注意喚起は1話にあり!
スタート!
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「わぁぁ〜…!」
葛葉さんが連れてきてくれた席は窓際で
とても綺麗な街並みを眺める事が出来た
2階からだから、とくに物珍しい景色が見れる訳でも無い。
だけどこの街が大好きな私にとっては、
ものすごく素晴らしい景色に見えた。
「…綺麗ですね」
景色に見蕩れていると、隣から葛葉さんが声をかけてくれる。
葛葉さんの方を見ると、彼も窓の外の景色を眺めながら、優しく微笑んでいた
「…はい、とっても!」
暫く外の景色に見とれていたが、ふと我に返る
既に葛葉さんは席に着いていた。
「あ、すみませんっ…!」
慌てて席に座り、崩れた髪型を慌てて治す。
変に思われてないかな…と心のざわつきを治めながら葛葉さんに謝る。
「あぁ、別に…いや全然いいっすよ、元々とおこさんに喜んで貰う為にここに来たんですし」
「あ、ありがとうございます…」
“喜んでもらいたい”
この言葉に敏感になってしまうのは私の心が弱いからなのだろうか。
ドクンと震える心臓の音が、体に響く。
「ッスー…とおこさん、 カレー… どれにします?」
「え、ぁ、葛葉さん先選んでいいですよ!」
「いや俺先に選んでたんで、大丈夫ッス」
「ぁ、ありがとうございます…」
葛葉さんからメニューを受け取り、目を通す。
だが頭が上手く回らず、メニューを選べない。
「…」
落ち着かなきゃ…
こんな事で慌ててる所なんて見られたくない…
「それじゃあ、これとこれで!」
「オッケー…ッス、」
「えっとこれどうやって注文…」
【注文が決まり次第、お呼びください】
「「……」」
「わぁぁ〜…!すっごくいい匂い…!」
「え、ガチで美味そう…」
私が頼んだのはビーフカレーとカフェラテ。
葛葉さんが頼んだのはシーフードカレーといちごミルクだ。
申し訳無いが、意外と可愛らしい飲み物を頼むんだな〜と思ってしまった。
「いただきまーす…!」
「いただきます…」
カレーを1口頬張る。
少しツンとしてて辛いけど、これはこれで美味しい…。
それに家や市販の物より断然美味しい…。
「「うんまぁ〜…!」」
顔が熱い。
まさかこんな所でハモるとは思ってなかった
「…ッく、笑」
「ちょ、ちょっと…何笑ってるんですか…!」
「いやッ…すーッ……さぁせん…笑」
2人でこんな会話をしている内に、口の中の辛さは消えていた。
口の中には、どこかふんわりと優しい味だけが
残っていた
「ん〜…!美味しかったぁ…」
「いやマジで美味かったっすね…」
意外に…と言っては失礼かもしれないが、会話は盛り上がった。
最近の仕事の話、ゲームの話、話した事は多くはなかったし、親しい友人と話している時ほど盛り上がった訳ではない。
だけど…
「ふふっ…」
楽しかったな…
「とおこさん…?」
「あっ…いや、なんでもないです!」
「今日はありがとうございました!
私…ホントにすっごく楽しかったです!」
「いやマジ…そう言って貰えて嬉しいです」
彼はまた優しく微笑む。
いつも思い知らされる。この人は本当にギャングのボスなんだろうか…そう思う程にこの人は
子供の様な無邪気で愛らしい顔で笑う
「それじゃあ俺会計しとくんで、先に車で待っててくれます?」
「えっ?!いやいや私払いますよ!」
「いーやいいです俺が払います!とおこさんに無理させたお詫びでここ来てるんですから!」
「いや、でも…!」
「ダメです!ほーら早く行きますよ!」
「うぅ…」
ホントに私は押しに弱い。
こういう所を直さなきゃいけないな…とも思いつつ、階段を降りてレジの隣で葛葉さんの事を待つ。
「ん〜…なんだか冷えてきたな…」
「とおこさん、会計終わりました」
「あ、はい!でも、ホントによかったんですか…?」
「いいっすよ別に…まぁホント…」
「俺も男ですし…」
「…?なんか言いました……?」
「いーや、なんでもないです!ホント、行きましょ!」
葛葉さんが何を言ったのかは分からないが、
言い直さないと言う事は大した事では無いのだろう。
そう思い、扉を開けた。
ツンと寒い空気が肌を刺す。
自然と体が震え、自分の肌の冷たさを実感する
そして視界の端に、白い物が映る。
「えっ…」
雪だ。
雪が降ってる。
『雪積もったら、雪合戦しましょ!』
「葛葉さんっ!」
「…はい!」
自分でも自分の声が高くなったのが分かる。
心做しか、体が暖かい。
そして目の前の彼も目を輝かせて、私の方を
見ている。
「いっちゃいますかぁ!」
「はい!」
「「雪合戦!!」」
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