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真衣香を更衣室へと促した坪井は、デスクに貼った社員ナンバーを見ながら退勤入力をしパソコンの電源を切ろうと操作してくれているようだ。
鼻歌まじりに。
数歩進んで立ち止まり。
そんな坪井を横目に、顔がニヤけそうになる。
(楽しいって、思ってくれてるのかな。私が……楽しくて嬉しくてドキドキが止まらないみたいに)
「お〜い、立花」
「は、はい!」
浮かれた心を読まれたのかと背筋を伸ばす。
「早く着替えてきなよ。それとも、俺にも一緒に行って欲しいの?」
「……な、そ、そんなわけないよ!!!」
また片方だけ口角を上げ、試すような笑顔を見せた。
(意地悪言う時の顔だ)
咄嗟に結びついた。
そのことが、また心をくすぐったく、そして暖かくさせる。
ほんの数日前までは知らなかったことを、知っていく。
そんなふうに増えていくのだろうかと、真衣香は思った。
知らなかった坪井も、恋する気持ちも。
(って、それはともかく!)
まずは、これ以上心臓を酷使する前に更衣室へ逃げようと急ぎ足でフロアを後にした真衣香だった。