「おやすみ、涼太」
そう言って隣に寝転んだ翔太は、あっという間に眠りに落ちた。
無防備に、子供の頃から変わらない寝顔で。鼻にかかる寝息さえ、今の俺には罪だった。
真っ暗な部屋。
カーテンの隙間からわずかに月明かりが差し込んで、翔太の輪郭を柔らかく照らしている。
(なんで…こんなに、好きになってしまったんだろう)
枕元にある翔太の手。
子供の頃は、よくこの手を引っ張って遊んだ。
転びそうになったとき、何度も握ってくれたその手。
今はもう、そんな理由じゃ触れられない。
胸が、ぎゅっと痛んだ。
翔太のまつげがふるりと揺れる。
寝返りをうっただけだったのに、それだけで鼓動が跳ね上がった。
翔太の顔にそっと手を伸ばす。
触れたら、バレるかもしれない。
でも…見てるだけじゃ、もう苦しかった。
「……ごめんな」
小さな声で呟いて、そっと、そっと翔太の唇に触れた。
一秒もない、軽いキス。
(これで…何回目だよ)
眠っている翔太に、気づかれていないことを願いながら。
そのまま布団をかぶり、震える肩を隠すように目を閉じた。
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