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🧡「亮平っ、きもちい…」


はしたなく右脚を肩に担がれるようにされ、康二が奥まで深く入って来る。康二はむしゃぶりつくように、激しく腰を動かした。


💚「あんっ、あんっ、あんっ!!」


康二が身体の奥深くまで入ってくるたびに、乾いた皮膚のぶつかり合う音と、机がギシギシと揺れる音がする。


放課後。


誰もいない空き教室で。オレンジ色の夕陽に照らされながら、康二はいつものように俺を愛した。


🧡「いく……」


やがて上り詰めた康二から白濁が放たれると、捲られた俺の裸の腹の上にそれらは飛び散った。俺の前も弾けて、そちらも負けじと康二の腹を汚した。



◆◇◆◇



康二との再会は、昨年の春にまで遡る。


中等部からエスカレーター式になっている、とある私立高校の入学式で俺たちは再会した。

入学式当日。中等部から通っていた生徒の列にいたらしい康二にふいに声を掛けられた。俺は中学受験には失敗し、高校から入った外部受験組だ。


🧡「亮平くんっ!?亮平くんやない?」


頬を上気させ、俺を見つめる見憶えのあるその仔犬のような眼差しに、俺は思わず目を丸くした。


💚「こーじ……?」

🧡「おん!俺や!康二や!!亮平くん、元気やった?」


康二の目は、早くも浮かぶ嬉し涙で潤んでいた。


康二とは、小学校に上がる前。


母親が弟の出産を控え、俺が祖父母の家に預けられていた時に出逢った。

浅黒く日焼けした腕が眩しい、可愛らしい少年だった。

彼はかつて父親に虐待を受けていた。そうだ。あの頃、彼の身体には生傷が絶えなかった。


💚「あれから、お父さんとは…?」


入学式の後、同じクラスになった喜びを分かち合い、初めてのホームルームが終わると、俺は小さい声でそう尋ねた。康二は、おとんは死んだよと少し寂しそうに笑った。



◇◆◇◆



康二の父親は、康二が小学校に上がると、まるで彼を虐めた罰に当たるように、重い病気に罹り、呆気なく死んでしまったらしい。最期の方は、病気で見る影もなく痩せてしまい、見舞いに行くのもしんどかったと彼は淡々と語った。


🧡「それからママが再婚して、中学から東京に住んどる。でもまさかほんまに亮平に会えるとは思ってなかったわ。やっぱり運命の赤い糸ってあるんやな」


白い歯を見せ、屈託なく笑う彼は、子供の頃とちっとも変わらなかった。彼は子供時代の面影を保ったまま、今では青年らしい雰囲気すらも纏って、精悍で美しく見えた。俺はといえば、あれから色々とあって、少々屈折した子供時代を過ごした。だから、高校に入ってからというもの、康二の太陽のような明るさに事あるごとに救われた。



◆◇◆◇



高校一年の冬の終わり。


🧡「亮平くん、君が好きや。俺と付き合ってくれませんか」


意中の人に気持ちを打ち明けられ、断ろうはずがない。付き合いをあっさりと承諾した俺に、緊張で真っ赤になった康二が目をぱちくりさせたのが未だに忘れられない。


大事に想う康二にはこれまで言えずにいたが、男に告白されるのは、これが初めてではなかった。それに俺の身体は彼が想像するより先に男というものを知っていた。そのせいなのかは分からないが、昔から、同性にそういう対象として見られることには慣れている。奇しくもここは男子校だ。俺たち以外にも何組か『そういう』カップルがいるという噂もあった。


付き合ってからも康二は変わらず俺に優しい。


彼は人よりも空気を読む力に長けていて、人との距離感を掴むのが上手い。しかし一方で少年時代の体験からか、どこか消せない影を背負っており、他人の負った傷にとても敏感だった。



◆◇◆◇



💚「康二、どうして泣いてるの?」


校舎がオレンジ色に染まる頃。いつものように快楽に身を任せ、行為中は考えることを放棄していた俺の前で、康二は突然涙を見せた。


🧡「亮平が泣いてるからや」

💚「康二……?」


泣いているのは康二の方じゃないか。


そう言い返そうとした時、俺の頬を突然熱いものが伝った。自覚なく、俺の目からは知らずに涙が溢れていた。


🧡「亮平、俺のこと好き?」

💚「好きだよ」


答えは迷いようがない。俺は康二が大好きだ。優しくて、包容力があって、いつも隣りに寄り添っていつまでも一緒にいてくれる。


『身勝手なあの人とは違って』


温かい涙が心を溶かすようにとめどなく頬を流れていく。康二と愛し合うたび、心の奥底の冷え切った氷がひとつひとつ解けていくようだった。そして今日この日、その想いがついに溢れた。


しかし心のもっと奥深く、どうしても解けない想いがある。冷え冷えとしているのにとても熱い記憶。俺の初恋の残滓がそこには人知れず眠っている。


🧡「俺の知らない亮平のこと、俺はもっと知りたい」


そう言って俺を抱きしめる康二の熱を感じつつ、彼から発せられる優しく心地良い声をどこか遠くに聴きながら、俺は、あの強烈な夏の日々を思い出していた。





🤍先生④に続





【パラレル】💙兄弟、家族集

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