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「何を?」
「セックスの相性」
「はい?」
頭のネジはすでにぶっ飛んでいる。いま目の前に突然訪れた大チャンスをなんとかモノにしたい。
ぐっと藤原さんの体を引き寄せて、耳元でささやく。嫌がってはいない様子が嬉しくて、もう一歩も引きたくない。
「ヤッてみなきゃわかんないでしょ?」
わざと耳朶に息がかかるようにしゃべると、小さく藤原さんが震える。耳まで赤くなっているのが、たまらく可愛らしい。
暴れ出しそうな自分の衝動を抑えるのに必死で、深くゆっくり息をする。「もう、何言って……」
「相性悪かったら別にヤらなくても、復讐には協力します。もし相性いいと思ったらサブスク契約してください」
相性悪いなんて、ぜったいに思わせない。いままで培ってきたことすべて使って、必ず契約までこぎつけてやる。
俺があんまり直接的に言うから、少しびっくりしているのだろうか。じっと見つめる彼女の瞳に吸い込まれそうになる。
「わかった。た、試してみようか」
「そうこなくっちゃ」
やばい、やばい、やばい。
今から藤原さんを抱くってことだよな? 降って沸いた話に、これからのことへの想像が既に始まって、おかしくなりそう。
「私からも、ひとつ……」
「はい」
「契約はあの子が退職するまでよ」
「おー、こっわ。そこまでします?」
えーっ!! 退職? そこまで憎いのかと驚いた。何か理由があるのかもしれない。
優しくて誇りのある彼女に、そんなことできるのだろうか。
「でも、いじめるなんてゲスなことはしないんでしょう?」
「当たり前よ。そんなことしたくない」
「どうやって復讐するんですか」
「……わかんない」
げらげらと大きな自分の笑い声が、リフレッシュルームに響く。やっぱり、この人のことが好きだ。恥ずかしそうにしている彼女は、かわいくて仕方ない。「藤原さんらしいですね」
「ば、ばかにしないでよっ!」
そのかわいらしい唇を奪いたくて、顎をすくう。パッと顔をそらした彼女。でもその態度は拒否されているわけじゃない。
「試してみるんでしょ?」
「……ここじゃ、やだ」
|ここ《・・》。会社はさすがにまずいってことかな。もう俺たち以外の社員はいないだろうけど、誰かがまだいたら確かにまずい。
「ここ以外にしよ」
「ふーん……」
ここ以外ならいいんだ。この人は本当にずるい。ちょっとキスくらいさせてくれてもいいのに。まあいいやと小さくつぶやいて、藤原さんに背を向ける。
元気になってきた下半身をなんとか見られないようにするのに必死だ。
だってこれからそうなるってことでしょ? 我慢しろっていうほうが無理です。
とりあえず、うちにきて話の続きをしようと声をかける。リフレッシュルームのドアを半分開けて振り返ると、少し困った彼女の顔が可愛らしくて口角が上がった。
「うちって……」
「俺のマンションです。それとも、倉庫でもいきます?」
今からセックスするんですよ? とりあえずお試しだけど。部屋の掃除はしてあるから、大丈夫。
俺は倉庫という言葉を敢えて出した。そこではあいつとの絡みがあるはず。まあヤッてはないだろうけど、キスくらいはしたんじゃないかな。「倉庫も……いや」
彼女の反応をみて、やっぱりあいつと何かしたんだろうと踏む。ちょっと意地悪してみようかな。会社で何したんですか?
「この前|風見《かざみ》さんとはキスしてたのに?」
「なっ……!!!」
顔を真っ赤にした彼女。予想はしていたけれど、やっぱり。嫉妬の炎がじわりと心の奥底で燃えるのを感じた。
「みっ、見てたの?」
「別に。ふたりで倉庫から出てきたのを見たので。だからなんとなく」
自分で訊いたくせに、会社でいちゃついてたなんて腹立つ。絶対俺が上書きしてみせる。
藤原さんの動きが止まる。あー……ちょっと意地悪しすぎたかな。あいつのことまだ忘れてないだろうし、傷抉ったのかも。
しまったと思い、彼女のそばにスタスタと戻る。
「大丈夫ですよ、俺にまかせて」
「永、井……くん」
復讐にはちゃんと協力します。本当はその向こうに目的があるけれど、それはおいおい。潤んだ彼女の瞳を見つめながら、心の中でつぶやいた。
「ありがと……」
「あとどれくらい仕事あります?」
あー!!! とにかく早く俺の部屋に行きたい。盛りのついたサルか、思春期の高校生か。そのくらいドキドキと胸が高鳴る。
絶対やらないといけない仕事ですかそれ!? とにかく早く行きましょう!!!
「……もう、やる気ない。あとは明日にする」
きたー!!! よし、一刻も早く仕度をして帰路につこう。