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凛道桜嵐 新
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高千穂先生、助かって本当に良かった……! 血まみれで駆け込む緊迫感から、九さんに「鳥居をくぐるな!」と怒られる日常の空気に戻っていく流れが好きです。最後の「もう大丈夫なんだ」という静かな実感に、長かった戦いの終わりが詰まっていてじんと来ました。
幸いなことに、本当にすぐ近くに救急病院があり、俺達はそこに高千穂先生を担ぎ込めた。
エントランスから入って、正規の手続きじゃなかったので病院の人には動揺されたが、なにしろ高千穂先生も俺も血まみれだったのですぐに大怪我だとわかってもらい、高千穂先生は担架で運ばれていった。
千歳 (エントランスに来るときに朝霧の忌み子の姿に戻った)と俺は一通りの事情を聞かれたが、俺は高千穗先生が自分で首を切った、くらいしか伝えられなかった。だって和束ハル関連のこと伝えきれないだろ……。
緑さんに状況を連絡したりなんだりしてしばらく待っていると、看護師さんらしき人が来た。
「今輸血しています、血圧が戻れば大丈夫ですが、どうやってあの傷で止血ができたんですか?」
それは和束ハルじゃないとわかんないな……。
「いえ、とにかくぎゅうぎゅう抑えたことくらいしか覚えていなくて……」
俺は努めて高い声で答えた。これで担ぎ込んできたのが女装の男って知られたら、事態がもっと混乱するだろ。
千歳が心配そうに看護師さんに聞いた。
『血圧、戻りますか?』
「大丈夫ですよ、止血がうまくいってましたし、輸血が間に合いましたから戻るはずです」
『そうですか!』
千歳の顔がぱっと輝き、俺もホッとした。
「今の、緑さんにも伝えないと」
看護師さんが去ってから、俺はまたスマホを取り出した。ホッとしてやっと気づいたけど、スマホも血まみれだな……防水の買っててよかった。
「あ、もしもし! 高千穂先生ですが、輸血済めばとりあえず大丈夫だそうです」
「本当です!? よかった、あ、ちょっと待ってください」
少しの間のあと、緑さんの声が戻った。
「もしもし、和束ハル、ずっと高千穂先生のこと呼びながら泣いててなかなか封印しきれなかったんですが、いま無事だって聞かせたら大人しくなって、封印できました。ただ、和束ハルが集めた霊力を分割してもとに戻さなきゃいけないので、千歳ちゃんに手伝ってほしくて」
「わかりました、千歳とそっちに戻ります」
千歳に緑さんの言ったことを伝えると『後始末も頑張らなきゃな』と気合を入れていた。
『多分あの蛇の尾を細かくぶった切らなきゃいけないんだ、ワシくらいじゃないとダメなんだと思う』
「なるほど」
歩いて根津神社に戻ったが、人々が回復して立ち上がりだしたりキョロキョロしたりしていて、俺を見てぎょっとするので、俺は改めて自分が血まみれなことに気づいた。千歳もだいぶ血がついてるし、一段落したら洗わなきゃな……。
根津神社に着くと、もうだいぶ人が集まって切り落とされた蛇部分にビニールシートかけたり何だりしていた。
「和泉! 千歳! どうした!?」
呼びかけられたので振り向くと、九さんが呆然と立っていた。あ、何も知らないでこの血まみれを見たら、そりゃ心配だよな。
「す、すみません、こちらに怪我は一切ないです、これ高千穂先生の血でして」
「そ、そうか……いや、だとしてもそんな血の穢れまみれで鳥居をくぐるな! 一度妾の家に帰れ、血を落としてから来い!」
緑さんが駆け寄ってきて「急がないから、確かに血まみれで神社はよくないから、着替えて洗ってきて」と言ってくれた。
九さんが「ここに入れ、うちの湯屋につなげる」と近くの木のうろに手を差し入れると、うろが広がって、狐のお宿の脱衣所が見えた。俺たちは、九さんの言葉に甘えることにした。
「ありがとうございます、まず洗います」
『ありがとう、すぐ洗う!』
俺達はうろをくぐって脱衣所に入り、一緒に入るのは無理があるので、まだ用事のある千歳に先にお湯を浴びてもらった。
俺は脱衣所の外に出て、子狐ちゃんたちに囲まれて心配され、「大丈夫、怪我はないから!」と答えながら、ふと気づいた。
そうか、大丈夫になったのか。和束ハルは封印されたし、高千穂先生もぎりぎり助かった。
俺と千歳は、もう和束ハルに狙われなくてすんで、大丈夫なんだ……。