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旅の出発まで、あと三日。

昨日は、このままのペースなら多分、間に合うだろう、と考えていた俺だが、どうもそう上手くはいかないらしい。

なぜって? それは、俺が『ツキネ』(変身型スライム)と長時間(?)話していたせいでミノリたちの機嫌を損ねてしまったからだ。

あと三日以内に最後の一人を見つけて仲間にしなければならないのだが、俺のミスのせいでそれを達成できるかどうか、危うくなった。


「なあ、そろそろ機嫌を直してくれよ」


俺は朝食を食べながらミノリたちの機嫌を直そうとしていた。

しかし三人はお互いの肩を寄せ合い要塞の如く、その場から動こうとしない。どうやら、俺がなんとかしないといけないらしい。

サナエに相談しようかな……いやダメだ。こんな状態で俺がまた『ダークネスパラダイス』に行ったら今度は全ての記憶が曖昧になるかもしれない。

それに今回は俺が蒔いた種だ。俺がなんとかしないでどうする! しっかりしろ! 俺!


「なあ、どうしたらお前たちは機嫌を直してくれるんだ? 言ってくれなきゃ分からないし、いつまでもそんなだと仲間が期日までに集まらないぞー」


三人の方を向いて少し怒り気味にそう言うと、ミノリたちは……。


「なによ! あんたはツキネと一緒にいればいいじゃない!」


「そ、そうです! 私たちを放置しておいて、今さらなんのつもりですか!」


「ナオ兄、今回ばかりは心の広い私でも許すことはできないから、もう放っておいて」


三人とも俺を困らせてきたが、本当は構ってほしくてたまらないということが分かった。

しかし、一体どうすれば三人とも、いつも通りに戻ってくれるのだろうか……。

そんなことを俺が考えているとツキネ(変身型スライム)がジェスチャーで俺に何かを伝えようとしていた。

いつの間に食べ終わったんだ、あいつ。まあ、いいか。さて、ツキネは俺にどんなアドバイスをしてくれるのかな。

俺は三人の後ろにいるツキネを観察した。

その結果、俺が今やるべきことが分かった。俺はツキネにジェスチャーで、ありがとう、と伝えた。ツキネは健闘を祈る、と返した。

さて、アドバイスをもらったことだし、そろそろ三人の機嫌を直すか。


「なあ、とりあえず俺の話を聞いてくれないか?」


俺は三人の目をしっかりと見ながら、そう言った。三人はまだ、ご機嫌ななめのようだが話は聞いてくれるようなので、俺は話を続けた。


「俺が悪かった。本当にすまないことをしてしまったと思う。だから、俺にできる範囲でなら何でもするから、いつも通りに戻ってくれ! この通りだ!!」


そう言いながら俺は人生で初めて『本当の土下座』をした。(本当の土下座は頭を地面から数センチ浮かせるものらしい)

三人は少しの間、相談していた。それぞれ俺に何をしてもらうか決めると三人は一人ずつ俺に頼み始めた。(まずはミノリ[吸血鬼])


「じ、じゃあ、あたしからいくわよ……。ナオト! あ、あたしの頭を、ナデナデしなさい!」


「…………」


「な、なによ! 何でもするって言ったわよね! さっさとしなさいよ!」


「えーっと、そんなことでいいのか?」


「う、うるさい! いいから早くあたしの頭をナデナデしなさい!」


「あ、ああ、分かった……けど、その前にマナミとシオリの分を聞くから、少し待っててくれ」


「わ、分かったわ……少しだけだからね!」


「ああ、分かったよ。約束する」


「絶対守ってよね! もし破ったら、絶交するからね!」


ミノリは少し残念そうだったが、少しの間、我慢してもらうことにした。

俺がマナミ(茶髪ショートの獣人)とシオリ(白髪ロングの獣人)の方を向くと、二人は、なぜか頬を赤く染めていた。

少し不思議に思ったが、今は二人が俺に何をしてほしいのかを訊くべきだと思った。


「それで? 二人は俺に何をしてほしいんだ?」


俺がそう言うと、二人の顔はさらに赤くなった。

俺にはその反応が何を意味するのか、さっぱり分からなかったが、二人が話してくれるのを待つことにした。

すると、途切れ途切れだが、マナミ(茶髪ショートの獣人)が。


「じ、じゃあ、私を、だ、抱きしめてください! え、えーっと、やっぱり、ダメ……ですか?」


勇気を出して、俺に思いを伝えてくれた。


「分かった! お前の望みは必ず俺が叶えてやる! だから、安心しろ!!」


「は、はい、よろしくお願いします……」


こうしてマナミの願いは俺が責任を持って叶えることになった。

これであとは、シオリだけだな。

俺はマナミの後ろに隠れているシオリ(白髪ロングの獣人)を見ながら。


「シオリ、お前は俺に何をしてほしいんだ?」


そう訊くと少し頬を赤く染めながらも俺に思いを伝えるために、俺の目の前にやってきた。


「ナ、ナオ兄」


「なんだ? シオリ」


「わ、私ね、ナオ兄に」


「俺に、なんだ?」


「ナオ兄にね、肩車してほしいの」


シオリは俺に思いを伝えてくれた。シオリがこんな事を言うとは思わなかったが、本人が一番それを望んでいるのなら、俺はそれを叶えるだけだと思い。


「よし、分かった! 俺に任せろ!」


他のやつでも分かるぐらいの自信に満ち溢れた口調で俺の答えをシオリに伝えた。

その直後、ミノリ、マナミ、シオリによる俺の取り合いが始まった。


「あたしが、一番に言ったんだから最初はあたしに譲りなさいよー!」


「い、いいえ! ここは譲れません!!」


「何言ってるの! 私が一番だよ!」


どうやら俺はこれが終わるまで逃げられないようだ。

誰かに助けを求めたいのは山々だが、下手に動けば事態が悪化する恐れがあるため、俺は三人の言い争いが終わるまで待機することにした。

だが、殴り合いに発展しそうになったので止めることにした。


「はい、ストップ! 三人ともその辺にしておけ。このままだと俺はお前たちの願いを聞かなかったことにするぞー?」


俺がそう言うと、三人とも、おとなしくなってくれたので、ほっと胸を撫で下ろした。その後、俺は一つ提案をした。


「じゃあ、一度に全部やるっていうのはどうだ?」


「一度に」


「ぜ、全部」


「やる?」


「ああ、そうだ。俺の右手でミノリの頭を撫でて、俺の左腕でマナミを抱きしめて、俺の肩にシオリを乗せる。どうだ? これなら全員の願いをまとめて叶えられるぞ?」


「そうね、それなら問題ないわ」


「わ、私もそれで大丈夫です」


「ナオ兄の考えに賛成」


「よし、三人とも異論なしだな。じゃあ、みんな! 俺に飛び込んでこい!」


俺がそう言うと、三人は一斉に俺の方にやってきた。ついでにツキネも……。

俺は四人が満足するまで、彼女らが望むことをし続けた。

まあ、四人ともいつの間にかスヤスヤと気持ち良さそうに眠っていたのだが……。

結局、その日は仲間集めどころではなかった……。

無事に仲間が全員そろうのか心配だが……まあ、なんとかなるだろう。

なぜって? それはこいつらの寝顔を見ているとそう思えてくるから、かな?

それくらいこいつらの寝顔が……なんというか、そう思わせるような……あー! うまく言えない! うまく言えないが、本当にそう思えてくるのだから、こいつらの寝顔には不思議な力を感じる。

こんな言い方だと、こいつらよりこいつらの寝顔の方がすごいように聞こえるが、もちろんそうではない。だから、勘違いしないでもらいたい。

でないと、俺が女の子の寝顔を見るのが好きなやつだと思われてしまうからだ……。

ダンボール箱の中に入っていた〇〇とその同類たちと共に異世界を旅することになった件 〜ダン件〜

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