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「こ、これは……」
「副隊長、見てください!
ワイバーンが横一直線に―――」
ランドルフ帝国・陸戦部隊……
その魔戦団副隊長であるそれがしは、上空で見る
光景に目を奪われていた。
ワイバーンによる小さな『乗客箱』のようなもの、
乗員はそれがしと部下一人―――
そして範囲索敵を使うというシルバーヘアーの
ニコル・グレイス子爵という少年、
航空管制指揮官という、アリス・ドーン伯爵令嬢、
さらに三人の事務処理担当のような軍人が、
外の様子や書類と格闘していた。
『こちら、ワイバーン騎士隊・隊長―――
メギ公爵です。
空の旅は快適でしょうか、どうぞ』
室内に、外で飛行している彼らの隊長から
連絡が聞こえ、思わず身構える。
窓から伺うと、どうやら王宮で見たような
魔力通話器を使っているようだ。
しかし、ここは上空でしかもかなりの速度で
飛んでいるはず。
「え、ええ。とても快適です。
しかしどうやって、外の通話器を固定して
いるのですか?」
それがしの問いに、ブラウンのショートカットの
女性は微笑んで、
「あれは私の物体浮遊魔法で、
外に浮かせているのです。
それで外のワイバーン騎士隊と交信いたします」
「それと、わたしの範囲索敵で地上・空中両方の
情報を集め―――
それらを彼らに渡して分析してもらい、
さらに外へ伝えて共有します」
男女から説明を受け、部下も必死でメモに
記入する。
「そういえばメギ公爵殿。
沖合に二艘の大型船があると言われたが、
つまり、それがしたちの接近はわかっていたと
いう事でしょうか?」
『はい。上陸地点も把握しています。
ただ未開拓地を通り、新生『アノーミア』連邦へ
向かっているようでしたので―――
陛下から監視だけはするよう命じられて
おりました』
……全て見られていた、という事か。
沖合にある大型船とて、ワイバーンの飛行範囲を
考慮して、相当遠くに停泊させている。
これでは、奇襲など思いもよるまい。
本国に帰ったら、戦略の見直しが必要などという
段階の話ではなくなる。
「ちなみに、ワイバーン騎士隊の総数は
どれくらいになりましょうか」
その質問に、ドーン伯爵令嬢が振り向き、
「現状、まず10騎で運用されております。
女性による騎士隊創設も進んでおり、
男女合わせて20騎、予備も含めて
30騎という規模でしょうか」
「ただ彼らは人間の姿にもなれるし、自分の好みで
相手を決める場合もありますので―――
騎士隊以外にも、ワイバーンライダーが
存在しています。非常に少ないですが」
ウィンベル王国だけで三十……!
しかも軍所属以外にもいる、だと……
それに各国で創設を進めているとも聞いた。
そうなれば、百を超える―――
しかも練度や信頼は我が国とは桁違いの、
ワイバーンライダーがいる事になる。
確か我が国では、あと八ヶ月で三百単位の
ワイバーンを運用可能にせよとの、皇帝命令が
下っているが……
それが三百だろうが千だろうが同じだ。
この航空管制の元、人間が主導する空の機動力に
対して、地上で命令を受け決められた行動しか
出来ない戦力が、どう対応出来る?
『ああ、そろそろ見えてきました。
ランドルフ帝国の方々の、上陸地点ですね』
「―――!」
その言葉に思考に沈んでいた意識が現実へと
戻され、思わず窓の外を見る。
「半数は今の高度で待機。
もう半数はこちらに従って下降してください」
『こちらレオニード!
了解です!』
伯爵令嬢の指揮の元、ワイバーンたちが手足の
ごとく命令を聞いて動く。
やがて地上近く―――
その浜辺に、自分たちが乗って来た船が
見えてきて、
「ほ、本当です副隊長……!
あれは我らが乗って来た船です」
「む、むむ……」
唯一の希望―――
ハッタリかも知れないと思っていた思いは、
もろくも崩れ去る。
しかも、かなりの高度から降りてきたはず。
つまりそれは、どんなに遠くても位置を正確に
認識している事に他ならない。
「あ、上昇してください。
あまり近付くと警戒させてしまうかも
知れません」
ドーン伯爵令嬢の指示に従い―――
今度は高度を上げていく。
乗って来た船は視界の中で小さくなっていき、
やがて点となり……
再び、他のワイバーンライダーたちが待機する
上空へと戻ってきた。
「さて、王都へ戻りましょうか。
編隊を組み直してください。
メギ公爵・レオニード侯爵を先頭でお願いします」
『こちらメギ隊長、了解した』
『レオニード副隊長、了解です!』
彼らはアリスの指示通りに飛行陣形を変化させ、
王都・フォルロワへ向かって飛び始めた。
「……以上が、我がランドルフ帝国の現状、
そして意思でございます」
「我が帝国と組む事が、何よりの発展の道と
思われますが」
同時刻―――
ラーシュ・ウィンベル国王と、
ティエラ・ランドルフ王女、
そしてラモード・ブラン外務副大臣との交渉が
佳境を迎えていた。
王女は落ち着いた様子で、副大臣はやや熱気を
帯びて呼吸を荒くする。
「お話はわかりました。
交易や同盟を考えるためにも―――
まずはお互いの状況を正確に分り合う事が
重要です」
ラーシュは友好的な態度で彼らの申し出を
受け止め、ティエラとブランの表情に安堵の
色が浮かぶ。
「ただ今回は公式の使者とはいえ、
新生『アノーミア』連邦との経緯もあって……
いささか、大々的に公表出来る交渉では
無いと思われます。
連合各国にも、帝国との正式な話し合いの場を
設けてみてはいかがでしょうか」
そこで王女と副大臣は顔を見合わせ、
「そうですね。
こちらとしましても、今回だけで全て
話が終わるとは思っておりません。
個人的にではありますが、ウィンベル王国とは
永く友好が結ばれる事を期待します」
ティエラの後に、ブランも続き―――
「ラーシュ陛下」
改まった態度を取る彼に、国王も向き直る。
「何でしょうか、ブラン殿」
そこで副大臣は大きく、そして長く息を吐き、
「もし……
もし、仮にですが―――
ランドルフ帝国とウィンベル王国が組んだ場合、
その権勢はすさまじい事になるでしょう。
そうなった場合でも、他種族への寛容という
方針に変更はありませんな?」
それを聞いたラーシュは、言葉の裏を読む。
「(なるほど……
一見、我が国の寛容さに変更は無いかと
釘を刺しているように思えるが、
その実、促しているのだ。
即ち我らと共に覇権を握ろう、と―――
さて、どう答えたものかな。
この場合の最適解は、『仮定の話に答える事は
出来ない』というのが定番だが)」
ティエラもブランの真意を察したのか、
顔色を変えて国王と自国の副大臣の顔を
交互に見る。
「確かあなた方は、アルテリーゼという
ドラゴンの『乗客箱』に乗って、
王都まで来られたのでしたね?」
「は? え、ええ。その通りです」
質問で返された副大臣は、やや困惑して
答えるが、
「そのドラゴンの親友の1人に、フェンリルが
おります。
名をルクレセントと言うのですが―――
彼女たちは話し合った事があるそうです。
『我らは、自分たちを高みに置き過ぎたのでは
ないか?』と」
その言葉の意図が読めず、ランドルフ帝国の
二人はただ黙って先を待つ。
「『人間や他の種族を見下したままでは、
こんな美味い料理や面白い事には
出会えなかったであろう。
強過ぎるというのも、損をするものなのだな』
……だそうです」
「逆説的というか、含蓄のあるお話ですわね」
ティエラが相づちを打つ。
「ドラゴンですらそうなのですから―――
人間はもっと多方面に謙虚に、教えを求める
べきだと思います。
これでは答えになりませんかね?」
「…………」
ブランはただ口を閉じて沈黙し、それがそのまま
答えとなる。
こうして、国王とランドルフ帝国の王女・
副大臣との会見は終わりを告げた。
「あ、シンさん。
ここにいましたか」
私は冒険者ギルド本部の厨房で、料理人たちに
乞われ、調理を教えていたのだが、
そこにブロンドの長髪に童顔の女性が現れ、
作業中の手を止める。
「あ、サシャさん」
「何かあったかの?」
メルとアルテリーゼも一緒におり、二人も
彼女へ向き直るが、
「えーと、ランドルフ帝国の一行との交渉が
落ち着いたのと……
彼らたっての希望で、公都『ヤマト』に
向かいたいと言ってきているそうです。
それで帰りも、『乗客箱』で送って
もらえないかと」
という事は、首尾よく終わったのかな?
私はドラゴンの方の妻に視線を移すと、
「まあ別に良いぞ。
どの道、公都に戻るわけだし」
「そだねー。
それに、あの居心地の良さを知ったら、
公都を選ぶだろうし」
ある意味、王都より最先端をいっている部分も
あるしな。
使者をもてなすには最適だろう。
「そういえばシン、何か助言していたと聞いて
いるけど……
どんなおもてなしを?」
黒髪セミロングの人間の方の妻が、私の顔を
のぞき込み、
「んー、まあたいした事は言ってないよ。
興味があるのならおいおい話すけど」
「ここでは話せぬ事もあろう。
どうせ泊るのであるし、その時にゆっくり
聞こうぞ」
抜群のプロポーションを持つ、黒髪ロングの
ドラゴンの妻がフォローに入る。
こうして私は妻たちと一緒に調理を続け―――
王都でも新しい料理は好評を得る事になった。
「結論から申し上げますと、話になりません。
あのワイバーン部隊には絶対歯が立たない。
信頼も練度も全く異なる。
今でこそ数はランドルフ帝国が勝って
いるでしょうが……
力押しで勝てる相手では無いと思われます」
「そ、それほどまでにか」
一通り、それぞれの交渉・経験・視察を終え、
その中でもティグレは、戻って合流するなり
結論を切り出した。
ブランもまた、国力・文化の違いを感じて
いるのだろう。
驚きはすれど反発はしない。
「空、陸上、水上―――
全ての戦力を見せてもらったのですね?」
「それは間違いありません。
私の『真偽判断』で確認済みですから」
ティエラの問いに、魔戦団副隊長に従い共に
視察をしてきた従者が答える。
彼が『真偽判断』を使える事は一行の中でも
秘中の秘であり……
相手の軍の分析は最重要視されていたので、
その真贋を確かめるために派遣されていた。
「う、運用次第ではどうにかなるのではないか?」
外務副大臣がなおも質問を重ねるも、
「その運用においても、あちらの方が数段
上なのです!
航空管制という担当がおり、常に空中で
どこに敵がいるのか範囲索敵で割り出し、
それを外のワイバーン部隊に即時に伝えられる。
相手がどこにいるのか、どこから攻めて
くるのかさえわかれば―――
これほど容易い戦はありません。
もし防衛に徹するのであれば、これを破るのは
不可能に近い……!」
重苦しい雰囲気になる中、ティグレは続けて、
「ただ、水上戦力に見るべきものはありません
でした。
実験段階にある、水中で羽を回して推進する
小型の船はありましたが……
実用段階にはほど遠いかと。
これは渡海能力が無い、即ちランドルフ帝国を
本格的に攻めるだけの手段が皆無という事を
意味しています。
その事がわかっただけでも、来た意味が
あると思います」
その説明に、各自の顔に安堵の表情が浮かび、
「陸上戦力は?」
「確か、魔狼ライダーというのもいたはず
ですが」
ティエラ王女直属の従者である、アラフィフの
赤髪の男と、アラフォーのボサボサ髪の男が、
補足するように質問する。
「馬とは機動力が桁違いでした。
さらに平地や荒れ地だけでなく、木々の間を
蹴って移動も可能です。
簡単な砦なら障害にすらならないでしょうね」
ティエラはうなずくと、ふと思い出したかの
ように、
「公都には―――
獣人族やラミア族、ハーピーという半人半鳥の
亜人もいたと記憶しておりますが」
彼女の言葉にティグレはうなずき、
「獣人はともかくとして、亜人や他種族は
数が少な過ぎるので……
いくら強かったとしても戦力としては微妙かと。
少なくともドラゴンやワイバーンの比では
ありますまい。
恐らくは、局地的な環境や任務に投入されると
見てはいますが」
魔戦団副隊長は軍人としての分析を述べ、
冷静に状況を把握する。
「ラ、ラーシュ陛下の話では―――
魔族とも組んでいる、との話があったが?」
ブランがおずおずとたずねると、
「はい。
以前、新生『アノーミア』連邦から、
誘導飛翔体の攻撃をウィンベル王国が受けた
事があり―――
その際、協力してこれを解決したとの事。
ただこちらも数としてはたったの4人であり、
もし攻撃が分散されていたら対応出来なかったと
正直に話しておりました」
(■109話
はじめての きょうどうさくせん(そら)参照)
言外に、亜人や他種族と同じく……
『個々の戦闘能力は強力だろうが、大勢には
左右しない』
『脅威としてはドラゴンやワイバーンと同程度』
と伝える。
「精霊もいるそうですが、こちらは気まぐれで
積極的に争いに参加した事は無いそうで。
正直、未知数というところです」
最後に精霊に触れ、彼は話を終える。
「それで、ブラン外務副大臣殿―――
我がランドルフ帝国としては、いかなる道を
選ぶべきでしょうか?」
外交権限は彼が一行の中では最高であり、
それをティエラから問われたブランは思わず
考え込むが、
「…………
少なくとも敵対は避けるべきだ。
だが、帝国には受け入れられない事も多い。
亜人や異種族を隷属化している我が帝国では、
確実に異端視、もしくは危険だと認識する者も
出てくるでしょう。
出来るならば、今回以上の権限を持つ者を
もう一度派遣してもらい―――
それからこの大陸からも、返礼の使者を
我が国へ送ってもらう。
結論はそれが終わってからだと思われます」
国益を考え、また安全保障の観点からも、
今すぐの衝突は避けるという考えに至る。
「そもそも……
亜人や異種族を隷属化している事自体、
聖女・ミレーレ様の教えに反しているのです。
これを機に改めていけば―――」
それを聞いた一行は微妙な表情となり、
ブランは黙って首を横に振る。
「それは感情論です、ティエラ様。
老婆心ながら申し上げるが、その事は
今回の件に絡めるべきではない。
政に関わるおつもりなら、それくらいの
腹芸が出来ねば目的は達成出来ませんぞ」
彼女はテーブルの下で拳を握りしめたが……
外務副大臣の言も現実を示しており、
それを受け入れ、ただ深いため息をついた。
「まあ、かなり情報も手に入りました。
後はせいぜい、お土産をたっぷり持って
帰りましょう」
「公都『ヤマト』に行くんですよね?
そういえば、また何か料理が増えてたなあ……」
カバーンとセオレムが、主人を慰めるように
今後の予定を話すが、
「りょ、料理が学べるんですよね!?
期間はどれくらい頂けるでしょうか?
出来れば一ヶ月ほど―――
いや、可能なら次の使者が来るまで……!」
料理修行希望の男が、待ってましたと言わん
ばかりに口を開くが、
「そんなに期間はもらっておらん、バカ者!
せいぜいあと10日程度だ」
ブランが一括して彼を黙らせるが、
「……出来れば、あのボーロとかいう料理を
覚えてくれ、ロラン」
外務副大臣がニヤッ、と笑顔になると―――
つられて周囲の人間も笑い出した。
「ふー、疲れた」
「料理が思いのほか好評だったのう」
王都の冒険者ギルド本部・そこに割り当てられた
部屋で、私と妻二人はようやくくつろいでいた。
「特にあの、ダイコンオロシと冷やしソバ・
ウドンの組み合わせがなあ」
春も終わり、だんだんと夏日に近くなりつつ
あるのもあってか、冷たい系の料理である
ソバ・ウドンが飛ぶように注文された。
「でも、ラッチはあのまま二人に預けても
良かったのか?」
今、自分たちの部屋にラッチはいない。
サシャさんとジェレミエルさん、他女性職員が、
添い寝すると預かったままだ。
「たまにはいいんじゃない?」
「そっちの方がいろいろと集中出来るしのう?」
肉食獣のような目付きになる二人を前に、
私は草食獣のように固まるが、
「そーいえばさ、シン。
結局、王家にどんな『おもてなし』の
提案をしたの?」
不意に話の方向をメルが変える。
私も忘れていたが、昼間話していた事だ。
今回の、ランドルフ帝国の使者を迎えるに
あたって関わっているわけだし、興味が
あるのだろう。
「本当にたいした事は言っていないんだけどなあ」
そこで私は、妻たちに説明し始めた。
実際、自分がした提案は……
・各種族混合の楽団でお出迎え
・王との会見の部屋は可能な限り質素に
そして―――
・戦力はどれだけ見せても説明してもいいが、
絶対に『水中』の戦力は秘匿する事
である。
「絶対に秘密って……
シンにしては珍しいね」
「水中戦力というと、ラミア族や人魚族か?」
その問いに私はうなずく。
水中を集団で自由に動き回る―――
その能力において、彼らを上回る戦力は
少なくとも現時点でこの世界にはいない。
ヒュドラやクラーケンなど、大型の魔物に対しては
後れを取るが……
そもそもそんな魔物が出てきたら戦争どころでは
なくなるだろうし。
「それに、人間の方にも水中戦力はいるんだ。
ほら、下水道の施設整備班用の装備……
鉱山用に完全空調になったけど、アレをさらに
改良して、水中でも動ける潜水服としても
使えるようになった。
動きはラミア族や人魚族には敵わないけど、
敵からしたらかなりの脅威になると思う」
ウィンベル王国も情報をかなりオープンに
しているが、『水中戦力』だけは絶対に
シャットアウトしてくれと要請した。
「水中かあ。
確かに厄介かも知れないけど、そんなに
脅威?」
人間の方の妻が首を傾げるが、
「水中を攻撃する手段が、今のところこの世界には
無いからね。
だからそっちに注目が行かないよう―――
空・陸上・水上の戦力は『全て』見せてもいいと
助言したんだよ。
もし万が一、相手が攻めて来たとしても、
一回だけなら撃退出来る『切り札』として
温存したかったんだ」
「……ちなみに、どうやって水中から攻撃を
するのだ?」
ドラゴンの方の妻が私に問う。
「何も船の上にいる人間を狙う必要は無い。
船そのものを沈めてしまえばいいんだから。
ラミア族、人魚族に魔導爆弾を持たせて
船底に設置、その後離れて撃沈って
ところかな。
戦闘出来る人魚族の数だけでも、100人は
いるって話だから―――
1人につき2つ魔導爆弾を持たせれば、
一度の出撃で200隻は……」
それを聞いていたメルとアルテリーゼは
複雑そうな表情となり、
「シン、結構えぐい事を考えつくよね」
「それもあちらでの戦い方かや?」
無くはないけど、どちらかというとテロリストの
やり方に近いような。
「うーん……
今の戦い方ではないと思う。
本当なら、水中を進む誘導飛翔体のような
ものがあるんだ。
それを水中航行する船、潜水艦から発射する。
まああっちでは爆雷や機雷という物があるから、
そう一方的でも無いけどね」
そこまで聞くと理解の範囲外だったのか、
二人とも話を右の耳から左の耳へ通し、
「何やらスゴイ事だけはわかった」
「そういえば、アストルとかいう男が
持ち去った兵器の書も、シンと同じ
世界からの物だったしのう」
(■124
はじめての いせかいじん(かこ)参照)
あそこには潜水艦もあったけど……
多分、今の技術では水中対策すら無理だろう。
「何にせよ、使う事が無い事を祈りたい
けどね。
出来れば、向こうにも話がわかる人間が
いる事を期待したいよ」
話が一段落すると、私は飲み物を喉に
流し込む。
「じゃあ、難しい話はここまでで……」
「本能で動こうではないか、旦那様♪」
そう言うと二人は俺に向かって飛び掛かり、
そのままベッドへと押し倒された。
「ただ今、戻りました」
翌日―――
ランドルフ帝国の一行と共に、公都『ヤマト』へ
帰還。
報告のため、冒険者ギルド支部へと来て
一通りの説明を行う。
「フム、なるほど。
ライからの手紙によると、お前さんの
提案は非常に役に立ったようだ」
ジャンさんにライさんからの手紙を渡したのだが、
悪くは無かったようで何より。
「あー、それとシンさん。
魔王・マギア様が来ているッス」
「何でも、ランドルフ帝国の一行と話を
させて欲しいとかで……」
レイド君とミリアさんが、ギルド長の後に続く。
「仲介をして欲しいって事でしょうか?
でも私にそんな権限は」
「何だかんだ言ってシンはいろいろなところに
関わっているからな。
一応、お前さんに話を通しておけば間違いないと
見ているんだろうよ」
筋肉質のアラフィフの男性は、両目を閉じて話す。
「そ、そうですか……
あと、帰りの『乗客箱』の中で彼らの
希望を聞きまして。
10日間ほど滞在するそうですが。
料理を学びたい人と、獣人族の『神前戦闘』を
見たい人、それと出来れば精霊にも会って
おきたいとかで」
「了解ッス」
「人員や希望者の人の名前はわかりますか?」
私の言葉に、次期ギルド長とその妻が、
書類を取り出したり書き込んだりし始める。
その後、私とギルドメンバーは―――
様々な調整に追われる事となった。