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痣の出現
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刀鍛冶の里で上弦の肆、伍を討伐した炭治郎、禰豆子、玄弥、蜜璃、無一郎。
蝶屋敷で療養しているところに、柊依が見舞いに来た。
『…無一郎くん』
そっと呼び掛けると、まだ幼い霞柱は重たそうに瞼を開けた。
「ぁ…、ひよりさん……」
大好きな相手を瞳に捉え、熱に苦しめられていた無一郎がふにゃりと顔を綻ばせた。
『おかえり。よく頑張ったね。偉いよ』
「えへへ…」
『身体の具合はどう?』
「…ん…、まだちょっと痺れてるとこもあるけど大分マシだよ。早く熱が下がればいいんだけど……」
『そっか…』
柊依が無一郎の額に手をやる。まだ熱い。
そして優しく髪を撫でる。無一郎は嬉しそうに目を細め、柊依の手をきゅっと握った。
「ねえ、柊依さん」
『ん?』
「熱が下がって屋敷に帰れたら、いっぱいぎゅってしてくれる?」
『うん、もちろんよ。無一郎くんが満足いくまで抱き締めるわ』
「えへへ。約束だからね」
『うん、約束』
髪を撫でていた手をずらし、頬を撫でる。上弦の伍が放った毒針が刺さったという傷に薬が貼ってある。1箇所や2箇所ではないから痛々しい。
「兄さんは?」
『屋敷にいるよ。今日は2人でヒノカミ神楽のお稽古してたんだけど、疲労がすごいみたいだったから休んでなさいって言ったの。無一郎くんが上弦を倒して帰ってきたこと、とっても喜んでたわ。体調が戻ってたら明日2人で会いに来るね』
「そっか……。やっぱりヒノカミ神楽って鬼と戦う時に有利になるんだね。炭治郎もそうやって戦ってるし。柊依さんはヒノカミ神楽やって疲れないの?」
『まだしんどいところもあるけど、大分慣れてきたわ。だんだんね、身体の動きが滑らかになっていってるのを感じるの。軽くなってると言うか…、“もっと舞える”って思う時もあるのよね』
「すごい…!僕にも見せてね」
『うん。有一郎くんとまたお稽古しとくね』
顔を見合わせて笑う。
病人をこれ以上疲れさせてしまってはいけないので、柊依は再び無一郎の頭をそっと撫でて蝶屋敷を後にした。
数日後、恋柱と霞柱は蝶屋敷を退所した。
無一郎は速足で花柱邸に帰宅。ちょうど玄関先の掃除をしていた双子の兄と強く抱き締め合った。
その後、姉のように慕う相手の腕の中に飛び込んでいき、気が済むまで柊依の匂いに包まれていた無一郎だった。
更に数日後の柱合会議。鬼殺隊当主の具合が思わしくない為、この日はその妻と息子、娘が柱たちの前に現れた。
刀鍛冶の里での戦闘で、“痣”を出現させた蜜璃と無一郎。痣が出た時のことをたずねられ、詳しく説明した。
あまねの話によると、戦国の時代から存在した“始まりの呼吸の剣士”たち。彼らは今の蜜璃や無一郎のように痣を出現させていたという。そして、痣を出すことにより格段に強さが増し、技の攻撃力も上がっていたのだそう。
ただ、それは寿命の前借りにしか過ぎず、痣を出現させた者は誰もが例外なく25歳までしか生きられなかったそうだ。
あまねの話を聞き、8人の柱が顔を曇らせた。
会議もお開きとなり、無一郎と柊依は一緒に帰路に着く。
『……無一郎くん』
「はい」
声を掛けた人物のほうに目を向ける無一郎。すると顔を曇らせた柊依と目が合った。
『…25歳までしか生きられないって聞いて、どうも思った?』
「んー、正直あんまり実感ないんだ。悲しいとか、ショックとは思わなかったよ。僕は鬼殺隊員だし柱だからさ。いつ死ぬか分からない立場なのは前から変わらないし。25になる前に死んじゃうかもしれないし 」
『そっか……』
顔を曇らせたまま、更に眉をハの字に下げる柊依。
『…私はね、無一郎くんにも有一郎くんにも元気で長生きしてほしい。しわくちゃのお爺ちゃんになるまでね。……なのにもし鬼をやっつけて平和な世界が訪れたとしても、無一郎くんはもう25歳までって寿命を決められちゃってて…、それがすごく切なくて…… 』
「柊依さん…」
いつも笑顔の柊依が悲しそうな顔をしているのを見て、無一郎も胸がぎゅっと締め付けられる。
「僕は大丈夫だよ!いつ無惨を倒せるか、倒した後も自分がどのくらい生きてられるかとか、そんなの分かんないけどさ、僕は鬼殺隊に入ったことを後悔したことなんて一度もないし、柊依さんと家族になれて嬉しいよ!…痣の寿命のこと話したら兄さんは悲しむかもしれないけど、それでも僕は今兄さんと柊依さんといられてすごく幸せだよ!」
どうにか柊依に笑ってほしくて、無一郎は隣を歩く彼女の手を両手でぎゅっと握って力を込めながら訴える。
『無一郎くん…』
柊依が笑った。眉は相変わらず下がったままだが、ほんの少し青ざめていた頬に赤みが戻った。
「僕も兄さんも柊依さんのことが大好き。だからさ、一緒にいられる時はいっぱいお喋りしよう。一緒にごはん食べたいし、非番の日は色んなとこに出掛けたい。柊依さんにいっぱい抱き締めてほしい。…っ…、今一緒にいられる時にたくさん思い出を作りたいんだ… 」
最後のほうは涙を滲ませながらなんとか言葉を紡いだ無一郎。そんな彼を、柊依がそっと引き寄せて抱き締めた。
『…そうよね。私も無一郎くんたちのことが大好きよ。だからこれからもいっぱい思い出を作ろう。無惨を倒して、あなたが命を終えるその瞬間まで、あなたに幸せだったって思ってもらえるように…』
「…うんっ…!」
無一郎も柊依の身体に腕を回してぎゅっと力を込めた。
そっと身体を離し、2人は手を繋いで花柱邸へと帰っていった。
続く
こと🎀🌌
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雫玖
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コメント
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第19話、読み終わりました。痣の代償を知りながら「今を一緒に生きる」と決める無一郎くんの台詞が胸に沁みました。柊依さんが「しわくちゃのお爺ちゃんになるまで」と願う優しさも切なくて。原作設定をしっかり軸にして、その上でこの家族の絆を丁寧に描いているのがとても好きです。続きも気になります!