テラーノベル
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何十回目の死に戻りから目覚め早2年。
ある程度の地理と世界情勢を把握し魔法も色々と創り出した。実際に使ってみなければ程度は分からないが困ることはないくらいに生活が楽になるだろうとは思う。
「今までにないくらい平穏な日々だな…」
本日は快晴。雲1つなく時おり風が吹き木々が戦ぐ。静かで心地よい。
この2年、外部との接触をすべて遮断し家族との接触すら拒絶し自室に引きこもる日々。
唯一、世話係として1人の執事とやり取りはしているがそれも事務的もの。朝は着替えまで自分で済ませているので朝食を運びに部屋まで来る。その際挨拶は交わすがそれだけ。朝食を終わらせれば食器などは扉の横に置いておくので部屋の中まで入っては来ない。
「食器をお下げします。食後のお茶は如何なさいますか?」
「いらない」
「……左様でございますか」
扉を隔て毎日同じ問答を繰り返す。飽きもせず毎日。
父か母か、それとも両方からか言われているのだろうな。可哀想に。自分のことは自分ですると言っても聞かない。
昼と夜も全く同じだ。1食抜いたくらいで死ぬわけでもないのに。
「……俺にまだ何か用でもあるのか」
扉の外に感じる気配にそう問いかける。
「……いいえ、私は貴方様の専属執事です。何かあればすぐにでも対応できるよう待機しているだけです。お父上からも許可は頂いております。」
真面目な男だな。専属とはいえ執事は色んな仕事がある。暇などないはずなのに。いつ呼ばれるとも分からない引きこもりの主のためにその場に待機するなどこれ程真面目な男だっただろうか。
ぼんやり記憶を探る。
『私はマリノアル様を信じております。絶対に貴方様が無実である証拠を集めます。ですからどうか諦めないで我が主よ』
ああそうだ、たった1度だけお前は俺の味方だったことがあったな。処刑されるその瞬間まで俺にかけられた冤罪を晴らすためずっと証拠集めに奔走してくれた唯一の味方。
家族にすら信じてもらえなかった俺の唯一の光。
処刑された後のことは分かるわけがないがその後証拠は見つかったのか今となってはどうでも良いが俺が死んだ時お前は涙を流してくれただろうか?
それ以降お前が俺の味方になることは1度もなかったけれど。
「……クオール、入れ」
「っはい、失礼いたします」
喜色と緊張が混じった声で執事クオールは部屋に足を踏み入れた。
椅子に腰掛ける主、マリノアルの前まで歩きそのまま片膝をつき、頭を垂れる。その様は執事と言うより騎士である。
「……お前は執事なのか騎士なのか分からなくなる」
「…貴方様をお守りするため日々鍛えております。雇い主はお父上ではありますが私の忠誠は生涯貴方様の為だけに。」
瞬間、開け放っていた窓から一陣の風が吹いた。
白銀の髪と対照的な真っ赤な髪が、腰まで伸ばされ1つに束ねた真っ赤で綺麗な髪が、マリノアルの視界を染める。
「……お前の髪は綺麗だな」
味方でいてくれたあの時の、処刑された日に最期に見た真っ赤な夕焼けと同じ色。初めて綺麗だと感じた日。
初めて、死が怖くないと思えた日。
味方がいてくれた。
それだけで満たされた日だった。
「っは…あ、りがと…う、ございま、す……」
予想だにしないマリノアルからの言葉に思わず顔を上げ見たものは
風に靡く白銀の髪はキラキラと光り、目を細め穏やかに柔らかく微笑むマリノアル。
その様は1枚の絵画のようで。
言葉に出来ない程の美しさに息を飲んだ。
まだ7歳だというのに、幼さが強く残るのに。
焦がれたマリノアルの優雅で優美なその微笑み。
「今日の13時から14時までの1時間、庭園を周る。その間誰1人部屋から出るなと言伝ろ。」
ほんの一瞬の微笑みは瞬きの間に消え、いつもの無表情に戻ってしまった。
「承知致しました。」
一礼しクオールは部屋を出ていく。
マリノアルは気分で時々庭園を周るようになった。庭園を周る時間はまちまちだが必ず時間を指定し、その間は家族を含め使用人たち全員に部屋から一切出ることのないように伝える。クオールだけは食い下がり庭園の入口までならと同行が許可された。
高熱を出し倒れた2年前、様子を見に行ったあの日すでに着替えまで済ませていたマリノアルは人が変わったように家族やクオールを含めた使用人たちを拒絶した。
当然ながら皆困惑した。
理由は未だ分からないまま。
「そう、マリノアルが庭園を周るんだね」
ベッドの上で眠る双子の頭を撫でながらそう呟く。
「父上たちとノールとベルファトには私から伝えておくよ。クオールは他の使用人たちに伝えてくれるかな」
「承知致しました。ユア様」
クオールを見送り、再び眠る双子の弟を見遣れば一人足りない弟を想う。
大好きで愛しい弟たち、何をするにもいつも一緒だった。
「……マリノアル…」
ユアは悲しげにマリノアルの名を呟いた。
コメント
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おお、第3話読んだよ! マリノアル、ようやく動き出したな…「クオール、入れ」の一言にグッときたわ。過去のループで唯一味方してくれた執事に、また心開き始めたのかなって思うと熱いものが込み上げてきた。 クオールの髪を「綺麗だ」って褒めるシーン、処刑の日に見た夕焼けと同じ色ってのがまた切なくて…7歳でそこまで達観してるのがもう胸にくるわ。 双子のユア視点も挟まれて、家族の複雑な関係性も気になる展開。次、庭園で何するんだろ?続き楽しみにしてる🔥
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