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おれは魔法国レザンスの魔法ギルドで新たなスキルが覚醒した。しかし一部は条件付きらしく、ギルドマスターであるバヴァルから意外な提案があった。
「一時的に仲間入りを……?」
「老齢な魔法士と一緒に行くのは嫌かな? あんたはスキルこそ目覚めたが、それだけで属性の使い方を知ることは叶わない。それなら私が一緒について行くのが適しているだろう? 魔法を極めるまで教えるってことでどうかな?」
魔石のことを隠していても、すでに魔力開放で知られていたも同然だった。そのうえで魔石ガチャのことを話したら、まさかこんなことになるとは。
「提案としてはいいですが、何故おれに?」
「あんたからは不穏な気配を感じるんだよ。行く先々で何かしらの悪意が降りかかる……そんな予感がしてね」
「悪意? それはともかく、ギルドはどうするつもりです? 他の依頼もあるはずでは?」
おれを追放した勇者たちのことはバヴァルには話していない。しかし悪意の予感があるというのを聞かされると、一気に不安になる。
魔導書の変化から何かを感じたのか、あるいは予知スキルでも持っているのか。いずれにしてもおれが拒む理由は無い。
「ギルドのことならご覧の有様さ! あんたが来てくれなければ閉めようかと思っていたくらいにね。依頼はあんたにお願いするよ」
ここへは無理やり招待されたんだがやはり裏があったな。
それはいいとしても、同行するにあたって心配なことがある。ルティやフィーサはともかく、スキュラは人間嫌いそうなところがあるところだ。
「それじゃあ、街に仲間を待たせているので行きますか」
「その前に、ここで魔石ガチャを見せてもらえないかね?」
「ガチャを?」
「それ次第で――」
ギルドにはおれとバヴァル以外に人の気配は無く、入って来る者はいない。必要以上に警戒する必要も無さそうなので、おれは素直にガチャをすることにした。
魔石を手の平に置いて握り、ガチャを引く――いつもどおりの流れだ。
【Uレア 時戻しのローブ Lv.-52】【Uレア 魔獣変化スキル Lv.99】
【Lレア 軍団召喚の書 Lv.1】
今回は三つのアイテムが出た。ユニークレアで防具というのも珍しいが、レベル表記がマイナスなのは何なのだろうか。他は魔獣変化スキル、軍団召喚だ。書物レベルがたったの”1”しかないのは何とも謎だ。
「これはすごい! こんなにすごいスキルならば冒険者に狙われるのも無理は無いね」
「しかし、最初はこんなんじゃなかったですよ?」
「そうだとしたら、やはり覚醒の力が凄まじかったということでしょうな」
色々出たアイテムのうち、防具だけはバヴァルに渡した。スキルに関しては覚えておき、召喚の書は保留にしとく。
「では、今度こそ参りましょうかね」
「そうですね」
召喚のことはあまり要領を得なかったがそのうち分かるだろう。
「あ~~!! アックさん! 遅かったじゃないですか~! いったいどこで何をををを!?」
「フフッ、やはり隅に置けないお方でしたのね」
ギルドを出て二人だけを待たせていた場所に向かうと、彼女たちに物凄く驚かれた。ルティの反応は予想通りだが、スキュラの発言には含みのようなものが。
なるべくゆっくり歩いて来たつもりだったが、見慣れぬバヴァルに驚いたようだ。
そう思ってバヴァルの方を振り向くと、
「へっ!? ど、どちら様で?」
おれが驚く間に、
「そちらがアック様のお味方なのですね? わたくし、レザンス魔法ギルドマスター兼アック様付きの助言者、バヴァル・リブレイと申します。以後、よろしくお願いしますね!」
ルティたちに向かって深々とお辞儀をしていた。
何だこれ。一体どういうことなんだこれは?
見た目から何から変わりすぎじゃないか。
若返りにしてもおれよりはやや年上のお姉さんといったところだし、金色に光る短い髪はしっかり者に見えるし、はっきりと物事を言いそうな目つきになっているじゃないか。
時戻しのローブを身にまとっているが、まさかだろう?
白いローブには全体的に何か渦のような模様が刺繍されている。もしかしたらそれが何らかの状態異常を引き起こしたかもしれない。
「あわわわわ!? これはわたしも負けていられませんよ」
「全くですわね。見るからに強力な気配を感じますわ……」
「えーと……そういうことだから、みんなもよろしく頼む」
「アック様。わたくしのことは気軽にそうお呼びくださいませ」
「は、はい」
妙な味方が増えたが、勇者たちとの再会が近いことを暗示しているのだろうか。魔石ガチャのことも召喚ガチャのこともまだ分からないままだというのに。
こればかりは魔物を倒し続けて行くしか方法は無さそうだが。
レア確定ガチャで出たルティとフィーサの二人に加え、新たに味方となったスキュラとバヴァルたちが何をもたらしてくれるのか。不安よりも期待を高く持った方が良さそうだ。