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好きな人がいる。
その事実は。
ずっと変わらない。
変えられない。
だからこそ。
苦しかった。
◌ ───── ◌
放課後。
講義が終わり。
いつものように二人で帰る。
💜「今日疲れた」
🩵「珍しく真面目に授業受けてたもんね〜」
💜「失礼だな」
🩵「事実〜」
💜「うるせぇ」
そんな他愛もない会話。
昔から変わらない時間。
変わったのは。
こさめの気持ちだけだった。
◌ ───── ◌
住宅街へ入る。
夕焼けが少しずつ空を染めていた。
💜「そういや」
🩵「ん〜?」
💜「奈津と蘭最近なんか言ってた?」
突然の質問だった。
🩵「なんで〜?」
💜「いや」
💜「なんか二人とも変」
🩵「あはは〜」
それはそうだろう。
二人とも。
こさめの気持ちを知っているのだから。
💜「笑うな」
🩵「ごめんごめん〜」
◌ ───── ◌
しばらく歩く。
沈黙。
気まずいわけじゃない。
昔から。
無言でも平気な関係だった。
だから。
次の言葉は本当に突然だった。
💜「こさ」
🩵「ん?」
💜「好きなやつとかいねぇの?」
世界が止まった気がした。
🩵「……え?」
💜「だから」
💜「好きなやつ」
💜「大学だし」
💜「一人くらいいそうじゃん」
悪気なんて一つもない。
ただの雑談。
ただの世間話。
なのに。
こさめの心臓は痛いくらい鳴っていた。
◌ ───── ◌
好きな人。
いる。
ずっと前からいる。
幼稚園の頃から。
気付いた時には。
もう好きだった。
その相手が。
今隣を歩いている。
🩵「……いるよ」
やっとの思いで答える。
💜「へぇ」
驚いたような声。
💜「マジか」
🩵「マジだよ〜」
💜「初耳」
そりゃそうだ。
言ったことなんてない。
誰にも。
奈津と蘭以外には。
◌ ───── ◌
💜「どんな奴?」
🩵「言わない〜」
💜「なんで」
🩵「秘密だから〜」
💜「ケチ」
🩵「ふふっ」
笑う。
笑えているだろうか。
自分でも分からない。
💜「でもいるんだな」
🩵「いるよ」
💜「長いの?」
その質問に。
こさめは少しだけ空を見上げた。
長いなんてもんじゃない。
人生の半分以上だ。
🩵「長いよ〜」
💜「へぇ」
💜「大変そうだな」
🩵「そうだね〜」
本当に。
大変だ。
好きにならなければよかったと。
何度思ったか分からない。
◌ ───── ◌
家の近く。
見慣れた道。
いつもならもうすぐ別れる。
その時だった。
💜「まぁ」
いるまが言う。
💜「叶うといいな」
足が止まりそうになった。
🩵「……」
💜「好きなんだろ?」
💜「なら」
💜「叶った方がいいじゃん」
そう言って。
いるまは少し笑った。
優しい顔だった。
心から応援してくれている顔だった。
だから。
苦しかった。
叶わないんだよ。
その相手は。
いるまくんだから。
◌ ───── ◌
家の前。
💜「じゃあな」
🩵「うん〜」
💜「また明日」
🩵「また明日〜」
手を振る。
いつも通り。
何も変わらない。
そう見える別れだった。
◌ ───── ◌
家へ入る。
玄関のドアを閉める。
その瞬間。
力が抜けた。
🩵「はは……」
乾いた笑いが漏れる。
応援された。
好きな人に。
別の恋を。
🩵(もう)
靴も脱がないまま。
その場に座り込む。
🩵(無理かもしれないなぁ)
諦めよう。
何度もそう思った。
だけど。
今日改めて分かった。
いるまは何も知らない。
気付いてもいない。
そして。
きっとこれからも。
✦
好きな人に。
恋を応援されるほど。
苦しいことはなかった。
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コメント
1件
うわあ……これ、めっちゃ胸が締め付けられる話でした。好きな人に「叶うといいな」って真っ直ぐ応援されるのが一番つらいって、痛いくらい分かる。こさめの「長いよ〜」の一言に、幼稚園からずっと片想いしてきた重みが全部詰まってて切なくなりました。いるまは悪気ゼロだから余計に苦しいし、この不条理さ、すごくうまく描かれてるなあ。続きがすごく気になる……!
こりん
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suzu🎲⭐️🎼⏳🪽🎺
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