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マンションのポストには、手紙を入れられないようにしてもらって、郵便物は全て事務所に転送するようにした。
そうやってポストにメッセージが残せないようになると、ストーカーは自分の思いが踏みにじられたようにも勝手に勘違いをして、次には嫌がらせをするという手段に出た。
いわゆる、報復。
事務所の迎えの車に隙を見て近づき、車体に傷をつけ、ガラスを割り、
マンションの玄関の前には、なんの血だかわからないような血を、大量にぶちまけた。
既に、あたしは精神的にボロボロだった。
けれど、それでもまだ飽き足らなかったのか、憎しみをつのらせたそいつは、あたしの前にナイフを持ってその姿を現した──。
マンションまで送ってきてくれたマネージャーの車が走り去り、あたしが中へ入ろうとした、その一瞬の隙をついて、
近づいてきた、ストーカー
ナイフをブルブルと小刻みに震える手で持ち、あたしに向かって、
「な…なんで、僕からの手紙を、受け取れないようにしたんだ……」
憎しみのこもった口ぶりで、そう告げた。
「僕が、君を守ってあげていたのに。
君は、僕がいなくちゃ、ダメなのに。
どうして……。
君が、僕を受け入れないんなら、
僕が、君を殺して、僕のものにする……。
君は、僕だけのものなんだから……。
僕から離れて、生きていくことなんて、
君には、できないんだから……リオちゃん」
最後の、「リオちゃん」という、妙にやさしげな呼び方に、ぞわりと鳥肌が立つ。
だけど、あたしは、あなたみたいに狂信的でバカげた人が思ってるような、
「リオちゃん」なんていう、
なんにもできない、ただのかわいいだけの少女なんかじゃないから。
悪いけど、そんな簡単に、あなたに殺されるつもりなんてないから。
おびえて、「キャー」とでも悲鳴を上げるとでも思ってた?
笑わせないで。
あたしは、そんなに気弱なんかじゃない。