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本に夢中になって真夜中に起きていた時、玄関からするはずもない物音が聞こえたから見に行ってみたのだ。そこには、血まみれの両親がいた。
もちろん驚いた。声を出してもよかったのだが、頭をフル回転させて黙っておくことにした。それで殺されでもしたら大変だったからだ。
それからと言うもの、先週、両親が夜中にこの計画を練っているところを目撃してしまった。
「やっぱりこの森に行くには少し人気が多すぎる」
「ターゲットは麻薬の密輸をしているらしい。私たちの事を警戒してわざわざそこを選んだのかもしれないわね」
「どうする?取引が行われる時間は昼間、2人で行くのは流石に不審すぎるだろう」
珍しくまともな会話をしていて私はびっくりしたのも束の間。
「近くにキャンプ場あるし、相羅たち連れて遊ばせてる間に任務終わらせればいいんじゃない?」
はい、バカでした。
「確かにそうだな!君は天才だ!」
いや、バカだろ。アホだろ。誰がどうみても。
というか、娘1人の気配も察知できない両親は本当に殺し屋なのだろうか。
そんな変な疑問ばかり頭をよぎったが、この前の血まみれの両親を思い出すとやっぱりちゃんと殺し屋なんだと思い返す。
バカでアホだが、両親にはなるべく怪我をしてほしくない。まだまだ若いし、この先もずっと生きていてほしい。娘ながらにそう思ってしまう。
「よし!準備万端!」
奏茉の声で我に返る。
仕事ならしょうがない。無事を願ってその作戦に協力してやろう。
「すなまい、仕事の電話が来てしまった。ちょっと待っていてくれないか?」
信じ込みやすい言い訳を使うので今回はしっかり準備してきたんだなと感心する。でも、少し抜け目があった。
「おじさんの電話になんでおばさんも行くの?」
奏茉の純粋な疑問。でも野生の勘並みに鋭い疑問。
お母さんは少しぎくっとした後、変な事を言い出した。
「おばさんもおじさんの仕事に関連してるのよ」
いや、あんたの仕事はパートって設定だろうが。
初っ端からぐだぐだすぎて私はため息をつく。空茉も奏茉も子供が故に鋭いのだ。
「奏茉、空茉、魚の掴み取りがあるって。2人は忙しそうだし、一緒に行こ」
「魚の掴み取り⁉︎」
「じゃあ…行こうか」
2人がそっちに気が向いたのを確認して、私は母親の方を向く。
「て事だから、私たち魚掴み取りの方にいる。あ、ジュース代貰っとく」
母親は私のことをマセガキだとも思わず、助かったとでも言うような顔をしてジュース代を私に預ける。
この人本当に心配だ。お金を5歳児に預けるかね、普通。
「相羅、2人をよろしくね」
このあと、あんな悲劇が起こるなんて予想もしなかった