テラーノベル
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「ちょっと! ご飯出来たって何回も呼んで──、って、あんたまだ制服から着替えてないの?」
まるで特攻隊のように勢いよく入ってきた母親の声に、私はびくりと肩を震わせる。横目で時計を見やると、時刻は既に七時をまわっていた。どうやらあれから一時間以上経っているらしい。
「ごめん、全然聞こえてなかった」そう呟きながら体を伸ばすと、眉間に皺を寄せながらこちらを見下ろす母と目が合った。階下からの匂いによれば、どうやら今日はハヤシライスらしい。
「なんだか凄い量のお菓子ね」
「うん? ああ、皆からの貢ぎ物なんだけど、お母さんもいる?」
「ありがとう、でも今日は遠慮しておくわ。とにかく、読書も程々にしてさっさと降りてきなさい」
「はあい」
母は私が立ち上がったのを見ると、後ろ手で器用に扉を閉めた。私は先程まで読んでいた箇所に栞を挟むと、雑に置かれた部屋着に着替え始める。
どうやらこの『ヨモツ日記帳』は、全体的に短めのお話が多いらしい。特に四百字以内の書き手が複数名おり、作品の合間に結構な量が挿入されているので読みがいは十分だった。
それに、この雑多な感じを味わえるのはとても楽しい。それは文芸部の部誌だけでなく、イラスト部の部誌や美術部の展示会然り。統一感があるように見せて個々の主張が激しい作品の集まりは、こういうのでしか見られない。
私は机の上に置かれた本を一瞥すると、扉をあけて電気を消した。階下からの熱気か、はたまたご飯の匂いのせいなのか。私の部屋はどことなくひんやりとした空気に包まれている。
部屋と廊下の境い目は一種の境界みたいだな、そんなことを思いながら、私は階段をのそのそと降りていくのだった。
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まろ
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まるちゃ
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#初体験
コメント
1件
うわあ、この「部屋と廊下の境目は一種の境界」っていう感覚、すごくわかります。読み物に没頭してると、現実に戻る瞬間って確かに“越境”するみたいな感覚があって……。お母さんとの何気ない会話も、ほっこりするのにどこか淋しさもあって、この幕間ならではの空気感がすごく好きです。短いのに、日常の“あいだ”の温度が丁寧に掬われてて、じんわりきました🌙🤍