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魔剣に目覚めたらしい剣を眺めても、やはり見た感じ錆びたまま変わっていない。しかし男たちが投げ捨てていったレア武器がどこにも見当たらないところを見ると、魔剣が全て喰ったとみるべきだろうか。
「何なんだろうな、こいつは……」
シーニャも首を傾けているし、こればかりは使ってみないと何とも言えなさそう。逃げた男たちの後を追って遺跡に行くことになるが、ミルシェの方はどうなっただろうか。
「アックさま。それはソードイーターという剣みたいですわ」
ミルシェを気にしていたらこっちに戻ってきたうえ、魔剣について何かしら知っているようだ。
「ソードイーター? ソウルイーターじゃなくて?」
「ええ。その剣はアックさまの魔石から出たもの。だったら、人の魂よりも物欲の方がお強いのではないかと」
「冗談を言ってる場合じゃ無いんだが……」
「あら、結構本気ですけれど?」
魔石ガチャでアイテム狙いをしているだけに反論のしようが無い。しかしそれだけでは説明不足だ。
「いや、ミルシェさんの言うとおりだよ。その魔剣はそういう特性がある」
「デミリスか! 無事で何よりだな」
「ミルシェさんのおかげでね。アクセリナのことも聞いた。感謝する」
話すタイミングを待っていたかのように、デミリスもミルシェの意見に賛成らしい。剣士デミリスもランクで言えばSランクなわけだが、町の人のことを考えて戦わなかったとみえる。
「魔剣のことはひとまずいいとして、兄のジオラスはどうしたんだ?」
「兄きは見ての通り、ここにはいない。奴らが大挙して押しかけて来た時に遺跡の道案内を買って出たんだ。そのおかげで怪我人も出なかったけど……」
やはりそういうことか。盗賊の頭だし、町の人間に余計な心配をかけさせたくなかったのだろう。
「この先に進めば海底遺跡に行けるんだな?」
アクセリナが言っていた遺物狙いでザームの連中が来たのは確定のようだ。
「海底じゃなくて、文明遺跡群かな。オレもよく知らないんだけど、海底遺跡はラクルの方にあったはず……アックさんはラクルの人じゃなかったっけ?」
「あー……」
「デミリスさん。残念ながらあの辺りにあった海底遺跡は全て沈んでしまいましたわ。――ねぇ、アックさま?」
「そ、そうだったな。ははは……」
沈めたと言った方が正しいだろうか。もっともあそこにあった海底神殿にはさほど目ぼしいものは無かったわけだが。ミルシェ――当時はスキュラだったが、彼女に会えたくらい。
「そうなんですね。レイウルムの地下から見つけられた遺跡は、レイ・ザヴィ文明遺跡群と呼ばれる場所なんですよ」
「それって、古代の?」
「多分そうだと。ここだけでなく、他の国にもつながっているらしいです」
レイウルムから入れるだけじゃなく他の国にも行けるとは驚きだ。砂地が広がっている半島だから何かありそうだなとは思っていたが、やはりあったわけか。
「連中が狙っているのは遺物って聞いたけど、ジオラスがその場所の案内をしているってことか?」
「いや、途中までだと思いますよ。兄きと盗賊の仲間たちで何度か入っていましたが、罠が多いとかで放置してたとか」
「……なるほど。罠が多いダンジョンってやつだな。遺物のことは知らないのか?」
「うーん……連中は鑑定士を連れて来ているようなので、恐らくそれ狙いなのかなと」
鑑定士を連れて来るということは、やはりザームを率いている薬師の女が狙っているアイテムか。そして遺跡に行く時点で高度な魔法が使える者も連れて来ているはず。
その意味でもシーニャがいてくれて良かったというべきだろう。
「ウニャ?」
「もう少し待っててくれ、シーニャ」
「分かったのだ」
物理攻撃と魔法攻撃が来ても無効に出来るとはいえ、おればかりを狙って来るとは限らない。それが罠のあるダンジョンならなおさらのことだ。
「あ! 盗み聞きなんですけど、遺物の中には宝石の腕輪とか指輪があるみたいですよ!」
「宝石の? ――ってことは、装備品か。それは興味深――」
「興味深いですわ!! アックさま、早く行きましょう!」
おれよりもミルシェの方が食いついた話だった。宝石が好きだから無理も無いか。
「そ、そうだな。ええと、それじゃあここの連中のことはデミリスに任せても?」
「ほとんどの連中は弱っているので、地上にでも置いてきますよ! アックさんたちも気をつけてください。それと――」
「ああ、分かった。ジオラスを見つけたら帰しておく」
罠が多いダンジョンから他国につながっているとは、何とも意外すぎる。
遺物を奴らから奪取するのはもちろんだが、レイ・ザヴィ文明遺跡群がどんな場所なのか行くしか無さそうだ。