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#異世界転移
花月夜れん
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ユキ
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第五十三話 冬に届いた手紙
「手紙は、時間をかけて届く。だからこそ、その一文字一文字が温かい。」
十二月中旬。
朝の空気は冷たく、吐く息は白く染まっていた。
教室の窓から見える山も、
どこか冬らしい景色へと変わっている。
「もうすぐ冬休みだね。」
美桜がそう言うと、蓮は笑いながら答えた。
「その前に期末テストだけどな。」
「それ言わないで……。」
教室には笑い声が広がった。
そんな何気ない毎日も、
湊にとっては大切な時間だった。
*
放課後、家へ帰ると母が声をかけた。
「湊、郵便届いてるよ。」
テーブルの上には、一通の封筒。
見慣れた海外の切手。
差出人の名前を見た瞬間、自然と笑みがこぼれる。
朝比奈 紬
「また手紙だ。」
湊は急いで自分の部屋へ向かった。
*
封筒の中には、一枚の写真が入っていた。
雪が積もった街。
広場の大きなクリスマスツリー。
その前では、
小さな兄妹が手をつないで笑っている。
写真の裏には、丁寧な字で書かれていた。
『今年一番好きな景色。神崎くんにも見せたかった。』
湊は写真を机の上にそっと置く。
もう一枚、小さく折りたたまれた便箋を開いた。
*
『神崎くんへ。』
『もうすぐクリスマスだね。』
『最近ね、ふと思うことがあるの。』
『日本にいた頃は当たり前だった景色が、今は全部特別に思えるんだ。』
『通学路も、学校も、写真部のみんなも。』
『もちろん、神崎くんも。』
湊は静かに読み進める。
『離れてみて初めて、大切なものって気づくんだね。』
『だから今は、一日一日を大事に過ごそうって思ってる。』
最後の一文だけ、少し文字が小さくなっていた。
『また同じ景色を、一緒に見られる日を楽しみにしています。』
湊はその一文を何度も読み返した。
*
夜。
窓の外では、小さな雪が舞い始めていた。
今年初めて見る雪だった。
湊はカメラを持って庭へ出る。
街灯に照らされた雪が、ゆっくりと舞い落ちる。
カシャッ。
一枚撮る。
そして、その写真を紬へ送った。
《こっちも初雪。》
《君の写真を見たあとだから、少しだけ特別に見えた。》
数分後。
返信が届く。
《同じ日に初雪なんて、なんだか嬉しいね。》
《クリスマスまで、あと少し。》
《約束、忘れてないよ😊》
湊は笑顔で画面を閉じる。
もちろん、忘れるはずがない。
今年のクリスマスは、
二人にとって特別な一日になる。
そんな予感がしていた。
📷 Photo.053『冬が運んできた想い』
撮影日:12月14日
雪は静かに降り積もる。
想いもきっと同じ。
気づかないうちに積み重なって、
いつか、大切な景色になる。
コメント
1件
第53話「冬に届いた手紙」、とてもいい雰囲気でした。紬が送ってくれた写真と手紙の一文一文が、湊の日常にそっと差し込む温かさで、距離があっても繋がっている感じが伝わってきました。同じ初雪を撮り合うやりとり、自然と笑顔になれるシーンです。「想いもきっと同じ。気づかないうちに積み重なって、いつか、大切な景色になる」という一文が特に心に残りました。クリスマスの約束、楽しみです。