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放課後の教室。鈴と沢田は、並んでスケッチブックを広げていた。
「ふっ……我が封印せし筆の力を、今こそ解き放つ時……!」
沢田がドヤ顔でペンを握る。鈴は横でさらさらと絵を描きながら、「はいはい」と適当に流した。
「まずは線画から――」
沢田がペンを走らせた瞬間。
バシャッ!!
「……あっ」
鈴の目の前で、黒インクのボトルが倒れ、沢田の手元に漆黒の池が広がった。気まずい空気が流れる。
「……」
「……ふっ」沢田は髪をかき上げながら、余裕の笑みを浮かべる。
「闇の力が、我が手をも侵食し始めたか……」
「ただのインクこぼしただけよね。」
鈴が冷静に突っ込むも、沢田は一切気にせず、腕を組んでうんうんと頷く。
「いや、これは試練だな……!」
「いや、ただの不注意よ?」
「くっ……!」
沢田は拳を握りしめ、決意を込めた顔でティッシュを掴んだ。
「ならば我がこの手で乗り越えてみせよう!」
そして、勢いよく拭き取る。
「……あ、やば」
焦ったせいで、インクがさらに広がった。スケッチブックは無惨な姿に。
鈴は静かにスケッチブックを閉じた。
「帰るね」
「待て待て待て! これは違う! これは、闇の波動が――」
「はいはい、おつかれ」
バタン、と教室のドアが閉まる音が響く。
沢田は一人、夕陽に照らされながら、インクまみれの手を見つめて呟いた。
「……俺って、そんなに残念か?」
だが次の瞬間、彼はキッと顔を上げる。
「いや、これは新たな力の目覚め……!」
誰もいない教室で、中二病全開のポーズを決める沢田だった