俺は、主を家のベッドに寝かせると、もう一度あの会社に向かった。
其処にはもう愛が待っていた。
「やっと来たか。さぁ、ハナシアイの為に上司とやらと、サボリ魔連中を集めるか」
そう言った愛の声は「上司とやらと」の部分だけ倍以上に怒りが含んであった。こりゃ上司死ぬかもな。なんて思いながら、愛は上司を俺はサボリ魔連中を探しに出た。
サボリ魔連中のよくいる場所、そこは会社内のカフェか、屋上だ。
手始めにカフェに行くと堂々とサボリ魔の一人、フランスがいた。
隣にはイギリスもいた。こいつらは犬猿の仲であり、両片想いでもある。
「この白旗野郎、ちゃっちゃっと離してはくれませんかね」
怒りを含んだ声色でイギリスはフランスに向かってそう言う。
「やだぁ。イギと一緒にいたぁい~」
そう言いながらフランスはイギリスに抱きつく。
「仕事中に無理やり連れ出されたら誰だって怒ります!早く離れなさい!この白旗野郎!」
イギリスは怒り奮闘だ。
「紳士の皮剥げてんじゃねぇか」
笑いをこらえながら俺はそう言いつつ二人に近づく。
「あぁ、独華さんちょうどいい所に。ここに来たということはこのフランスパンに用があるんですよね。どうぞ連れてってくださいな」
満面の笑みでそう言われた。というか、フランスに対しての言葉がほとんど悪口なんだが。
「酷いよイギー!僕をこんな恐ろしい顔をしたやつに明け渡すなんて!僕がかわいそうだとは思わないの!?」
未だイギリスに抱きついているフランスがそう声を出す。
「知りませんよ!コッテリ絞られて来なさい!」
そう言ってイギリスはフランスを蹴っ飛ばしてオフィスに帰って行った。
「イギー!」
そう叫んでるフランスの腕を掴んで引き摺りながら屋上へ行く。流石に引きずられるのは痛いらしく、途中から引っ張られて歩いてたけどな。
屋上に着くとやっぱりそこには、イタリアが居た。
「でねぇ〜」
イタリアは何やら楽しそうに話している。
「そうか。帰っていい?」
面倒くさそうに話を聞いているポルトガルがいた。
「ダメなんね!」
そう言ってイタリアは又、話をし始める。
「何で俺が連れてこられたんだよ」
「近くに居たからなんね!」
ポルトガルのため息混じりの言葉に元気よく返すイタリア。
「ねぇ~、僕帰っていい?」
「だめ」
フランスがダルそうにそう聞くから俺は即答した。
そんな会話をしている俺に気がついたのか、ポルトガルが俺に助けを求めてきた。
「!独華!此奴を連れて行ってくれ!俺はまだ仕事が残ってるんだ!」
必死だな。
「ん、又なぁ、ポルトガル」
空いている片手でヒラヒラと手を振る。そうしてポルトガルはオフィスに帰って行った。
「さぁ、二人ともぉ?ハナシアイ。しようかぁ~」
ニヤリと笑ってギザ歯を見せる。
「「い、イヤー!」」
二人分の叫び声が屋上から響き渡った。
「大変反省しております」
「申し訳ないんね」
数時間に渡る俺からのハナシアイという名のお説教が効いたのか、二人は土下座して平謝り状態だ。
「前回もそれを聞いたような気がするんだがなぁ~。俺の気のせいかぁ?」
自分でも分かるほど負担よりも声のトーンが低くなっている。
「前回は、一週間しかもたなかったなぁ。今回はどうするんだ?」
「もう、サボリません」
「二度としないんね」
どうやら今回は本気で反省しているようだ。俺も説教するのに疲れたし、こんなもんでいいかな。
「肝に銘じとけ」
そう言葉を残して俺は愛との合流地点である会社のエントランスに向かった。
「遅かったな。いや、相変わらず、か」
愛の方はすでに終わっていたようだ。相変わらず仕事が早い。
「で?上司はどうなったんだ?」
「腕一本の犠牲と無職状態だな。少しぬるい気もするがな」
なんともないような顔で愛はそういう。そういう物騒な所は昔と変わらないみたいだ。
「ヒェー相変わらず容赦無い」
そんな事を言っていると昔やった地獄の特訓を思い出しちまった。飛んでくる刀と短剣にハサミやら鉛筆。それと鬼の形相で追いかけてくる愛。恐ろしかった。
そんなこんなで愛と別れ、俺は会社の近くの公園へ足を運んだ。