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(一瞬「やったか?」って思っちゃったし、やっぱり何かあるんだな)
なんとなく自分の思考にフラグを感じ、セルフで責任を取ろうとするアリエッタ。偶然にもその予感は的中。イディアゼッターの説明は理解していないが、行動は周囲と一致している。
「この子にはもう何もしてほしくないのですが……」
「ドウカンだ」
「気にしないで。もう説得には失敗してるから」
女神とはいえ、幼い子に直接的な戦闘行為をさせるのは気が引けるのもあるが、それよりも先程の破壊力をまた発揮されてはたまったものではない……と、大人達は思い、「もう大丈夫だから」と必死になってアリエッタに何もしないように言い聞かせようとしたのだ。結果はあえなく惨敗。
イディアゼッターが空間から出した四角の物体と、それを見て恐れおののく大人達、さらに自分に向かって何かを言い聞かせようとする姿を見て、『これは何かあるな』と正解し、『頼られているのかもしれない』と勘違いしてしまった。こうなると修正はかなり難しい。
そういう経緯があって、アリエッタは現在自分が装着しているウィング型のパーツを塗装中。
「諦めないでしっかり説得してくださいよぉ……本当に、切実にっ」
「2回目はほぼ失敗すると思ってください。1回教えた事を違うと教え直すのはかなり難しいので」
「ソコをなんとかするのが、ホゴシャだろうに」
「うわぁピアーニャ、面倒だからって……」
難しいといいつつ、ミューゼはしっかりと話しかけ続けている。それを説得ではなく励ましと受け取られているのが現状なのだ。
その隣では、パフィがデレデレした顔で、アリエッタを手伝っている。こちらもムームーが説得しようとしているが、失敗し続けている。
そんな4人の姿を見て、ネフテリアは思い切った決断をした。
「でも安心してくださいっ。なんか知らないけど、この子やる気に満ち溢れてます!」
『不安しかないわっ!』
「あきらめんな!」
ちょっと諦めたネフテリアにも総ツッコミ。
「うるさい! もう諦めて! ほらこんなに可愛い!」
「キレんな!」
ピアーニャも、何が起こるか分からないアリエッタの力を前に、止めさせる事を諦めたくない様子。
「だいたいピアーニャが妹になった日だって、ミューゼ達とそう変わらないじゃない!」
「そっそれはカンケイないだろう!」
「ぷっ」
「総長が妹……くすくす」
いきなり振られた恥ずかしい話題に、顔を真っ赤にするアリエッタの妹分。
ギロリと笑い声がした方を睨んでから、ネフテリアに言い返す。
「っていうか、わちがイモウトなら、アリエッタはまもるために、ヤルキをみせるんじゃないのか?」
アリエッタのこれまでの行動からして、ピアーニャを守ろうと頑張るのは明らかである。だからこそ、ピアーニャが出ていったらさらに酷い事になるのではと危惧しているのだ。
「……さらに頑張るか、ピアーニャと一緒に避難するか、どっちを選ぶかはアリエッタちゃんよ」
「いや、わちはマエにでないと……」
ピアーニャは最高戦力なので、防衛で前に出ないという選択肢は無い。そうなると確実にアリエッタも前に出ると、ネフテリアは考えているのだ。
「だったら、ピアーニャが説得してくれない? 上目遣いで、涙目で、甘えた声でおねだりするの」
「イヤにきまってるだろ! なんでそんな、おぞましいコトしなきゃいけないんだ!」
「アリエッタちゃんを説得するため」
「うっ、ぐぅ……」
心底嫌がっていても、それが効果的であるという意見には内心納得している。アリエッタはピアーニャには甘いのだ。ピアーニャが泣き落としをすれば、確実に大人しくさせる事は出来るだろう。しかし、それでも危険は伴う。
1つは、以前よりはマシになったが、まだまだ言葉がうまく通じないので、もし間違えた行動をとってしまうと、逆にアリエッタの闘志に火がついてしまうかもしれないという事。
もう1つは、みんなの前でピアーニャが幼児化しなければいけないという事。場合によっては泣き落としも辞さない覚悟が必要な案件。要するに羞恥心との闘いである。しかも確実に成功する補償が無い。
「年長者である総長の幼児プレイか」
「おいソコだまれ……」
なるほどな…と言いたげな、真面目な顔で想像するシーカーの男。何を考えたのか、すぐにその顔はだらしなく崩れた。
「……とにかく! わちはムリだぞ」
「仕方ない。ゼッちゃん、アリエッタを守ってください」
「儂ですか!?」
突然の指名に驚くイディアゼッターだったが、確かにあの規模の力をどうにか出来るのは、同じ神しかいない。その事を言葉にせずに目力で強引に訴えたネフテリアのお陰で、渋々ながらも了承を得る事に成功したのだった。
(うぅ、なんであの野菜女を守らなきゃいけないんですか……)
アリエッタの中にエルツァーレマイアの存在を感じているイディアゼッターは、嫌すぎて凹んでいる。
ここでタイミングでアリエッタの塗装作業が終了した。
「ぱひー、つかう」
「ありがとなのよ。今度はどんなナイフなのよ?」
パフィのナイフには、何やら緑や白で羽のような絵柄が描いてある。ヨークスフィルンの時に描いた炎の柄とは違う効果があるだろうと、アリエッタの力を知っている全員が予想していた。
「みゅーぜ、つかう」
「うん、ありがとう~よしよし」
ミューゼの杖はサイロバクラムに来る前に、フラウリージェによって見た目を改造されていた。なんだかサイバーな感じだなーと思っていたアリエッタは、さらに機械的な塗装を施していた。その見た目から効果を想像出来たのは、サイロバクラム人のみである。
「絶対ぶっとい魔法ビームでるやつだ」
「いやそう見せかけて超巨大な刃になるとか」
楽しそうに予想を言い合っている。
「ぱひー、あたし、きる」
「あ、手伝ってほしいのよ? まかせるのよー」
「……確かに前より意思疎通出来てますね。まだこんなトラブルの中に来ないでほしいものですが」
「しかたないだろ。こんかいはホントウに、リョコウのつもりだったんだ」
アリエッタは翼となっているパーツに不思議な絵柄を描いていた。全体的に水晶のような色合いで、先端は黒く塗りつぶしてある。さらに2つの棒に剣の柄のような絵を描き、両手に持った。
(これが今思いつく最強のメカ娘だ)
これで準備は整ったと、気合の入った顔つきになってピアーニャを見た。
「ふんす」
「おいどーするんだ。あれもうカンゼンにヤるきだぞ」
「どうするって言われても、もうゼッちゃんしか止められないでしょ」
「こ、困りました……」
アリエッタがやる気になればなるほど、不安でいっぱいになる大人達。
その時ついに、四角の物体がソルジャーギア達によって補足された。
「早くない?」
「まぁ仮にも神が作ったものなので」
「それもうナニがあってもナットクされる、マホウのコトバだな」
壁だった時も遥か遠くにある山よりも薄く見えた事から、それ以上に遠くにあった事は全員が理解している。そのような距離を移動するのは、アリエッタの塗装作業が終わる程度の時間では、ピアーニャはもちろんサイロバクラムの技術でも不可能である。
「ぜんいん、ジュンビはいいか?」
『はいっ!』
(おぉ、軍隊っぽい。そっか、敵が来たのか。よーしやるぞー)
覚悟を決めたシーカーやソルジャーギアも、参戦を望まれていないアリエッタも、気合十分。
視界に入る四角形の物体は徐々に増えていき、気付けば全方位囲まれていた。
「って、いつの間に包囲されてたんだよ……」
「あの速度じゃからなぁ。最初からそう動いてたんじゃろうよ」
「そのまま突っ込んでこないのは、何でだろうな?」
スタークとハーガリアンも、戦闘態勢のまま相手の行動を分析する。家程度の大きさを持つエーテルが、その移動速度を維持したまま突撃しないのは、全員が疑問に思っていた。
「この物体は、エーテルが無理矢理固まっているだけです。ある程度衝撃を与えると簡単に消えますよ」
そう言って、イディアゼッターは手に持った四角形の物体を浮いている手を2つ使って、挟むように殴りつけた。
すると物体は少しだけグニャリと変形した直後、一瞬にして霧散してしまった。
「いやそれもっと早く教えて欲しかった……」
全員が思っている事を、ネフテリアが代表して呟くのだった。
ともあれ、これで勝機は見えたと、全員が気合を入れ直す。後は囲んでいる四角形が、どういう行動に出るかが重要なのだ。
「どうやらこちらを閉じ込めるようですね」
「む?」
イディアゼッターによると、速度を落とした四角形が、今度は全方位からこちらへ距離を詰めているとのこと。
「つまり、攻撃は止めて、捕獲に切り替えたって事?」
「おそらくは。どういうつもりかは分かりませんが」
「ん-……」
ネフテリアはイディアゼッターからの情報を頼りに、エーテルに何が出来るかを考える。エーテルとはファナリアで言う魔力の事。つまり魔法で出来る事を考えればいい。
すると、少し思考にふけっていたネフテリアがいきなり焦りだした。
「って何でも出来るじゃん! ゼッちゃん、あの囲いが完成しそうな距離はどのへん?」
「おおよそですが、あの街くらいの距離ですね」
「広すぎ……」
「ですが、あの物体を減らせば、さらに小さくなるでしょう」
「ああ、ブヒンがすくなくなれば、そのぶんセツヤクするのか」
魔法が使えない者達はピンときていないが、ファナリア出身のシーカー達には徐々に不安が広がっていく。
どういう事かとハーガリアンが質問すると、魔法使い達は一度息を整えてから簡潔に説明をした。
「相手が神なら魔法のように使うと考えてもいいかと。つまり、集めた魔力をこうして、こう」
シーカーは魔力を見えるように集め、それを火に変化させた。
つまり、予測される最悪の結果の1つは、この場所を魔力で閉じ込め、全て火の海にするという行為。しかも固まっているエーテルの密度からして、火というよりは爆炎が発生するかもしれないと、シーカー達は言う。
「いや大変だぞそれ! それでアレを減らせってのか! おいお前ら!」
理解したハーガリアンが慌てて指揮をとる。こうなってしまったら、エーテルが集まてくる前に全て壊してしまうのが最善。
その意見にはイディアゼッターも頷いたので、長距離攻撃用のアーマメントの準備をする為にソルジャーギア達はコロニーへと飛んで行った。
「アリエッタさんは儂と一緒に、この場に残った方がよろしいでしょう」(あれらは、この子を中心に展開してますし)
「あたし達が最後の砦って事ね。やってやるんだから」
「アリエッタは私が守るのよ」
アリエッタが極力何もしないように、アリエッタを守ると決めた大人達。
しかし当の本人は、ウィングパーツ2翼の先端を前方に向け、いきなりそのパーツから2本のビームを発射した。
バシュゥゥゥン
『ちょっおおおおい!!』
「お前が撃つんかーい!」
「保護者ー! ちょっと保護者ー!!」
(あ、外れた。遠いなぁ)
大慌てな大人達の前で、少女は可愛らしく首を傾げていた。