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次の日。
桜志郎は公園に呼び出された。
「え……?」
ベンチに座る香帆を見て、桜志郎は息を吞んだ。
香帆の隣にいる男。
(あの日死んだ 香帆の夫に そっくりだ)
双子か?
どっちにしても兄弟に間違いない。
「こんにちは」
香帆がベンチから立ち上がって、桜志郎に近付いた。
桜志郎は紙袋を差し出した。
香帆が銀行から受取った紙袋だ。何も変わっていない。
「これ、返します。預かってただけだし」
颯真はフワッと立ち上がった。
それが桜志郎には不気味に見えた。
(格闘技でもやってるのか? 動きも気配も変だ)
「しゃあない、これで忘れたるわ。早《は》よ去《い》ね!!」
「はい」
桜志郎は一目散に公園を出た。
砂場で遊んでいた女の子が、母親に言った。
「変なの。あの人、誰もいないベンチに『ハイ』って言ったよ」
「そうなの?」
香帆は口を押えて笑った。