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いつも通り家に帰ると、まだ桃くんは帰ってきていなかった。
「まだ帰ってきてないか…。」
と、誰もいない部屋に向かって一人、話しかける。誰もいないことなんて慣れているはずなのに、少し寂しく感じてしまう。
両親は僕たちが三歳の時、事故で死んだ。あの日は公園で遊んでいた。
両親は、共働きではあったけど、家族の時間を大切にするタイプだったから、必ず毎週日曜日は、家族でどこかへ出かけていた。いつもと変わらない日常。
この日も、明日が当たり前に来ると思っていた。
あのとき、僕たちは二人はボール遊びをしていて、遊んでいるうちに、僕がボールを道路に出してしまった。まだ三歳だった僕は、ボールを取るために何も考えず道路に飛び出した。
車が来ていることにも気づかずに。
ボールを取った瞬間、何かが物に当たる音がして、僕は後ろに振り返った。
そこには、僕たちの両親が血だらけで倒れている姿があった。すぐにボールを置いて、
「ママ!パパ!」
と叫んだが、何も返事は返って来ない。僕は桃くんのところへ走った。
「桃くん!ママとパパが!」
そう伝えたが、桃くんは放心状態で何も答えてはくれなかった。
「どうして何も言わないの!ママとパパが血だらけなんだよ!」
小さいながら、桃くんに一生懸命伝えた。でも、桃くんも小さかった。
桃くんも僕と同じように、何もできなかった。
僕たちは何もすることができないまま、両親の存在は一瞬のうちに消え、当たり前にあると思っていた明日は、あっという間になくなってしまった。