テラーノベル
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ルノが平民の男と恋に落ちた。
一途とされてきたはずの王家の者の心変わり。なんて事ない。ルノは最初からマリノアルのことを想ってなどいない。国が決めた婚約者、つまりは王命だ。自分たちに拒否権などない。
初代の王は確かに一途な人間だったのだろう。生涯ただ一人の伴侶である王妃を愛し続けた。そして2人の間に生まれた2人の王子の事も。彼らは国中から愛され慕われてきた。
それは国の歴史として語り継がれ今なお国民から王家が支持されている理由だ。
しかしそんな夢物語が何代も続くわけもなく。表向き伴侶は一人であっても裏では愛人たちを囲って欲に溺れているのが現状である。王も王妃もお互い知らぬ存ぜぬで国民たちの前では良き王と王妃を貫いている。なにが一途なのか欲と野望にまみれた王家に第一王子として生まれたルノ。初代の王の話に憧れを抱いていたが幼い頃に現実を目の当たりにしたその日、ルノは嘔吐し数日寝込んだのだ。
互いに愛人たちを囲ってはいるものの我が子は可愛いのか蔑ろにするわけでもなくルノと弟である第二王子ロノル・ラズファルはしっかりと教育されてきた。
ルノが嘔吐し数日寝込んだ時は見舞いの品と共に王も王妃も様子を見に来てくれたり眠るまで傍にいたり、赤子だったロノルを抱いてあやしたり、時に共に茶会を楽しむこともあった。
そんな日々も確かにあったが愛人たちを囲い欲に溺れる2人をルノは心底軽蔑した。爛れた実情に一途な愛など存在しないのだとルノは幼心に悟り静かに絶望した。
大好きだった初代の王の物語が書かれた書物すべてを焼却処分するほどに。
だから王命でフィリヴィッツ家との婚約が決まったと聞かされた時はくだらないと思うのと同時に選ばれた相手に同情した。
一途な愛など存在しないのに、と。
学園で平民の彼に出会うまでは確かにそう思っていた。
「…ルノにとってあの平民の男は確かに初恋で一途な想いなのだろうな…」
姿見に映る自分にそう話す。自分には決して見せなかった、見たかった心からの笑顔。初めて顔合わせした時からルノは作った表情をしていた。笑う時も怒る時も悲しむ時も心配する時でさもすべて作られた表情。最初は気付かなかったことも繰り返されれば嫌でも気付く。気付かないふりを続けていつか自分を本当に想ってくれるかもしれない、そう自分に言い聞かせて何度も行動も考えも変えてやり直してきたけれど結果は変わらない。多少の変化は見られても必ずルノは平民の男に惹かれ俺は殺される。
変わらない結末。本当に俺はどこで神の怒りに触れたのか、少しだけで良いから教えてほしい。1度くらい長生きしてみたい。少なくとも20歳以上は生きてみたい。
そう考えることすら許されないことかもしれないけれど。
繰り返す死に戻りに感情も心も壊れていき分かりきっている最期に今度こそは穏やかに死にたい、なんてそんなささやかな願いすらも神が許してくれるわけないのに
「……いい加減過去のあれこれを考えてしまう癖も直さなければ。今度は家を出ること最優先に先ずは体力作り…は必要最低限で良いか、それよりも地理を把握しておきたいな…」
この国ではない別の国ならばどこでも良い。なんなら魔物が巣食っている森の中でも構わない。
繰り返されてきたことで魔力も蓄積され今では無限とも言えるほど膨大な魔力が自分の中にはある。いくらでも魔法が使えるし属性にも拘らず使える。自分の思うように使える。おそらく自分だけのオリジナル魔法も創れるのだろう。
魔法は教会で神に祈りを捧げることで自分の中にある魔力を感知し初めて使えるものだが死に戻りで繰り返されて きたマリノアルは祈りなどせずとも魔力が蓄積されていることに気付きまた思ったまま魔法が使えた。これまでの経験と知識によるものかと素直に喜べなかったが。
そうだ、俺には経験も知識もある。何度も何度も何度も何度も繰り返されてきたんだ。
「うん、魔法があれば困ることはないだろう。やはり森の奥深く、人が立ち入らない場所ならば静かに暮らせるだろうな」
そう決めたマリノアルは家を出るまでの残り5年を使って世界図の地理を頭に入れる事と一人で生きていくための創生魔法に注力した。
コメント
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第2話、読ませていただきました。マリノアルの「自分は♡♡♡れる」と分かり切った死に戻りと、それでも「穏やかに死にたい」と願う小さな抵抗が、すごく胸に刺さりました。姿見に向かって語る独白の寂しさ、ルノの心から笑った顔を見た時の諦念……筆致が繊細で、何度も読み返したくなります。この先、彼の地理把握と創生魔法がどう結実するのか、とても気になります。次話も楽しみにしています🌷
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#溺愛
植まどか
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#死に戻り
青空美空
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陽星☀️🎧☄️🩷
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