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そのまま次の攻撃をしてみようとした時、ネフテリアが慌てて止めに入った。


「ちょおおおおっと待とうねアリエッタちゃん!」

「? はいっ!」


名前を呼ばれ、アリエッタは元気に返事をした。その顔は、やる気と自身に満ち溢れている。


(なんで今回はそんなに好戦的なのかなっ!?)


凄く止めづらい気分になり、心の中で思いっきり叫ぶネフテリア。しかし、いきなり折れるわけにはいかないと、心を奮い立たせてアリエッタと向き合う。

だが、そんなネフテリアの邪魔をする者がすぐ傍にいた。


「ちょっと待つのよ」


アリエッタの保護者パフィである。


「いやなんで止めるのかしら? ここは子供を止めるところでしょうが」

「この子がやる気になってるのに、止めるとは何事なのよ」

「いや貴女が何事なのよ!」


しれっとアリエッタの腰に手を回しながら、パフィがアリエッタの身を自分の方に寄せた。そのせいで、アリエッタの頭の上に大きく柔らかい物が乗ってしまった。しかもくっついているのが嬉しいのか、リズミカルに体を左右に揺らすので、頭の上で薄布に包まれた大きな物が、いともたやすく変形を繰り返す。


「ぱ、ぱひー?」(あの、なんか乗ってますけど……)

「子供のやる気を無下にするのは、大人としてどうかと思うのよ。こういう時は、後ろから見守るのも大人の役目なのよ。人はそうやって子を育ててきた筈なのよ」

「言ってる事はもっともだし、教育の模範的なお言葉なんだけど、今の状況とその無駄肉のせいで色々おかしくなってるから。ちょっとここから離れようか」

「ふっ、アリエッタも罪な子なのよ」

「アンタだよっ!」


自分に向けられる視線よりもアリエッタの方が遥かに大事なパフィは、周囲でちょっと前屈みになっている男達のネットリとした熱い視線など、どこ吹く風である。


「ぱひー?」(えっと……)

「ん? 大丈夫なのよー。いやらしい男どもの視線は、私が受け持つのよー」

「……アリエッタちゃんの壁になってるつもりだろうけど、視線がいやらしい理由のほぼ全部がパフィのせいだと思う」

「! はいっ!」


今の会話で何を理解したのか、急いでパフィから離れたアリエッタ。そしてそのままウィングパーツを突き出した。


「えっ」

「違うのアリエッタちゃん! そうじゃないのおおおお!!」

ばしゅぅぅぅっ


その状況は、味方への慈悲など一切無かった。

放たれた4条の光は、まだまだ遥か遠くに見える四角形の群れに飛んでいき、そのうちの1本が当たって1つの四角形が霧散した。


「っわああああい!!」

「やったのよアリエッター。よくやったのよー!」

「頑張ったねアリエッタ! うぅ…ふええぇぇぇん……」

「なんでオマエらふたりがなく!?」


小さな女の子が敵の1体を仕留めた。その事に感極まったミューゼとパフィから涙が溢れてきた。直前にもっと凄い破壊をしていた事など、完全に忘れてしまったようである。

そんな保護者には気づかず、さらにやる気を見せるアリエッタ。


「いやいやちょっと待ってえええ!!」

「ふぇ?」

「ぐっ、かわいい。いや、じゃなくて、アリエッタちゃんはお休みしようかー? さっきから色々撃って疲れたんじゃないかなー? わたくしだったら疲れて動けなくなっちゃうんだけどなー?」

「あ、そういえばそうだな……」


ネフテリアの必死の説得で、ピアーニャは疑問を感じた。経緯が分からないイディアゼッターは、素直に質問した。


「どういう事でしょうか?」

「あー、そのまえに……おまえらパフィばっかりみてないで、さっさとゲイゲキジュンビしろ! イセカイのセンリョクなんぞいらない、とかいわれないヨウにしろよ!」

『はいっ!』

「アリエッタみたいなヘンジすんなっ!」


テンションを上げて各々四角形との戦闘準備をするシーカー達。これまで色々なリージョンを渡り歩いてきたシーカーにとって、四角形の塊などちょっと変わった相手程度の認識のようだ。

シーカー達が仕事を始めたのを確認したピアーニャは、イディアゼッターの質問に答える事にした。


「であったばかりのアリエッタは、いちまいエをかいただけで、つかれてネてしまったんだ。きっとジブンジシンのチカラをつかって、イロをつくっていたからだろうが」

「ふむ、なるほど……」

「いまは、なれたのか、セイチョウしたのかわからんが、いちにちにナンマイも、かけるようになったんだ」


その本人は、保護者2人から泣きながら褒められ、ネフテリアの悲鳴を歓声だと思ったのか、さらに遠くにむかって乱射している。既に四角形を何個も消し飛ばしていたりする。


「あのカミがニジイロにひかっているスガタが、アリエッタのホンキなのかもしれんな」

「ん-む……あの虹色の髪が本気? 力が内側から噴き出しているような……だとするとあの野菜女は……それならば納得できるが……」

(うぅむ、アレとめたほうがいいよなぁ……やるしかないのか……)


ブツブツと考え始めたイディアゼッターをそのままにし、ピアーニャは重たい足取りでアリエッタの方へと向かう。どうやらアリエッタを止める決心をしたようだ。


「あ、アリエッタ……」

「!!」


声をかけるだけで効果は抜群。射撃を止め、ピアーニャを守るべく駆け寄った。


「ぴあーにゃ、だいじょうぶ!」(こんなに不安そうな顔になって、可哀想に。お姉ちゃんが全部やっつけてあげるからね!)


不安そうな顔はアリエッタが原因である。


「ぜったいカンチガイしてるだろ! アリエッタ、まってくれ!」

「あたし、バンバーン! ぴあーにゃ、だいじょうぶ!」

「ちがうちがう! なんだバンバーンって! おいミューゼオラなんとかしてくれ!」

「えー、頼りになる総長がなんとかするんじゃないんですかー?」

「オマエあとでブッとばしてやるからな!」


さらにやる気を上げたアリエッタは、ピアーニャを庇うように立ち、ビームを乱射する。


「ちがうんだあああ! なんでそんなムジンゾウにうてるんだああああ! おいゼッちゃん! ゼッちゃーん!」


説得に全力で失敗したピアーニャは、ついにイディアゼッターに本気で助けを求めた。


「あ、はいはい。こうなってしまったら、今は好きにやらせるしかないのでは?」

「しかしっ」

「攻撃された時は儂が必ず守ります故。お嬢達はその後の処理と、この子への教育を今まで以上に進めていただきたい」

「はぁ、それはいいですけど……」


イディアゼッターの提案に納得はしたが、何かを考えているネフテリア。


「何か不明な点でもございましたか?」

「……?」

「なんだそのメは」


何とも言えない顔で、ピアーニャを見た。

自分の師匠でもあり、祖父母よりも年上の人物がそう呼ばれている事に、色々な感情が渦巻いている様子。

寿命が長いハウドラント人と、そもそも寿命の概念があるのか不明な神の関係は、ネフテリアに確かな困惑を与えていた。

そんなやり取りをしている間にも、アリエッタは四角形を撃ち続け、少しずつだが確実に数を減らしていく。そして四角形はさらに距離を詰め、その全てが肉眼ではっきり見えるようになっていた。


「そろそろ魔法も届きそうかな?」

「長距離用アーマメントも届きそうですよ。ほら」


クォンが指差した先には、巨大なアーマメントを各々装着したソルジャーギア達がいる。コロニーから兵器を持ってきたようだ。

ソルジャーギア達は2グループに分かれ、それぞれハーガリアンとスタークの指示に従っている。そのまま号令と共に2方向へ一斉射撃。長距離射撃用のアーマメントから放たれたエーテルは、2つの四角形にそれぞれ複数突き刺さり、そのまま爆散させた。


「おー、凄いのよ」

「統率取れてるわねー」

「どうやら今のは試射を兼ねていたようですね。今度は少しずつ攻撃を分散させて、アレの強度を計っていくつもりでしょう」

「なるほどね」

(コイツら、アリエッタのセットクは、もうカンゼンにあきらめたな……しかたないか)

「おぉ……」(なにあれカッコイイ。こっちももっと頑張らないと)


統率のとれたサイロバクラム人達の攻撃は、アリエッタのやる気にさらに火を着けた。ウィングパーツを構え、自分にしか聞こえないような声で、呟く。


『ママ、本気でいくよ』

《よっしゃー! やっちゃえアリエッター!》


やる気になったのはアリエッタだけではない。精神なかにいるエルツァーレマイアも、娘との共同作業でテンションが高い。

アリエッタが無尽蔵に攻撃を続けられているのは、エルツァーレマイアが原因である。これまで様々な植物という命を創り出し、次元を超えて楽しんでいたエルツァーレマイアの力は、真面目に世界を創造管理している神々よりも遥かに鍛えられてしまっていた。1つの世界を管理するサイロバクラムの創造神が創り出した壁をあっさり破壊出来たのは、その為だったりする。


「あ、さらに力が溢れて……まだまだ余裕ありそうですねぇ……」


力量も、イディアゼッターが計り切れなくて引く程。


『とりあえず、フルバーストぉ!』


とりあえずでそんなモノ撃つなとツッコめる人材は、この場にはいない。

4本のウィングパーツからまとめて発射された超極太拡散ビームは、アリエッタが向いている方向の四角形を半分以上消し飛ばした。


「あーあ。やっちゃった」

「アリエッタ、凄いのよ」

「うん。今度こそ会話出来るまで外に出さないでおこうね」


これまでも勉強をサボっていたわけでは無いが、これで長期の勉強期間が確定した。

今の威力を見て、シーカーとソルジャーギアが動きを止めていた。


「……お前達ぃ! あの少女に負けるなよぉ!」

『無理ですけど!?』


ヤケクソなハーガリアンの激励は、全力で否定された。


「うーん……」(だいぶ近づいてきたなぁ。そろそろ本気で行くかな?)

「あのカオ。まだなんかヤルキだぞ……」

「もう大人しくしてくれませんかねぇ。いい加減怖いですよ」


今のアリエッタを止めたがる者は、もういない。

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