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34 ◇果てしなく遠い親戚
「えっとね、私の祖父の妹の旦那の弟の奥さんの弟の息子」
「ほんとに、それって遠い遠~い果てしなく遠い親戚だね~」
「果てしなく……って、まぁそうなるわね」
それにしても夫の言い方が言い得て妙なのと、何気にその間延びした言い方が
ツボにはまり、由香は思わず吹きだしそうになる。
「年齢は?」
「え~とね、19か20才じゃなかったかな」
「へぇ~、若いね。悟ももうじき、そのくらいの年になるんだよなぁ~」
「そうね、5年や6年なんてきっとあっという間じゃない?」
そして、人生とっくに折り返し地点を過ぎた私たちは、更に老いてゆくのだ。
あぁ、時よ、そんなに急ぎ足で過ぎないで……。
それにしても、美代志くんの年齢を鑑みて悟のことを引き合いに出すところなんて――――
自分が思ったこととリンクしていて、なんだかなぁ~。
わけもなく嫌な気分になる。
同じ空気吸うのも嫌なのだから、言わずもがなのこと――――だよね。
一方、それほど嫌われているとも知らぬ正義のほうは、呑気なものだった。
20才かぁ~、はて、自分が20才だった頃何してたっけ? 学生で大学通ってたよなぁ~。
「なぁ、その子大学はどこ?」
「就職して、働いてるわ」
「そっか……えらいな」
「高校は進学校に通ってたみたいで、頭のいい子よ」
「へぇ~、じゃあ勿体ないね」
「人それぞれだからね。
あぁ、私もちょっと出掛けてきます」
「いってらっしゃい」
ほんとは、出掛けるつもりはなかったんだけど、夫と話すのがめんどくさくなって、
つい『出掛けてきます』と口から出てしまった。
よしっ、私も美代志くん家へ行こう~っと。
私は自分のイライラに気づいていた。
一生懸命働いている美代志くんのことを……
大学に進学していない彼のことを……
何にも知らないくせに『へぇ~、じゃあ勿体ないね』なんて呑気に他人事のように
パッと口から放った夫に、私は腹を立てていた。
きっと、夫との関係が昔のように仲睦まじいものだったら、私はイラつかずちゃんと
美代志くんのことを丁寧に話しただろうと思う。
そして、彼のために私たち夫婦に何ができるかな? なんていう相談もしたかも
しれない。
だが、関係性の壊れてしまった相手に、何も話しをしたくはなかった。