テラーノベル
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この作品群はすべて“二次創作”であり、
実在する人物・団体・作品とは一切関係ありません。
このお話の時系列⋯【本編後想定】
⚠︎本編や配信コンテンツ等番外編のネタバレを含みます。
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❌読後クレームお断り❌
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───目が覚めたのはつい先程だ。
暗く淀んだ空間。辺りには重苦しい空気が漂い ───自分の感覚すらも見失いそうなほどの、浮遊感にも似た“虚無”が、この全身を突き刺すように激しく襲い来る。
もしここにずっと居たなら、気が狂ってしまいそうな……そう思うような場所だった。
「───想像してたのとは随分違ったな。まさか、こんなに退屈だなんて」
知り合いの一人でもいれば、もう少し楽しめたのに。
細く垂れた三つ編みを左の指でくるくると弄りながら、僕は深く溜息をつく。
「まさか、僕だけが“地獄行き”とはね。あーあ……ついてない」
一応──この空間にも存在するらしい“地べた”を、ひかえめに蹴る。 コツ、コツ。と、確かに靴を鳴らしながら、前進を試みてみることにした。
「……シータや兄さんはともかく、姉さんなんて今まで何人もバイトを粛清してきたんだから、コッチでも良かったはずなのに───。」
ああ、神さまとは無情だ。いつだって、僕には“そういうもの”を与えてくれた試しがない。
……でも、そんなのは今更だ。
僕が生まれてからそうだったものが、僕が死ぬまでずっと変わらなかっただけ。
……しかし、それが死んだ後まで続くとなると、いい加減ウンザリするというもので───。
「……いけない。“ひとり”で考えると、どんどん───」
───言いかけて、自然と言葉が詰まる。
埃っぽい湿った空気と、ふわりと漂う珈琲の香り……それを思い出してしまうと、なんだか突然、前を向ける気がしなくなって……僕は足元に視線を逃がした。
「あぁ……あなたがいれば良かったのに……。」
そう零したのを最後に、歩みを止める。
さっきから、前に進めている気がしない───あまりに同じ風景が続きすぎて、大して歩いてもいないはずなのに、疲労を感じてしまう。
……正確には、気疲れか。流石は死後の世界……と言うべきか、身体的な疲れは一切感じていない。
「それなら、どうして僕の思考はこんなに続いているのかな……。」
ぽつり、独りごつ。この無限の感情と、意味不明な疲労から目を逸らしたくて───。
「───やっぱ気になっちゃうよねー。そこんとこ。職業病というかさー……」
───僕が目を閉じて、息をついた隙だった。
前方からふと、馴染みの深い声が聞こえ─── 僕は思わず顔を上げて、その姿を捉える。
「久しぶりだねー。いやあ、遂にこっち来ちゃったか───ニエルブくん。」
「……酸賀…さん……」
「そう、酸賀さん。いま来たばっかでしょ?なんか疲れてそうだし……そのへん適当に座りなよ」
彼はそう言って、その場にしゃがんでみせる。
ここまで生き生きとした彼を目の当たりにするのは久しぶりだった。それは、先程までのイヤな気分なんてすべて払拭されてしまうほどで ───思わず頬が緩んだ。
「……ココなら、どこに座っても綺麗そうだね。酸賀さんの家に比べると。」
「おお、言うねえ。ちょっと元気出た?」
「おかげさまで。」
───そうして、彼の隣に腰を下ろす。
生前よりずっと、ずっと近くに───。
「……ねえ、酸賀さん。僕、あなたに話したいことが沢山あるんだ。……聞いてくれるかな」
「いいよ。どんな話?」
神さまから与えられるものなんて、僕にはないと思っていた。
神さまとはやっぱり無情で、あまりに酷いものだった。
まさか、最後の最後まで、こんなものを寄越してくるなんて───。
ああ、生まれて初めてだ───。
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