【能力者名】栗毛色あるは
【能力名】 わたしのR
《タイプ:友好型》
【能力】自殺衝動をすいとる能力
【以下、細菌達の記録】
《昼休み、米津高校二年A組の教室にて》
「かたじけないでござる……あるはどの…..!!」
「はいはい、次のやつどうぞー。」
卒塔婆の群れのように死にたいやつらが
並ぶ。
私はそいつらのしょうもない悩み相談を
私の能力《わたしのR》で吸い取ってあげる。
私の名前は栗毛色あるは。自殺衝動を吸い取る能力《わたしのR》を持つ。
かわいいかわいい高校二年生女子だ。
……..別にいいだろ頭の中で思うぐらい。
わかってますよーだ。私がそんなかわいくないこととか実際は肌荒れとか目の隈とか
色々あってせいぜい中の下ぐらいなのはー。
どーせ私の脳内を読んでる奇特なやつなんか
いねーだろ。
だって私の脳内には《わたしのR》で吸った奴らの自殺衝動と私の自殺衝動が渦巻いてる。
心読めるやつがうっかり私の心読んじゃったら余裕で発狂して叫びながら死ぬぐらいの量の自殺衝動がな。
はぁー、転生して魔法少女になりてぇー。
私も最近やってるアニメ、
『おそうじミモリン2』みたいに
美少女でおっぱいのでかい魔法少女に
なりてぇー。
あとシリアスブレイカー様とデートとか
…….いやそれは流石に欲張りすぎか。
たまに挨拶してもらえるぐらいの距離感でも
結構幸せなのだ。しにたくてしゃーないけど。
ふと、猫耳で黒髪の女の子が私の席に来た。
以前、私とシリアスブレイカー様が助けた
猫又嫉妬という少女であった。
「こないだは助けてくれてありがとう。」
「別に。」
私はぶっきらぼうに言った。彼女の自殺衝動は以前と比べて大分ましになっていた。
「私ね、能力目覚めたの。こうすればあの子のことずっと忘れないでいられると思って。
名前は《エンヴィキャットウォーク》って
名前にしたんだ。」
猫又のような尻尾を揺らしながら彼女が
言った。
かっわええええええええ。
もふりてぇぇぇぇぇ。
いいなぁ猫耳つけれる能力ー。
すっげぇ能力格差感じるんですけどぉぉぉ。
てかこの子黒髪さらっさらだし目も綺麗な
猫目だしぜっっったいモテるじゃんやだーー。
すっげぇ顔面格差感じるんですけどぉぉぉ。
もう心折れた帰ってシリアスブレイカー様の
動画見たい。そんでしにたい。
「あるはちゃん?あるはちゃん?」
「へ?あぁ何ですか??」
何故か敬語になった私に猫又ちゃんが言った。
「あるはちゃんの力で助けてあげてほしい人
がいるの。同じクラスの図書委員長、阿久野
六法全書ちゃんなんだけど……。」
そういいながら猫又ちゃんは阿久野ちゃんの
Xの鍵垢の『あくのちゃんねる』のツイートのスクショを見せてきた。
そこには《四時四十四分四十四秒》とだけ
書かれていた。
《放課後、屋上にて》
「ねぇ、やめなよ。」
私は屋上から飛び降りようとする阿久野ちゃんの手を掴んでから言った。
阿久野ちゃんは私の顔をじっと見て。
そして踞って、大きな声で泣き出した。
私は彼女に話を聞こうとした。
すると彼女は
「大丈夫、これは、私が抱えなきゃいけない
問題だから。私は楽になっちゃ駄目なの。
ずっと悩み続けて、苦しみ続けなきゃダメなの。」
と言った。
そして彼女は
「助けてくれたお礼。これ、あげる。」
と言った。
小さな六法全書のストラップだ。
…….正直ものすごくいらないけど今そんなこと言える雰囲気じゃないので私は。
「この学校で自殺するのだけは私が許さないから。私の近くで自殺しようとしたら何回でも私が止めるからね。」
と阿久野ちゃんの顔を見ずに言った。
「私もね。」
と、さっきまで屋上から阿久野ちゃんが
落ちてきた時のために地上でスタンバってた
猫又ちゃんがひょいっと屋上までジャンプしてやってきた。
……..私能力とかぜんぜん知らないけど
この子めっちゃ強いんじゃないの???
そんな私たちに
「ありがとう。」
と阿久野ちゃんはお礼を言い、静かに去っていった。
そこにシリアスブレイカー様がやってきた。
「シリアーッス!!!!!シリアスブレイカー参上!!!シリアス展開は私が……あれ?
シリアス展開の霊圧が…..消えたッ……!!?」
そんな風にキョロキョロ辺りを見渡すシリアスブレイカー様を見て、私と猫又ちゃんは
ケラケラ笑った。
猫又ちゃんは気づくと帰ってて、
私はシリアスブレイカー様と二人きりに
なっていた。
私とシリアスブレイカー様はとりとめのない
会話をしながら一緒に帰った。
【細菌達による捕捉】
その日、米津高校に飛んでいた透明なドローンが消え、空からストラップが落ちた。
そして、米津高校の怪談《四時四十四分四十四秒に屋上に行くと自殺してしまう》の
犯人《少女レイ》の持ち主夏目幽子は、もう二度と自らの能力を使うことはなくなった。
親友の少女を自殺に追い込んだ彼女の歪み切った罪滅ぼしから生み出され続けた怪談は、あるはと猫又という二人によって終わりを
告げたのだった。