コンコンコンと三回のノック。追加に
「入ってもいいですか?」
というショッピの声。俺は扉を開けて招き入れた。
「ロボロさん、正直俺にまだ命預けられないっすよね。」
驚いた。誰かに見透かされるなんて初めてだ。
「部屋に入って来て開口一番それか。」
「いやまぁ、、、やっぱり寂しいっすから。」
少し言うのを躊躇い、その言葉を放ったそいつに俺は何も言ってやれることがなかった。いや、正確には何も言う気がなかった。でもいつの間にか口は動いていた。
「確かにまだ相棒としては接することが出来へんかもしれん。でももう仲間としては信頼しとるから。」
「そうですか。」と優しく笑った。
「大丈夫ですよ。俺がすぐにまたロボロさんの信用を得ますから。」
それだけ言ってショッピ君は部屋を出て行った。
強い奴やな。と、ショッピ君が出て行った扉を見つめる。俺ならきっと挫けている。ただ彼は、まだ純粋なのかもしれない。
「神がサイコロを振るってどういう意味やと思う?」
食事をしていると急にゾムが聞いて来た。昨日はショッピ君が部屋に帰った後すぐに就寝した。そして起きて朝食を幹部全員で食べるためにここに来た。すると急にゾムからそんな言葉が出て来たのだ。いや、うん。何があった?
「まずそれ何処で聞いてきてん?」
と質問すると
「分からん、なんか急に気になって。」
と言ってきた。マジでなんでやねん。こんなバカな会話をしているのに、口を突っ込んでこない皆は食害で今死んでいる途中である。ショッピ君は助けようとしたのだが見たときにはもう死んでいた。正直おもろいが可哀想でもある。そんなことを考えていると
「ローボーロー!」
とゾムが耳元で叫ぶ。
「うっさいわ!」
と言った俺の声の方が大きかったのだろうか、耳鳴りに頭を抱えている。まぁ、自業自得や。俺は悪ない。そしてしばらくすると、ゾムがフラフラしながら話しかけて来た。俺の声ってそんなにでかいん?
「ロボロ、神がサイコロを振るってどういう意味なん?」
「だからどこで聞いてきてんってその言葉。」
「覚えてへんねん!」とキレつつもゾムは考える素振りを見せた。実は俺にも少し突っかかるふしがある。なんとなくどこかで聞いたことあるような。神が、、サイコロを、、、?その時、ゾムが思い出したようで、生き生きと話し始めた。
「神がサイコロを振るってあれや!今年のふたご座流星群?がなんか今までの観測史上最高にやばいんやって!なんかいつもの倍あるらしいねん!でなんかネットに色々と今年は神様が!とか書いてあるんやって!」
「つまりその中の一つやったそれに興味がわいたと。」
「そうそう!」
はしゃいでいる子供のようだなとゾムを横目に見る。食事を続けようと正面を見ると、皆の雰囲気が変わっているのが分かった。
「今年は皆で観測したいと思っていたところなんだゾ!」
そのグルさんの言葉を筆頭に次々皆が話し出した。
「もう御茶とか用意初めてるめぅ。」
オスマン早ないか?まだ九月に入ったばっかやぞ?
「12月からやのに騒ぎすぎや。それより、ちゃんと資料とか完成させとかんと皆での鑑賞会許さんぞ。」
流石トントンさん。きっちりしていらっしゃる。ん?資料??あ、、、。そこで俺は自分が一般兵をかばう際にちりばめてしまった資料の事を思い出した。期限は今日の朝7時まで。現在時刻は8時だ。やってしまったと思いながら恐る恐るトントンに話しかけた。
「トントン、その、ごめん。今日提出の資料がまだできてなくて、、。」
「ん?あぁ、大丈夫やで。庇うときにそこらへんに捨てたやつやろ?拾って確認しといたし、千切れてたとかもなかったで。それにロボロはどっかの誰かさん達と違って毎回ちゃんと提出してくれてるしな。」
ギロッとトントンの目がいつもお馴染みのメンバーの方に向く。途端にさっきまで騒がしかったのが嘘かのようにそいつらは静かになった。俺は苦笑しつつ、ご飯を食べ進める。するとしばらく放置していたゾムがまた話しかけてくる。
「で、ロボロ。どういう意味やと思う?」
まだ諦めてなかったのかそれ。と思いつつ思考を巡らせる。神が、、。さっきも感じた違和感がまた押し寄せてくる。分からない。頭が混乱している。記憶喪失のせいなのだろうか?
「ロボロはまだ病みあがりやし、部屋でゆっくりしといたらええよ。仕事もしばらくは休んでええし。」
「ありがとう、ゆっくり休ませてもらうわ。」
トントンの言葉にそれだけ返し、俺は逃げるようにその場を離れて行った。
部屋に戻ると資料が山積みになっていた。そう言えば昨日、トントンの部屋から奪った書類処理しとったんやっけ?と俺は気を紛らわすように書類を片付ける。トントンが隠していた書類は、どうやら先月確認されたスパイに関してだった。これはトントンに処理をしてもらおうかと実はグルさんに話していたのだ。それで増えたのか。申し訳ない、と思いつつ書類を処理しているといつの間にか最後の一枚になっていた。でもそれは書類ではなくメモ帳のようなものだった。内容は次の流星群について。どうやらトントンも次の流星群を楽しみにしとったみたいや。それをどんどん読み進めていると、かなり大掛かりな準備とそれに使う出費について書いてあった。てっきり軍資金でも使うのかと思っていたが、トントンの驕りのようだった。そして値段の方を見る。ざっと1000万は超えている。確かにこの国では軍人はかなり高収入な職業だ。でも流石にこれを一人で出すのは、まぁ生活が苦しくなるとかは無いだろうがさすがに大金すぎる。それこそ皆趣味を持っているようにトントンも趣味を持っているはずだ。それに使うお金が無くなってしまう。それに比べて俺は一応趣味は持っていないと思う。実際どうか知らんけど。まぁ実質あいつ等と居るのが趣味みたいなもんやしな。そう思いながら俺は封筒に少しばかりのお金を詰め、終わった書類と共に持っていくことにした。
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