少しの静寂。
しかし、穂高の小さな息遣いで無くなる。
マリアは不安そうに彼を見つめていた。
「先生はやめておきなさい」
「!」
「色々、辛いと思うよ?」
一瞬突き放されたのかと思ったが、マリアの事を心配しての発言だと分かり安堵のため息を漏らした。
「…先生と、生徒だしね。
普通の恋人みたいにすぐ会える訳じゃない
それに学校では俺は他の子と同じ様に君に接するだろし」
マリアは黙って聞いている。
「まぁ、傷付く恋愛だと分かってるだろうから
先生はやめておきなさい、いい子だから」
「そうじゃなくて…」
穂高はマリアへと視線を向ける。伏せ目がちだったが直ぐに真っ直ぐ見つめてきた。
その瞳に吸い込まれそうになる。
「先生は私のことどう思ってるの…?」
「……確信づいてくるね。
俺は可愛い生徒だと思ってるよ。」
マリアは俯く。
「嘘つきですね」
「……ん?」
「さっき先生は私の事、俺のヴァンパイアって言いました。可愛い生徒になら言いませんよ…そうですよね?」
懇願も入っていたが確信はあった。
「私はただ好きになっていいか聞いているだけなのに……」
「それは…俺には止められない事だけど」
「!
良かった……それもダメって言われたらどうしようかと思いました。私、男性を好いたのって初めてなんですよ。」
「光栄な事で…」
穂高は自分の頭に手をやり、マリアのペースだなと感じていた。
不意にマリアが小さく、あ……と呟いた。
「どうしたの?」
「先生」
「ん…?」
「ヴァンパイアでも良いですか…?」
恥じらいながら見上げる彼女に、穂高は先程とは違う目眩を覚えた。
神秘的に見えた。
思わず手を差し出してしまいそうになったのを止めるのがやっとだった。
「構わないよ…」
「嬉しい、先生
あっ嬉しいです」
わざわざ敬語に直し、はにかむマリア。
自然としている事なのだろうが危険だなと穂高は思ってしまった。
「……先生?」
「?……あ」
気付けばマリアは穂高の腕の中に収まっていた。
優しく抱きしめられマリアは頬を赤くし、むいしきに抱いてしまった穂高は複雑そうに笑った。
「ごめんね、君があまりにも綺麗で可愛かったから」
「わ、私のせいなんですか…」
照れ隠しの答え方も可愛らしかった。
男に恋。
何もかも初めてになる。
それが自分で良いのだろかと穂高は思考を巡らす。
暖かく、ほのかなシャンプーの香り。
服の柔らかな匂い。
マリアはドキドキと煩く胸を鳴らしていた。
緊張で上を向いて先生の顔を見ることも出来ない。
そんな時間が永遠に続けばと思ったが直ぐに話され、謝られた。
謝罪などいいのに、とマリアは思っていた。
「2人の所へ戻ろうか……
あくまでも、いつも通りにね。
マリアちゃんは分かりやす過ぎるから」
小さく笑いながら穂高が言うと、マリアもつられて笑ってしまった。
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