テラーノベル
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休日。
ゆきは部屋のベッドの上でごろごろしていた。
天井を見る。
寝返りを打つ。
また天井を見る。
平和だった。
その時。
バァン!!
「ゆき!今暇ー!?」
扉が勢いよく開いた。
「うわっ!?」
ゆきは飛び起きた。
心臓が跳ねる。
「びっくりしたぁ……。」
「お。」
顔を出した臨時が笑う。
「起きてた。」
「起きてたよ!」
「ならよかった。」
「よくない!」
ゆきは胸を押さえた。
「心臓に悪いからやめてよねぇ……。」
「ごめんごめん。」
全然反省していない。
「で、暇?」
「暇だけど。」
「じゃあ行こう!」
「どこに?」
「買い物!」
「なんで?」
「行きたいから!」
「理由になってない。」
「なる!」
「ならない。」
そこへ。
「何やってんだよ。」
一樹が顔を出した。
「ねぇ、あっくん~。」
「臨時がうるさいんだけど。」
「いつものことじゃん。」
「助けてよ。」
「諦めて。」
「諦めるの?」
「…諦めよう。」
即答だった。
◇◇◇
数十分後。
「なんで来ちゃったんだろう……。」
ゆきが呟く。
「楽しいから良くね?」
臨時が元気よく言う。
「まだ何もしてない。」
「これからだよ!」
◇◇◇
最初に入ったのはゲームセンターだった。
「勝負しようぜ!」
「急だな。」
一樹が言う。
「負けねぇから!」
「別に勝負するとは言ってないんだけど。」
「するんだよ!」
◇◇◇
数分後。
「なんで!?」
臨時が叫ぶ。
「弱いからなんじゃない?」
ゆきが言う。
「うるせぇ!」
「事実じゃん。」
「一樹ぃ!」
「事実。」
「味方いねぇし!」
◇◇◇
クレーンゲーム。
「取れたぁ。」
ゆきがぬいぐるみを持ち上げる。
「…いいじゃん。」
一樹が言う。
「上手いじゃん。」
「なんか取れるんだよね。」
「…その才能ほしい。」
臨時が真顔だった。
◇◇◇
次は本屋。
「懐かしいなぁ。」
臨時が漫画コーナーを見る。
「昔よく来たよね。」
ゆきも本棚を見る。
「あぁ。」
一樹が頷く。
小学生の頃。
三人で本屋に来て。
気になった漫画を読み合って。
店員に怒られた。
そんな日もあった。
「今思うと迷惑だったな。」
「かなり。」
「かなり。」
ゆきと一樹が同時に言った。
◇◇◇
昼。
フードコート。
「いただきます!」
臨時の前にはハンバーガーとポテト。
「子供か。」
一樹が言う。
「うまいからいいんだよ!」
一樹の前にはアジフライ定食。
「なんでフードコートにあるんだろうね。」
「知らん。」
ゆきの前にはラーメン。
「お前も相変わらずだな。」
臨時が言う。
「何が。」
「ラーメン。」
「好きだから。」
「唐揚げじゃなくてよかった。」
「臨時。」
「はい。」
「その話やめようか。」
「からあげ女王。」
「やめて。」
「からあげ女王。」
「やめて。」
「からあげ女王。」
「あっくん。」
「…なんで俺?」
◇◇◇
昼食後。
雑貨屋に入った。
「あ。」
臨時がコップを手に取る。
「これ良くね?」
シンプルなガラスのコップだった。
「普通だね。」
「それがいいんだよ。」
「ゆきは?」
「いいと思う。」
「一樹。」
「いいじゃん。」
「よし!」
臨時が満足そうに笑う。
「お揃いな!」
◇◇◇
結局。
三人で同じコップを買った。
色だけ違う。
臨時は黄色。
一樹は緑。
ゆきは黒。
「なんかいいな。」
臨時が笑う。
「お揃い。」
「小学生か。」
一樹が言う。
「いいじゃん別に。」
「まぁ。」
ゆきも少し笑った。
「悪くないかな。」
◇◇◇
帰る前。
再びゲームセンターへ。
「最後にこれやろうぜ!」
臨時が指差した。
マリオカート。
「あー。」
ゆきが笑う。
「懐かしい。」
「昔めっちゃやったな。」
臨時も笑う。
三人は席に座った。
ゲームスタート。
◇◇◇
「うおおおお!!」
臨時が叫ぶ。
「うるさい。」
「赤こうら来た!」
「知らない。」
「助けて!」
「無理。」
「うわああああ!!」
最下位だった。
◇◇◇
ゆきは笑った。
昔と同じだ。
臨時は昔から騒がしくて。
一樹は昔から冷静だった。
その時だった。
「……。」
一樹が画面を見たまま止まる。
「あっくん?」
ゆきが呼ぶ。
「どうした。」
臨時も見る。
一樹は少しだけ笑った。
珍しかった。
「いや。」
「…昔を思い出してさ。」
「昔?」
「あぁ。」
一樹は画面を見る。
「小学生の頃さ。」
「放課後にさ。」
「毎日集まってずっとゲームしたじゃん。」
「あー。」
ゆきも思い出す。
夕方まで遊んで。
暗くなるまで帰らない。
そんな日々。
「懐かしいな。」
臨時が笑う。
「また三人で遊べるとは思わなかったよな。」
一瞬だけ静かになる。
でも。
嫌な沈黙じゃなかった。
「また来ればいいじゃん。」
ゆきが言う。
二人が見る。
「どうせ暇なんでしょ。」
「失礼だな!」
「否定しろ。」
一樹が言う。
「……。」
「…そこは否定してよ。」
「しません。」
◇◇◇
夕焼け。
三人で並んで歩く。
手にはお揃いのコップ。
昔と変わったこともある。
変わらないこともある。
けれど。
今こうして笑っている時間は。
きっと。
昔と同じくらい大切だった。
「また行こうな!」
臨時が言う。
「うん。」
「まぁいいよ。」
三人の声が重なった。
夕日が。
ゆっくりと街を染めていた。
コメント
3件
気分いいので連続投稿です♪
うわあ、なんだろうこのあったかい感じ…。読んでて自然と頬が緩んじゃいました。ゲーセンでクレーンゲーム取ったゆきに「その才能ほしい」って真顔で言う臨時、めっちゃ好きです(笑)。あと「からあげ女王」呼ばわりされるゆきと、なぜか巻き込まれる一樹の掛け合いも絶妙で、三人の距離感が全部のセリフからにじみ出てるなって思いました。お揃いのコップ、いいですね。日常の一コマなのに、すごく大切な時間って伝わってきました。