背中をさすりながら、息が上がっているポケを宥め賺す。落ち着いたポケがゆっくり、話し始めた。
🐷「俺、昔まいたけさんと会ってるんです。」
🍄「は?」
え?いつ?予想外すぎる展開に思わず声が漏れる。
🐷「まいたけさんは覚えてないと思いますが、俺はずっと、ずっと、忘れられない思い出なんです。」
🍄「は、はあ」
🐷「まいたけさんが、俺を救ってくれたんです。まいたけさんが、生かしてくれた。だから俺は、今、ここに居るんです。」
🍄「いや、そんな事…」
🐷「そんな事あるんです!まいたけさんが居なかったら俺、5歳で死んでたんですよ?」
5歳で、死んでいた?聞き覚えがあるかもしれない。
🐷「俺、両親から虐待を受けてたんです。」
🍄「…あ。」
その時の全ての情報が頭に流れ込んでくる。そうだ、思い出した。それは、多分俺の初仕事だったか。確か、「5歳の小さな子供に虐待をしている屑2人の殺人」という仕事だったっけな。その時初めて人を殺す感覚を覚えたんだった。その時、殺してる場面を子供に見られてて、殺しても良かったんだけど、俺自身と重なって見えて、結局殺せなかったんだった。
🐷「貴方は、俺がこの世で1番大嫌いな大人を殺してくれた。小さくて未完成な俺のヒーローだったんです。」
🍄「俺が、ヒーロー…?」
そんな事、初めて言われた。結局俺の自己満だと思っていたのに。俺、ちゃんと人を救えていたんだ。
🐷「その時は俺も殺されるかもって思ってたんですけど、結局俺だけは生かしてくれた。その日から、俺は微かな記憶、”逃避行”という名前と、顔だけを頼りに捜していたんです。顔なんてすぐ変わってしまうのに。それでも、見付けられた。」
🐷「貴方の言葉で、俺はここまで生きてきたんです。」
🍄「言葉……?」
俺、なんか言ったっけ。初仕事の時俺、10歳くらいだからなぁ。小さい時に言った言葉なんて、全く覚えていない。
🐷「”これからは、幸せになれよ。”そう言ってくれました。貴方は、俺に幸せをくれたんです。本当に、ありがとうございます。今は、貴方と会えたから両親の事もさほど嫌いじゃないですよ。」
ポケは、そう言って微笑んだ。ポケの真っ直ぐな言葉が俺の頭に響いて、視界が滲んだ。思わず胸が一杯になる。
🍄「馬鹿じゃねえの、お前…」
久しぶり過ぎて、頬を伝っていく涙の隠し方なんて分からない。それでも、目の前にいるポケに見られたくなくて、必死に顔を隠した。
🐷「まいたけさん、愛してます。世界で1番。貴方のことが。俺を救ってくれて、この世界に居させてくれて、ありがとうございます。」
そう言ってポケに抱きしめられる。胸が苦しくなる。
感謝なんて、された事がないから、胸が一杯になっているだけだ。決して恋ではない。そう自分に言い聞かせる。それでも俺が今、感じているこの気持ちが、同情なのか、感動なのか、それとも、愛情なのか。味わった事がない気持ちだから分からないが、愛情だったらいいなと思ってしまった。
コメント
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さんびゃくもありがとうございます!