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凛道桜嵐 新
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がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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うわあ、千歳さんの説教、めちゃくちゃ沁みました……。同じように傷ついた者だからこそ言える「大事な人を大事にするほうが楽しい」って言葉、重いです。ハルが泣きながら「そうやったな」ってつぶやくところ、もう胸がぎゅっとなりました。千歳さんが最後に振り返って「自分よりは軽く済むかも」って思うところも、彼女の優しさが滲んでて好きです。
体を洗って着替えて、木のうろをくぐって根津神社に戻してもらうと、普通の人の大きさに戻った和束ハルが術式を書いた和紙でぐるぐる巻きにされてるところだった。
和束ハルはしゃくりあげて泣いていた。悲願が達成できなくて悲しいから? 高千穗先生が死ななくてよかったから? 高千穗先生が大怪我して悲しいから?
……全部かな。
術式をチェックしていた峰紅さんが、ワシに言った。
「すまない、千歳さん、この術式にさらに霊力を込めてくれないか。念には念を入れたい」
『うん、わかった』
ワシは、和束ハルに近づいて、術式に手を当てた。うわ、これ相当霊力込めなきゃいけないな、巨大蛇の尾を細かく切り刻む余力あるかな?
割と時間がかかりそうだ。和束ハルの泣き声をずっと聞いているのは気が塞ぐし、和束ハルに言ってやりたいこともあったから、ワシは口を開いた。
『あんた、本当バカだな。高千穂先生、あんたがいるのずっと気づいてて、わざと部屋空けて使えるもの置いといたんだぞ』
「えっ……」
和束ハルは、呆然として顔を上げた。ワシは話し続けた。
『……あんたがさ、大変な人生だったのは知ってる。全部をぐちゃぐちゃにしてやりたくなる気持ちも、わかる』
「……何がわかる」
『わかるよ。ワシも、孕むのも孕ますのもできなくて、それで優しくしてもらえなかったもん』
「…………」
和束ハルは、一瞬ワシを凝視して、それからうなだれて「そうやったな……」とつぶやいた。
ワシは言葉を続けた。
『でも、全部ぐちゃぐちゃにするのよりも大事な人がいるなら、こんなことしないほうがよかっただろ。その大事な人はさ、この世界でいろんな人と関係して生きてるんだから。その人の飯も家も服も、この世界のいろんな人がいないとダメだろ。なんでそれを全部ぐちゃぐちゃにするようなことしたんだ』
世界にはたくさんの人がいる。たくさんの人がいるから、和泉に食わせてやる食材を作ってもらえるし、スーパーで買えるし。家だって建ててもらえるし、服だって作って売ってくれてる人がいるから買えるし。和泉に仕事をくれる人だって、たくさん人がいないといなかっただろうし。
「………」
和束ハルは何も言わず、ただ鼻を啜り上げた。
『気に入らないやつはたくさんいるだろうけど、嫌なことしてきそうなやつだけキャンと言わせとけば、あとは大事な人を大事にするほうが楽しいぞ?』
ワシは、和泉が大事で、和泉といると楽しい。ものすごくムカつくことがあっても、復讐が和泉の無事や幸せを壊すことにつながるなら、我慢できると思う。
和束ハルは、うめいた。
「……高千穂さんが、うちのことそんなに特別だったなんて、思っとらんくて……」
『クソボケだな、あんた』
霊力を込め終わって、ワシは大きく息をついた。
『紅さん、込められるだけ込めた。蛇の尾ぶった切るのってどこからやればいい?』
「ああ、本殿に巻き付いているところからやってほしいそうだ、いま緑が指揮を取ってる」
『じゃあ、本殿行ってくる』
ワシは本殿に向かって、それから一度だけ和束ハルを振り返った。
……200年前、ワシが暴れて封印されたみたいなことになるのかな、和束ハルは。
でも、ワシと違ってたくさんの人を引き裂いたわけじゃない。なんとか、未然に防げたんだ。
だから……ワシよりは軽く済むかもしれない。