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#BL
kaede🍁
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おその★
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篝火

1,430
事務所を出たあと。
目黒の車は家とは反対方向へ走っていた。
助手席の阿部は窓の外を眺めながら首を傾げる。
「めめ?」
「家、こっちじゃないよ?」
目黒は少しだけ笑った。
「今日は寄り道。」
「え?」
「内緒。」
そう言ってハンドルを握る横顔は、どこか楽しそうだった。
しばらく走ると、車は建物の駐車場へ入る。
阿部は建物を見上げる。
「プラネタリウム?」
「うん。」
目黒は車を降りながら頷いた。
「家に帰ったら。」
「たぶん俺。」
「もう我慢できない。」
「暴走してこの前みたいに抱き潰しちゃうよ。」
「今日はゆっくり話したい。」
「だから先にこっち。」
その素直な理由に、阿部は思わず笑ってしまう。
「ふふっ。」
「めめらしい。」
「もうチケット取ってある。」
「え!」
「サプライズ。」
二人は館内へ入り、静かなドームへ案内される。
照明が落ちる。
ゆっくりと夜空が広がった。
満天の星。
流れる天の川。
静かな音楽。
隣には目黒がいる。
それだけで阿部の心は穏やかになった。
上映が始まってからしばらくは、二人とも何も話さなかった。
ただ同じ星空を見上げる。
目黒が小さく笑う。
「こういう場所。」
「デートでは来たことなかったね。」
「確かに。」
他愛もない会話を交わしながら、二人は静かな時間を楽しんでいた。
やがて。
目黒の手がそっと阿部の手に触れる。
指先が重なる。
阿部も自然に握り返した。
「めめ?」
目黒は星空を見つめたまま話し始める。
「俺さ、本当は。」
「結構重い。」
阿部は静かに耳を傾ける。
「本音を言えば。」
「ずっと家にいてほしい。」
「誰にも見られないように。」
「足を鎖で繋いで、俺だけが見ていたい。」
少し自嘲するように笑う。
「でも。」
「それじゃあ、あべちゃんは苦しくなる。」
「やりたいことも。」
「夢も。」
「全部我慢させちゃう。」
目黒はゆっくり息を吐いた。
「ちゃんと尊重したい。」
「やりたいことは全部応援したい。」
「その気持ちと。」
「離したくない気持ちが。」
「いつも喧嘩してる。」
阿部は握った手に少しだけ力を込めた。
「ありがとう。」
「そこまで考えてくれて。」
目黒は照れくさそうに笑う。
「まだある。」
そう言うと、コートのポケットへ手を入れ、小さな箱を取り出した。
「これ。」
阿部は驚きながら受け取る。
「開けてもいい?」
「うん。」
ゆっくり蓋を開く。
中には、繊細なデザインの女性用のアンクレットが入っていた。
細いチェーンが星明かりのようにきらりと光る。
「綺麗……。」
思わず声が漏れる。
目黒は優しく笑った。
「左足。」
「貸して。」
阿部は少し照れながら靴を脱ぎ、左足をそっと差し出す。
目黒は膝をつき、壊れ物を扱うような手つきでアンクレットを足首へつけた。
カチッ。
小さな音が響く。
目黒は満足そうに微笑んだ。
「似合う。」
阿部は左足首を見つめる。
星空の下で、そのアンクレットは静かに輝いていた。
阿部は目黒を見つめる。
「めめ、ありがとう。」
「アンクレットも。」
「めめの気持ちも。」
「大切にするから。」
目黒は安心したように笑う。
「うん。」
二人はもう一度手を繋ぐ。
頭上には、数え切れないほどの星。
その光に包まれながら、二人は静かに寄り添っていた。
「家に帰ったら暴走しちゃうかも。」
「……お手柔らかにお願いします。」
コメント
1件
プラネタリウム、すごくいいチョイスですね。満天の星空っていう閉じた世界で「足を鎖で繋いでおきたい」っていう重い本音をさらけ出すの、構造としてすごく綺麗だなと思いました。しかもその話をしたあとに贈るのがアンクレット……「鎖」の隠喩を、相手を傷つけない美しい装飾に変換するおしゃれさ。目黒くんの自己理解の深さと、それでも暴走しそうになる生々しさのバランスが絶妙でした。最後の「お手柔らかにお願いします」でほっとする。