないように。いつも以上に気を使ってくれるきりやんに思わずときめいたけれど、さっきの今なのでこれは心の内に秘めておく。
ゆっくり時間をかけて解してくれるきりやんはどこか心ここに在らずな気がして、それでも部屋に入った瞬間好きな相手が首を絞めてたら…と考えると、多分俺も同じだと思ったからこれも黙っておく。
焦らされ続けて段々に物足りなくなってきて蕩けた声で名前を呼ぶと、もう挿れても大丈夫…?なんて言葉をくれた。
「…..だいじょ、ぶ…..だから、きりやん…..」
早く、なんて急かす言葉の代わりにキスを強請ると何度も角度を変えてキスをくれた。それも…多分キスしてるうちにゆっくり挿れてくれてて「ゆっくり動くから」なんて、どこまでも優しくしてくれた。
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目が覚めたのはいつもと同じアラームの音だった。のそのそと起き上がろうとすると、隣には大好きなその人。
(…….俺、愛されてる…な、)
なんて、どこか他人ごとみたいに思ったけど、この気持ちに偽りはない。
「…..きりやん、起きて」
「俺、…….まだちょっと怖いけど信じるから。昨日のこと、全部聞いて」
反応はない。部屋は綺麗だし、俺自身も身体に不調はないから多分きりやんが全てやってくれたんだと思う。改めて、きりやんを好きになってよかったと思った。
きりやんが起きたら、昨日の話をしようと思う。多分、俺が大好きなこの人は親身になって聞いてくれて、また一緒に過ごしてくれると思うから。