バケトンネルで大輝達と別れた真一と紗栄子は町で唯一のラブホの駐車場にセルシオを停めた。
エンジンがアイドリングを続ける。
「そう言う意味じゃないけど、仕方ないからここでちょっと休もう」
「そう言う意味って?」
俺は紗栄子の質問を無視してエンジンをきり車外にでて自動扉をくぐり中にはいった。紗栄子も慌てながら真一の後をおう。
真一は慣れた手つきで部屋を選び先に進んだ。「真ちゃん休むだけだよね?」
「あぁ休むだけだから心配すんな」
部屋に入ると紗栄子はソファーに座り真一はベットに倒れ込んだ。
夜通し、死体の問題を抱えながらいた2人にとって緊張の糸が途切れたのか、各々眠りに堕ちていった。
「真ちゃんお昼ご飯かってきたよ」
「もう昼か?」
夜明けにホテルにはいってから数時間が流れ昼になっていた。
紗栄子はテーブルに買い出ししたものを並べて食事を始めた。
俺はシャワーを浴びに浴室へ向かう。浴槽にお湯が溜まっていた、紗栄子も風呂に入ったのか。
俺は浴槽に体を沈ませ、体勢をずらして頭まで沈めた。
無音の世界、過去の人生も死体も忘れて、このまま底まで沈みたい気分だ。
浴室をでて鏡を見つめる、すこしやつれた顔。体を逸らしベットルームにいる紗栄子をみる。食事も終わり、テレビを見ていた。紗栄子が俺の視線に気付き俺を見て咄嗟にまたテレビに視線を戻す。
あぁ上半身とはいえ男の裸をみて恥ずかしくなったのか。。
俺はベットに腰を下ろしタオルでガムシャラに髪を拭く。
「本日未明、一台の乗用車が〇〇岬から転落した事故がありました。乗用車の中からは男女が見つかっており身元の確認を急いでいるところです。」
俺と紗栄子はテレビのニュースをみて引き上げられていた車を見て呆然と立ち尽くす。
「真ちゃんこの車、大輝くんのじゃない、、、」
「あぁ、大輝の車にそっくりだ」
俺はスマホを取り出し大輝に連絡をするが電源が入ってないという応答しかしない。
「事故だよね?だって心中とかありえないし」
「わかんねぇけど事件の可能性もある」
すると紗栄子のスマホが心臓を破るような音で鳴る。
「ママから電話だ。。」紗栄子はゆっくりと受話ボタンを押す
「紗栄子どこにいるの?電話もしたしメールもしたのに折り返しもない」
「ごめんなさい。。。」
「昨日、警察がきて真一くんの事を聞かれたのよ、部屋のチャイムを鳴らしても家にいないし」
「ママちょっと忙しいから電話切るね」
紗栄子は終話ボタンを押した。
「真ちゃん昨日警察がうちに来て真ちゃんのこと聞いて来たって」
俺は一気に血の気が引き思考が停止した。思い当たる節は凛のことしかない。凛の死体は祠の中だし、警察が動くには早すぎる。なんだなんの件だ。
とにかく長居は危険だ移動した方がいい。「紗栄子移動するぞ」
俺と紗栄子は急いで部屋を後にして駐車場に向かう。
駐車場は怪しい動きはない、警察、大輝たちの死、凛の死、もう頭の中がぐちゃぐちゃだ。
紗栄子が何かに気付いたのかこう言った。
「真ちゃんトランクが半開きだよ」紗栄子が言うように確かに半開きだ。
俺はトランクの中を締めようとするとリアバンパーあたりが赤いシミがある。手で拭うと乾き切っていないようなシミだ。よく見ると赤い鮮血のように見える。
嫌な予感がし俺はゆっくりとトランクを開ける。「真ちゃん?」呆然と立ち尽くす俺の元に駆け寄る。紗栄子はトランクの中を見て手の平で口を覆う。
「なんで真希さんがセルシオのトランクにいんだ」
トランクにはぐったりとした、真希が横たわっていた。
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